【掟ポルシェの食尽族】第11回:鮮度が命!食べる天国! 北海道の家庭料理・ホッケのフライ

連載・コラム

[2020/5/29 12:00]

自称「食べもののことになると人格が変わる」ほど食に執心する“食尽族”でミュージシャンの掟ポルシェ(ロマンポルシェ。、ド・ロドロシテル)が、実際に食べてみて感動するほど美味しかったものや、はたまた頭にくるほどマズかったもの、食にまつわるエピソードについて綴る連載。読んで味わうグルメコラムがここに!


第11回:鮮度が命!食べる天国! 北海道の家庭料理・ホッケのフライ


重要なのは「どの土地で食うか」ではなく「どの店で食うか」

 偏りまくった自分セレクトの美味いもの&現住所である福岡ディスが8割のこのコラム! 今回もまずは景気よく福岡県民の悪いところから! というかこれは福岡だけではなく、全国の地方都市でよく言われることでもあるんですが、その地方に行ってその土地の特産物的な食べものをすすめられるときに、「東京にはこんな美味い●●はないでしょう?」と完全に余計なひと言を付け加えられるというの。特に福岡県民がよく言うのが、「こんな美味い魚、東京にはないでしょう?」というやつで。本当に福岡県民の悪い癖でしてねこれ。「福岡を誇るときにまず東京を下げることで自分たちを上げる」。福岡県民の日本一とも言われる強い郷土愛と東京への対抗意識がごっちゃになった結果の言葉とはいえ、本当に下品なんでやめてほしい。東京をなんだと思ってるんでしょうか。普通に「福岡の魚、美味いでしょう?」でいいのに!

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 「東京みたいな水も空気も汚いところで穫れた食材を使った料理が美味いわけがない」という田舎の人特有の思い込みが大ッッッ嫌いでしてね。そりゃどこの都市だって美味い店もマズい店も両方ありますし、自分がたまたま入った店でなにそれがマズかったっていうだけで「東京は」と雑にまとめんなと。あのね、東京には全国から最高の素材が集まってきてますけど? ご存じない?
 これ、逆もよくあって、「北海道は水も空気も綺麗だから食べものも美味しいですよね」とか。北海道出身の自分から申しますと、その思い込みもなんだかなぁと。「どの土地で食うか」はまったく重要ではなく、「どの店で食うか」に尽きると思います。もっと言えば、美味い店にだってハズレのメニューや好みではない味付けはあるものだし、東京への敵愾心と無闇な自然信仰を忘れ、「本当に美味いものが食べたい!」と細やかに願えば、それに見合う情報は常に入ってくるものです。

 あるものの評価を古い記憶や又聞きの伝聞を元に定め、そこからブレないでいるのは全然ほめられたことじゃありません。料理の味、素材の鮮度保持技術といったものは、どの街でも数年でかなり進化し更新されているわけです。たとえば東京在住時25年に渡って住んでいた中野を例に言いますと、25年前はまぁそれは古い味の店ばかりでした。ラーメン屋で言えば大勝軒やどさん子ラーメン等の昔ながらの味のチェーン店がほとんどだった時代、「東京のラーメンは地元北海道のラーメンに比べて味が薄くてあまり美味しくないな」という印象を自分自身持っていました。それが1996年に青葉ができて徐々に人気を博してきたことにより2000年になる頃くらいからラーメン激戦区となり、ユーザーにとっていい意味での競争が起きたことで昔からあったどうでもいい味のラーメン屋が潰れて淘汰され、革新された味覚を持った新しい美味しさのラーメン店がいくつもできて、中野に食で栄える街のイメージが付きました。味覚にこだわりを持つ人が集まる街として印象が更新された結果、居酒屋など他業種でも美味しい店が増えていった、という経緯があります。中野の味覚をめぐる状況は刻々と進化し、店の顔ぶれもここ2~3年ですら全然違います。

 「東京で食った魚がマズかった」という情報の源は、そういった味が更新される遥か前のデータである気がしますし、その情報だけが頭に残っていて端から東京の食に対して穿った目で見ているうえに、たまたま体験し口に合わなかった店数軒の極少数のサンプルをもって「東京は、」としているだけで、そういう気持ちだと本当に美味い店に出会っても認められず、とても損をしているなぁと思うのです。もったいないですよ! いらんこだわりは捨てましょう!

新鮮でないと作れない“ホッケのフライ” が1年中食べられる店はココだ!!

 「その土地でないと食べられないもの」も、素材の鮮度保持技術や輸送手段の進歩によりかなり変わってきました。え、こんなものまで入荷してるんだ!と驚いたのが、3年ほど前、東京・中野のスーパーの鮮魚売場で生のホッケがあったこと。ホッケという魚のことを多少知っていれば、これがいかにとんでもないことかおわかりかと思います。足の早い魚であるホッケは、一般的には開いて内臓を取り除き塩を振り、しばらく保存が効くホッケの開きにされて干物として流通していますが、ホッケが近海で獲れる北海道では、ホッケといえば開きよりもフライのほうが家庭料理としてはよく食べられています。中野のスーパーで生ホッケを見かけて驚き即購入、中野の仕事場マンションに帰ってすぐにフライにしてみました。あらかじめ食べやすいサイズに切って塩こしょうして粉つけて溶き卵に入れてパン粉をまぶし、油でサッと揚げてすぐ食べます。うまい! ウスターソースかけても醤油をかけても、もちろんそのままでもうまい! 東京でもなんの遜色ないホッケのフライが食べられる時代になったんだなぁと。「北海道で獲れた魚だから美味い」のではなく、「日本全国どこでも変わらぬ鮮度の魚が食べられるようになったから美味い」のです。時代は変わっています。マグロという魚の名前はその昔我々が食べる頃には鮮度が落ちて真っ黒だったからその名がついたそうですが、いまや黒いマグロの刺身なんて誰も食べていません。「東京の魚はマズい」と古い情報をあいも変わらず振りかざす御仁は、「マグロの身の色は黒い」と言ってるようなものなのです。

 ホッケのフライ、北海道の家庭料理としてはメジャーなものの、足の早い魚故安定した仕入れが難しく、居酒屋などでメニューにあることは産地北海道でも稀です。1年を通じて獲れる魚でもありますが、ホッケの漁獲高が全体的に下がってきている昨今、旬の5月~7月以外は東京のスーパーでもそれほど見かけません。鮮度保持以前になかなか獲れない魚になってきているのです。
 それでも! この文章を読んでなんとしてもホッケのフライが食べてみたい!と思ったあなた! 札幌まで行けばなんとかなります! 札幌・すすきのにある『刺身居酒屋だんちゃん』は、ホッケフライが名物。ここではほぼ1年中、おいしいホッケのフライが食べられます! ここのホッケフライはお店の大将が、その日の朝に釣れた釣りホッケのいいやつだけを厳選して仕入れ。サックリ揚がったホッケフライは下味がついているので何もかけずそのままいただきます。釣りホッケ特有の脂の乗った白身の甘みとふわふわの食感に心も体もトロットロ。これはもう、食べる天国です。ああああ食べたくなってきた!!!! そしてだんちゃんでは、運がよければこのホッケを刺身(!)でも食べられます! これだけ足の早い魚が刺身で食べられるのは北海道でもそうあることではなく、初めてその存在がだんちゃんのメニューに載っているのを見たときは北海道出身の自分でも大変驚きました。フライや開きとまた違った別次元のうまさ。もうホント、うますぎて脳が揺れる思いがします。ああ~だんちゃん行きたい!
 この自粛期間が明けたら、ぜひみなさん札幌まで行ってだんちゃんでホッケフライ食べてみてください。遠方から駆けつける価値はもんんのすごくあります。

刺身居酒屋だんちゃん、ホッケのフライのほか、刺身盛り合わせが絶対マストです! 貝刺しも! んあああああああたまらん!!!!
5月3日にバースデーを迎えた掟ポルシェの著者近影!!!

刺身居酒屋だんちゃん

https://ja-jp.facebook.com/dan0327
札幌市中央区南5条西3丁目 Nグランデビル(旧第4グリーンビル)B1F
TEL:011-518-2287
営業時間:17:00〜22:00

掟ポルシェ 通販サイト開店!

『掟ポルシェ泥棒市場』https://okite.theshop.jp/

掟ポルシェ

おきてぽるしぇ●1968年北海道生まれ。1997年、男気啓蒙ニューウェイヴバンド、ロマンポルシェ。のボーカル&説教担当としてデビュー、これまで『盗んだバイクで天城越え』ほか、8枚のCDをリリース。音楽活動のほかに男の曲がった価値観を力業で文章化したコラムも執筆し、雑誌連載も『TV Bros.』、『別冊少年チャンピオン』など多数。著書に『説教番長 どなりつけハンター』(文芸春秋社)、『男道コーチ屋稼業』(マガジン・ファイブ)、『出し逃げ』(おおかみ書房)、『男の!ヤバすぎバイト列伝』(リットーミュージック)がある。そのほか、俳優、声優、DJなど活動は多岐にわたるが、ここ数年はアイドル関連の仕事も多く、イベントの司会や楽曲のリミックスも手がける。