「夏フェスで受けた人種差別〜SNAIL RAMPの作り方・26」タケムラ アキラ『炎上くらいしてみたい』

連載・コラム

[2019/8/27 12:00]

「そんなのおかしいだろ! 今すぐそれをやめさせてください。このイベントが人種差別を許すのであれば、そんな場所にはいたくもない。俺はライブをやらないで今すぐ帰るから。もしメンバーが残ると言っても俺は帰るから」

俺は激しい怒りと、とてつもなく哀しい気持ちでいっぱいになっていた。何かの拍子に涙があふれてもおかしくないほど、怒りと哀しみに渦巻かれていた。

「差別」という言葉は当然に理解していたし、それに関する文献も読んでいた。人並みに「差別」をわかっているつもりになっていた。しかし日本人として日本に生まれ育った俺には「差別」を受けるという実体験がなかった。「差別を受ける」ことで人がどれだけ傷つくか、本当はまったくわかっていなかった。

あらゆるスタッフのみなさんに対し、俺がここまで強硬な態度を見せたのは後にも先にもこのときだけだったと思う。それくらいショッキングなことだったし、主催側に抗議する俺をマネージャーも止めはしなかった。その後、2階の食事スペースは日本人にも開放され、SNAIL RAMPはきちんとライブを行った。しかしこの日の記憶として残っているのは、上記のことばかりだ。これは残念なことだし、そのフェスに来てくれた人たちに対して本当に申し訳なく思う。

どこかの国の人に、特定の感情を抱いてしまう人がいるのはわかっている。しかし国籍で十把一絡げに判断するのは早計だし、心の内で思っているのとそれを発露させてしまう、そこには雲泥の差がある。

「生まれた所や皮膚や目の色で いったいこの僕の何がわかるというのだろう」

この手の問題が生じるたび、THE BLUE HEARTSの『青空』の1節が思い起こされる。自由や平等を欲するはずのROCKやPUNKがプレイされる音楽フェスにおいて起きた、この人種差別。世界中のどんな人にもこんな気持ちになってほしくない。せめて現在の日本の夏フェスでは根絶されていることを切に願う。

タケムラアキラ

竹村哲●1995年にスカパンクバンドSNAIL RAMPを結成。2000年にリリースしたアルバム『FRESH BRASH OLD MAN』でオリコン1位を獲得するなど、一時代を築く。バンド活動と並行し、2001年からキックボクシングを始め、2014年10月に43歳の年齢でNKBウェルター級チャンピオンに輝く。2015年12月12日には後楽園ホールにて引退試合を行なった。SNAIL RAMPは現在、“ほぼ活動休止”中。