出産、育児、そしてあの事件……『永遠ていう安室奈美恵なんて知らなかったよね。』第9回

連載・コラム

[2018/7/16 07:00]

安室奈美恵に命を捧げる女装ライター・アロム奈美江が、引退する安室ちゃんへの愛をつづっていく新連載!


私の人生をも変えた悲惨な事件

引退表明をした小室哲哉さんの代表作品100曲+ボーナスディスクを集めた『TETSUYA KOMURO ARCHIVES』のBOX版を購入したので、最近はずっと聴いている私。

TETSUYA KOMURO ARCHIVES

掘ちえみさん、小泉今日子さん、内田有紀さん、篠原涼子さんなど、今ではタレントや女優として活躍している方たちも、かつては小室さんが手がけた楽曲を歌って歌手活動していたなんて、ヤングな読者さんたちは驚愕だろうね……。最初から知っていたというアナタは、相当なババアだよ!

もちろん、安室ちゃんの作品も『Body Feels EXIT』をはじめとした数曲がオリジナル音源で収録されているので、それだけでも安室ファンはチェックする価値ありのベストアルバムなんだけど、私自身も安室ちゃんを好きになって追いかけ始めるきっかけになったのは、やっぱり小室サウンドがあったからなんだとあらためて気づかされたわ。

ただミリオンセラーを連発し安室旋風を巻き起こっていた時期は、あくまで小室ファミリーの一員としてとか、同郷のよしみとして安室ちゃんを応援していた……という事実は否めない。

そんな私に転機が訪れたのは1999年。出産&育児のため1年の休業をしたのち、華々しく安室ちゃんが復帰を果たして早々のことだったわ。

3月、安室ちゃんの実母が殺害されるという事件が起きたの。親族間での悲惨な事件だったこともあり、マスコミはセンセーショナルに取り上げ、事件当日にまさかの新曲リリースが重なっていた安室ちゃんは急遽プロモーション活動一時中止に追いやられた。マスコミはお通夜や告別式に参列する安室ちゃんを追っかけ回していて、悲壮感漂う表情の安室ちゃんをとらえた写真が新聞の一面になっていたことを今でも覚えているわ。

そして事件から12日後、音楽番組『HEY!HEY!HEY!』の特番に生出演して活動を再開することになった安室ちゃん。司会のダウンタウンのおふたりも「絡みづらいわ!」と本音ツッコミをしていたけれど、さすがに安室ちゃんもまだ表情が暗くて意気消沈の精神状態が、テレビの前からでもビンビン伝わってきていたの。

それでも最新曲『RESPECT the POWER of LOVE』を踊りながら歌い上げる安室ちゃんからは、痛々しくもあったけれど、それ以上に何があっても歌い続けることを決めた強い意志を感じたのよ!

そして、テレビの前の私は「本物のプロだ! この人に一生ついていく!」って密かに決意した。安室ちゃんの人間性やプロ意識にも惹かれて、真剣にファンとして追いかけ始めたのは、その日からだった気がするわ。

安室ちゃんにとっての良い意味での卒業だったのかも

いつまでもキュートな容姿を保っている安室ちゃんだから、ついつい忘れがちだけど、彼女自身も今年で二十歳になった息子をもつ母親なのよね。引退発表後は、各メディアのインタビューで息子の存在が自身のアーティスト活動に関するモチベーションだったことをわりと多く語っているけれど、これまではバラエティ番組で息子から「安室ちゃん」と呼ばれているなどのエピソードをたまに語る以外、息子のプライベートな部分は徹底して守ってきた印象。かつて女性誌で息子といる写真を勝手に載せられた際には、名誉毀損とプライバシー侵害で訴訟を起こしていたり。安室ちゃん怒らすと恐いんだからね!

多忙な芸能活動の合間を縫って、息子と過ごす時間はきっちり取っているとか、学校への送迎をできる限りやっている、といった良き母親エピソードは、結局週刊誌とかからの情報なんだけど……。自分自身と同じ母子家庭だからこそ、子どもを自分の犠牲にしたくないという想いが強いのかもしれない。

安室ちゃんの母親と息子の話をするうえで外せないのは、自身が離婚後に左の二の腕に刻んだタトゥーのこと。母を悼むメッセージと息子の名前を刻んでいて、決して多くは語らないけれど、安室ちゃんの親子愛をファンはそこから感じ取っていたの。

だからこそ、デビュー15周年を迎えたときからジャケット写真などに写っているタトゥーが徐々に薄くなっていったのをファンはみんな見逃さなかった。今では完全に消滅してしまった(ように見える)けど、その理由については本人から一切語られず、憶測ばかりが飛び交っているわ。

デビュー15周年のライブツアー『namie amuro BEST tour “Live Style 2006”』のパンフレットの最後のページには、英文で以下のような母親へのメッセージが記載されている。

「私が心から望んでいたこと、それはあなたとデビュー15周年を一緒に迎えること、そして記念すべきステージでの喜びを一緒に味わうことでした。お母さんに届くことを祈りながら歌います。母に愛を込めて安らかに眠れR.I.P.」

無事に節目を迎えられたことと、息子もある程度成長したこともあり、それまで安室ちゃんの活動意欲を掻き立てていた何かから、良い意味で卒業できたのかなと私は想像しているわ。

その翌年には、「散々でも前に続く道のどこかに望みはあるから」とポジティブに歌った『Baby don’t cry』でヒットを飛ばしているのも、なんだか感慨深いわね。

やはり母は強しってことかしら

さて、読者のみなさんにとってはどうでもいいとは思うけれど、ここで私の母親のこともご紹介するわね。

うちの母親は沖縄に残っていてひとり暮らし。私の父親とは20年以上前に離婚しているので、それからずっとひとりでスナックを切り盛りして生活してきた肝っ玉の据わった女よ。

単身上京していったひとり息子が、同性愛者なうえに、女装趣味が高じて突如本名を勝手に「なみえ」に変更するという暴挙に出たというんだから、相当な苦労人ともいえる女……。

名前変更の許可が家庭裁判所から正式におりたとき、私は事後報告で申し訳ない……と思いつつ意を決して電話で母に報告したのよ。そこで母は開口一番、

「字画はちゃんと調べたの!?」

えぇぇぇ! 気にするところそこかよおぉぉぉ!!

なかなか理解はしてもらえまいと思っていたのに、私の想像の範疇を超えたリアクションに度肝を抜かれたわ! しかも、今ではしれっと「なみえ〜」って私を呼んでくるし……。順応性ありすぎるだろっ!

やはり母は強しってことかしら。

「ねえ 良くなる方に捉えたら?
いつか笑って話せる日がくるから」

Baby don’t cry……沁みるわ〜。

アロム奈美江

ゲイをテーマにした電子書籍ライター、ゲイ雑誌『Badi』編集者を経て、2009年にドラァグクイーンデビュー。プライベートでは、30歳から女性ホルモン投与を始め、ゲイからトランスジェンダーの領域へ転向。現在は、流しの女装パフォーマー、ホステス、MC、イベントオーガナイザーとして節操なく小銭を稼いでいる。