酒井健太(アルコ&ピース)『チャンサカの気まぐれパンチライン』第37回:川崎家
音楽好きでラッパーとしてもひっそりと活動、一部では「ラジオスター」と呼ばれていたりもする鬼才(!?)アルコ&ピース酒井健太によるフリースタイルコ・ラ・ム!(月1回更新予定!)
俺の初めての家系ラーメン
濃いめ硬め。
頼むときはいつもこう。
たまーに食べたくなる家系ラーメン。
初めて食べたのは家の近所の川崎家。
中3の頃、家族みんな出かけてて台所に2,000円が置いてあった。
「なんか食べてね」
母ちゃんの置き手紙も添えてあった。
母ちゃんわりーけど部活終わった中3舐めないでくれよ。
全部使ってやんよ。
選択肢はたくさんあった。
宅配ピザ、コンビニで好きなもん爆買い、マック。
どれも最高だ。
俺は自由だ。
そのときふと近所の川崎家が思いついた。
あそこたまに並んでんだよなー。
美味いのかなー。
うわ、ラーメン食いたい。
でもひとりかー。
うわ、ラーメンの口になってきた。
店員さん怖かったらどうしよ。
うわ、ラーメンの胃になってきた。
変なルールあったらこえーなー。
うわ、もうラーメンになりそう。
ラーメンだ!
川崎家でラーメン食べよ!!!
2,000円をポケットにしまって、玄関を飛び出す。
高鳴る鼓動。
普通に歩いているつもりだが、いつもより早いのがわかる。
もう店員がこわかろーが、ローカルルールがあろーが、関係ねー!
誰も俺を止められない。
俺は……俺は……川崎家のラーメンを食う。
着いた。
ものの5分で着いた。
いったん店の前を通り過ぎて店内の確認。
やはりそこそこお客さんが入っている。
こえー!
でも逃げちゃダメだ。
ここまで来たんだ。
町内を歩いてひと回りしていざ入店。
「させーーー!!!!」
店員さんの威勢の良さに圧倒される!
やべー多分「いらっしゃいませ」って言ってるよ……
それが言いすぎて進化して「させーー!」になってるよ……
バカこえー!!
金髪のスパイラルパーマをかけた店員さんが問いかける。
「何にしましょ?」
「え、じゃチャ、チャーシューメン大盛にで」
噛んだ。
完全に噛んだ。
続けて問いかけられる。
「お好みはありますか?」
お好み……
お好み!?
なにそれ!?
店内を見渡すと黄色いパネルに「味の濃さ、麺の硬さ、油の量お好みで」。
これだ!!!!
「えーー、味濃いめで麺硬め」
「かしこまりましたーーー! 3番さん濃いめ硬め入りまーーーす!!!」
これが俺の初めての家系ラーメン。
味は言わずもがな最高に美味しかった。
そっからどの家系ラーメン行っても濃いめ硬め。
震える思いで入った家系ラーメン。
今では堂々と入れるようになった。
そしてボクは大人になった。
最近味薄めにして豚骨の出汁感を楽しむ人がいることを知って衝撃だった。
今度それやってみてまたひとつ大人になりたい。

(※次回は8月中ごろ公開っつー話!)