【掟ポルシェの食尽族】番外編:脳が溶けるほど美味かったラーメン〜2023年に食べた美味しかったもの〜

連載・コラム

[2023/12/30 12:00]

自称「食べもののことになると人格が変わる」ほど食に執心する“食尽族”でミュージシャンの掟ポルシェ(ロマンポルシェ。、ド・ロドロシテル)が、実際に食べてみて感動するほど美味しかったものや、はたまた頭にくるほどマズかったもの、食にまつわるエピソードについて綴る連載。読んで味わうグルメコラムがここに!


番外編:2023年に食べた美味しかったもの


2023年に食べた美味しかったもの

★高円寺『ラーメン健太』の『ラーメン(バリカタ)』
★台場『三代目博多だるま』の『月見チャーシューメン(バリカタ)』
★高田馬場『渡なべ』の『ネギそば』&『コショーそば』
★桜上水『桜上水 船越』の『味玉塩チャーシューメン』
★名古屋『人生餃子』の『皿台湾チャーシュー』
★国分寺『RAMEN WANTO』の『冷やし腕刀そば』
★荻窪『人と羊』の『冷たいひつじそばJARIKO』
★新橋『ニューともちんラーメン』の『中華そば』
★恋ヶ窪『むたひろ食堂』の『中華そば』

 年末特別グルメ企画! 誰が待ったか!(待ってねえ!)、今年も脳が溶けて蒸発するほど美味かったものをダラッと列挙! 去年はラーメンだけで8,000字(書くほうも読むほうもしんどい)とかイキリ散らしすぎましたので、もうざっくりとね! 書いてきましょう! 箇条書き上等!

高円寺『ラーメン健太』 の『ラーメン(バリカタ)』

 いつものように美味いラーメン屋チェックのため、信頼のラーメン情報が得られる高田馬場の人気ラーメン店『渡なべ』店主・渡辺樹庵さんのツイッター(あえてXとは言わない)を血眼でメガ凝視していたところ、「くさうま」なる未知のキーワードが、様子の良い1杯の豚骨ラーメン画像とともに流れてきまして。「くさうま」とはつまり、「くさくて」「うまい」豚骨ラーメンの意。豚骨ラーメン店の店先から漂う特有のニオイとはまた違った熟成発酵臭のことらしい。ってことは、これ絶対俺食べに行かないとダメなやつじゃんと即判断。まだ肌寒い5月中旬、初めて訪れ入店を待つ列に並びます。もうね、店先からくせえの! 発酵食品特有のおいしいくさみ! まさに匂いからしてくさうまの予感MAX! 店主ワンオペ故多少癖のあるレギュレーションで多少ドギマギしながら麺バリカタ注文、座ってすぐ出てきたラーメンが、うんんんっまままままあああああああああああああああいいいいいい(誇張なしで叫び声がロングになっちゃうくらい美味い)!!!! スープは三層構造になっており、まず表面を覆う透明な豚の脂が著しく熟成発酵しており、ニオイと旨味の肝がここにギュッと詰まってる! 福岡の製麺所から毎日取り寄せている細麺をこの表面脂層をできるだけ崩さないで食べることにより熟成発酵=くさうまをより享受できる。さらに食べ進めるとその下の豚骨スープ層上部はあの福岡の名店『安全食堂』をも想起させる甘みも感じるふくよかな味わい、その下丼の底には佐賀県のラーメンのような熟成しまくった骨粉ザラザラ層が、比較的あっさりした味わいのラーメンにワイルドな深みを加えており、初めて味わう1杯の豚骨組曲にうっとり。そうです。これは、恋。『ラーメン健太』の豚骨ラーメンに恋をしてしまったの。福岡に6年間住んでいた自分から見ても、こんなに完成度の高い豚骨ラーメンは本場福岡にもなかなかないと断言できます。すっごいの。

 ラーメン健太は2005年開店。当初は福岡によくあるスタイルのおでんをツマミに酒を飲みシメでラーメンを食べる「飲めるラーメン屋」として夜帯に営業。地元高円寺民に愛される店でしたが、2021年初頭、コロナ禍でお酒の販売が難しくなってきたのをきっかけに、昔の福岡の屋台のラーメンのような熟成発酵した“くさくてうまい豚骨ラーメン”が作りたくなり、福岡の名店『駒や』で短期修行。帰ってきて2021年3月から営業時間を昼帯に変更して駒や仕込みのくさうまラーメンを提供したところこれが爆発的にヒット、瞬く間に人気店の仲間入りをし、ここ数年は東京ラーメン百名店にも選出されています。そりゃそうだよ、すんげえうんまいっすもん。
 店主の健太さん曰く、「大雨の次の日と夜に火入れした翌日は美味い」のだそう。何その豚骨熟成発酵経験則! 低気圧がスープの熟成発酵をいい感じに助長するらしく、くさみとうまみが見事に融合する率が高くなります。豚骨ラーメンを長いこと同じ店に通って食べている方ならおわかりかと思いますが、豚骨スープは味に多少なりのブレが生じるものです。気候条件等がラーメンの出来に影響を与えて、普通に美味しい豚骨ラーメンがすごく美味しいときととんでもなく美味しいときとうわああああすんんっげえええうまあああいっっ!!!って日があって、当たりの日に食べてしまったらもう虜です抗えません絶対に。あとは当日突発的にラーメン健太ツイッターで告知されるお酒も扱う夜営業・通称「夜健太」、こちらで夜の時間にもスープの寸胴に火を入れ作ったラーメンは、あっさりシャバッとした昼のラーメン健太をさらにシャバめに作っていて、もともと豚骨には濃厚よりシャバめを求める自分の好みにジャストフィットして、もう頭クラクラ膝カックン。で! その翌日はその軽快感が熟成発酵した豚骨スープにフレッシュな息吹を吹き込んでいて、自分的にも好みだし健太さんもおすすめなようです……ってあああもう健太の話だけで1,500字いっちゃったあーあ。とにかく2023年、俺が豚骨ラーメンに夢中だったのは確かで、それはラーメン健太に出会えたからなのです。来年もますます通っちゃううん。

『ラーメン(バリカタ)』
『ラーメン健太』の前で

台場『三代目博多だるま』の『月見チャーシューメン(バリカタ)』

 今春、これまた渡辺樹庵さんのツイッターを見ていたところ、福岡の豚骨ラーメンの名店の支店が東京にあり、しかもお台場という観光客かデートで利用するカップルぐらいしか来ないような立地で、不敵なまでにとんでもなくくさうまなラーメンを出している!という情報をビンビンにキャッチ。6月の大雨の翌日、くさうま発酵加減が最大値を叩き出す豚骨日和と判断、こんな日こそラーメン健太行こう!と思ったらまさかの福岡から麺が届かず早じまい&間に合わず! ぐああああ! もう豚骨の舌になってんのにどうすればいいの!?ってことで時は来た! 1時間以上かけてお台場までやってきました。平日の昼遅く、そこまで飯時じゃないにもかかわらずアクアシティのお台場ラーメン国技館の『三代目博多だるま』の前にだけはそれなりの行列。15分ほど待って入店して提供されたラーメンがやはりとんでもなかった。くっっさい! ホントくっっっさい!! い、いや、いい意味で! そしてそのくさみはうまさの重大なアクセントを担っちゃってるのです! シャバめの豚骨スープはエスプレッソ状の細かな泡で覆われており、脂感がそこまでないスープ表面から最高級の熟成発酵フレグランスが漂っていて、「あの、これパルメザンチーズ入ってないですよね?」と真剣に疑いたくなるほど。細麺を手繰る度感じる熟成うまみ波状攻撃、その昔滋賀県で食べた最高級の鮒寿司もよもやの未曾有の芳醇発酵具合に舌と脳が同時にびっくり。丼の底のほうにはやはりザラザラ骨粉。呼び戻し製法による超本格的な福岡屋台風豚骨ラーメンが、なぜ!? お台場に!!?? まわりの客が若いカップルだらけで、お前らこんなおしゃれとかけ離れたくさうまラーメンをデート時食べに来るなんて文化レベル高すぎなんじゃね? と日本の食文化そのものの熟成にも震えます。

 だるまは福岡の駅や空港の土産物屋にも必ずお土産用ラーメンが置いてあるほどの超有名店。その味をそのまま持ってきて2016年に東京・お台場で開業したのが『二代目博多だるま』。当初は発酵していない豚骨スープでやっていたそうですが、2022年4月29日より店名を三代目博多だるまに改めるとともに、すでに創業当初の屋台時代のくさうまを復活させて好評を得ていた福岡の店からスープの発酵タネを持ってきてくさうまな味にリニューアル。本当にこの大型商業施設の中に入ってて大丈夫かと心配になるほど、ハードコアなくさうま豚骨ラーメンの極北が味わえます。いや、これホントヤバいよ!
 健太とだるまの両者に共通するのは熟成発酵豚骨スープです。これによって都内の一部豚骨ラーメン店で、自分の店のスープに独自のくさみを出そうという流れが出来ています。ラーメンに限らず、鮨なども昨今ネタを木箱で数日寝かせて旨味を出す低温熟成が最新の調理法として見受けられるようになっていますし、味の世界の日進月歩はここ数年「熟成」のフェイズに突入しているのだとを痛感するとともに、まだまだ未知の美味いものに出会えることに嬉しくなってしまいます。

『月見チャーシューメン(バリカタ)』

高田馬場『渡なべ』の『ネギそば』&『コショーそば』

 基本この俺内年間美味いものアワードは今年新しく知った店中心でアワードしちゃう企画なのですが、今年も『渡なべ』の限定がヤバヤバでしたんで絶対ご紹介。西武新宿線沿線住民となったここ数年、最寄り駅付近の飲食店のパッとしなさに絶望しかなく、2022年やっとの思いでたどり着いたのが高田馬場渡なべ。上記2店舗も渡辺樹庵さんのツイッター(今年食べて美味かったもの樹庵さんに頼りすぎですがそこには一度目をつぶって下さい)を見ていて知ったわけですが、ラーメン店店主でありながら自ら店に立つことはほとんどなく、地方特性に富む伝統的な美味しいラーメンを食べ歩いては自らのお店にすぐフィードバック&ちょいトゥーマッチな感じで見事に再現し、我々ラーメンに刺激を求める層を狙い打ちしたかのような限定ラーメンとして提供してくれるのマジありがたい。特に2023年感動したのが年始1月の『ネギそば』! 埼玉の奥地・秩父に古くからある名物ラーメン『珍達そば』を無化調インスパイアしており心憎さ無限大。当方ラヲタじゃありませんゆえ不勉強にも元ネタ未食で申し訳ないですが、たっぷりの長ネギと吊るし焼きチャーシューをサッと煮た醤油味のラーメンがとにかくアツアツで提供されて最高に美味い。標高高い秩父は関東屈指の寒い町、ラーメンにもスープの温度を極力高温に保つべく大量のごま油が投入されており、寒い冬に食べるとその真価が味わえる。渡なべでも提供前器を限界までチンチンに温め、小鍋で1個ずつ調理して最大限に提供温度を高める努力がなされていて、アツアツうまうまで啜るごとに涙と洟に咽びます。あの、サウナでととのうってあるじゃないですか。あれと構造的には似たものがあるのです。寒い季節に冷えた体に火傷しそうなくらい熱い高温食をハフハフしながら投入すると、体内温度の急上昇にかなりボーッとしてきます。ラーメンは味だけじゃなく温度も楽しむことができる料理であることを実感。あえて素朴な感じを残した中太麺との相性もバッチリです。食べたあとの「あー幸せ……」というキマり具合ハンパない逸品。

 片や4月に提供されたコショーそばもヤバうまドラッギー目ん玉飛び出ラーメンで中毒者続出! WBCで大活躍したヌートバー選手のペッパーミルパフォーマンスにヒントをもらった渡辺樹庵さんは、今はなき品川の某店で提供されていたコショーそばをリアニメイトさせます。品川某店のは自分も食べたことありますが、タンメンスープの上にもやしと豚バラ肉のあんかけが乗った化調が効いたラーメン、そこにちょっと多いかなという程度のラーメンコショーがふりかけてある、あの店のあれです。だがそこはそれ、渡なべの限定ですから、ラーメン好きがちょっと頭を抱えて苦笑してしまうほどの魔改造が施されるため、コショーの量が明らかにトゥーマッチ。さらに店員さんのそのときの気分でコショーの量を鬼盛りしてくれて、食べるとちょっといい感じに具合が悪くなります。今春3回食べましたが、3回目のときは火山灰が積もった如くモリッモリに盛られたコショーの大量摂取により、耳の中で蝉が鳴いているような疑似ミンミンが脳内に到来。家帰って少し昼寝しました。うまい、でもこれ以上はあぶない。ラーメンというものに盛り込めるエンタテイメントの質には、まださまざまな未知の要素が残されていることを、渡なべの限定は教えてくれるのです。ありがてえ。

『ネギそば』
『コショーそば』レベル1
『コショーそば』レベル2
『コショーそば』レベル3

桜上水『桜上水 船越』の『味玉塩チャーシューメン』

 2023年1月OPENと同時に行列必至の人気店になったのが『桜上水 船越』。俺なんかが言うまでもなく今年ラーメン好きの間で話題の的だった店でして、東京ラーメン界の権威である『TRYラーメン大賞2023-2024』で見事TRY新店大賞総合1位を獲得。そりゃそうだよ、バリッバリうめえもん! そして『桜上水 船越』が東京ラーメンのひとつの頂点に立ったことで、ここ10年ほどで確立されつつあった「美味しいラーメンのトレンド」が変わりつつあることも示しているのではないかと。
 店主の船越さんは高田馬場『渡なべ』で12年修行されていた方で(これまた渡なべ絡みで申し訳ないですが……美味いんだからしょうがないの)、渡なべの地方インスパイア限定の味作りを任されることで腕を磨き、しまいにゃ師匠の渡辺樹庵さんから「船越先生」と呼ばれるまでに。そんな船越先生が独立し、作ったラーメンがどんなものかというと、「どこかの地方に昔からありそうな(それでいてどこにもなかった)素朴で懐かしい(感じを脳に錯覚させる)ラーメン」。塩と醤油、ふたつの味で始まって現在は塩味の中華そば一本に絞って提供されていますが、自分が食べた味玉塩チャーシューメンは、豚骨豚足、鶏、牛脂の動物系素材を中心に、煮干と昆布も使った白濁乳化スープで胡椒がかなり効いて素朴さが大暴れしており、うまみが分厚くて唸ります。太い縮れ麺は麺量が200グラムもあって、やはり地方都市に昔からあるラーメンのような満足度。ここ10年ほどの東京ラーメンのトレンドは、澄み切った清湯スープに麺線を揃えた中細麺が小ぶりな丼に収められている洒落たものだったりするわけですが、野暮ったさまで感じる素朴なうまみの提示はその真逆故に強烈なオリジナリティを放ち、唯一無二で絶賛されて然るべき。東京のラーメン好きが待ち望んでいたネクストレベルがここにあります。吊るし焼きと煮豚の2種チャーシューもメチャメチャ美味く、メンマの味食感ともに完璧。具材のひとつひとつに丁寧な仕事が感じられ、1杯のラーメンに気が遠くなるほどの工程が詰まっていることがわかり結構とんでもない。上に乗った小松菜にとろみのあるスープを浸して食べると、この完全試合のようなラーメンの真価がわかる気がします。美しい清湯スープ+中細麺ラーメンが覇者だった時代にひとつの区切りを与えそうな、まさに2023年、新時代の1杯。ま、今更俺が言うまでもないんですけども!

『味玉塩チャーシューメン』
『桜上水 船越』の前で

名古屋 『人生餃子』 の『皿台湾チャーシュー』

 地方に行けば美味いものが待っている! でもあまり行く機会がないってんで毎度同じもの食べちゃうわけ。美味いものがいろいろあって迷っちゃう名古屋、やっぱ味仙の今池本店or矢場店マストじゃないですか。台湾ラーメン美味しいし。でも2023年はさすがに短期間に名古屋何回も行きすぎたってんで新規開拓しようと。で、インスタで流れてきてこれ絶対食べないとダメなやつ!と、ビビッときたのが六番町『人生餃子』の名物・『皿台湾チャーシュー』! そうです! 台湾ラーメンの汁なしバージョンっつうか焼きそば版台湾ラーメンというか! こんなのどう考えても美味いに決まってるじゃないですか。ビールに合う予感しかしないでしょ。で、行ってきました! 朝開店前とんでもない大大大行列、11時開店なんで10時35分に行ったら並び24番目(泣)。で、食券買って待つこと約70分、11時45分入店。座ったらすぐ出てきましたよ皿台湾! うんままああああいいい!!! かつてこれほどまでにビールが進む食事があったでしょうか! 多分あったと思うけど……やっぱこっちでお願いします! 焼きそば部分はにんにく、醤油+輪切り唐辛子で派手に味付けされておりしょっぱ辛うまくて概ね想像どおりの味なんだけど、オプションで上に乗ってる厚切りチャーシューが! ビー・ル・に! 合・う・の!!! 食べたの日曜昼なんだけどこれは神様も「昼間っからビールですか……しょうがないな2本までだよ」と許してくれるはず(※日曜昼は混雑するので瓶ビール2本まで購入制限あり)! 逆にビール2本までにしてくれて良かったっつうか。こんなん店に住めるレベルで長居しちゃうでしょ。……なんかあまり味の説明してないけど、これはもう写真見てピンとくる系だと思いますんで、説明とかいいよね? 激しく美味そうでしょ?

『皿台湾チャーシュー』

 人生餃子、目下売出中というか、この皿台湾を名古屋の新名物にしてやろうという気概がビンビンにうかがえて素晴らしいです。開店前、作りたてのチャーシューの塊撮影タイムもあって、インスタ映えするこの料理を世界に発信してください!というその意気や良し。俺もインスタで画像見てまんまと乗せられましたし。また絶対行きます! あ、ドンキなんかでまだ買えるカップ焼きそば版皿台湾もよくできてるんで、そんな簡単に名古屋行けるわけねーだろ勢にはそっちもおすすめです。

チャーシュー撮影タイム
『人生餃子』の前で

国分寺『RAMEN WANTO』の『冷やし腕刀そば』

 近所に美味い飲食店など存在しない東京都下某市の我が町。チェーン店もじゃない方がすべて近所に集結、ナメんじゃねえぞと不貞腐れておりました今年も。マジファック。なもんで、美味しいものを食べたければ電車に乗って遠くまで行かないとダメなんですが、ギリ自転車で行けるのが国分寺。さすがは中央線沿線、シャレた店だらけですわ。で、たまに行ってるのが『RAMEN WANTO』。西荻窪『麺尊RAGE』の支店として2021年春開店して以来店名やメニューを変えてやってますが、開店直後からあるニンニクと唐辛子の辛さを効かせた腕刀そばが一押しで、ちょっとほかにはない味でたびたび食べてました。で、今年その冷やしVersion提供開始っていうんで食べたら、まー酷暑の今夏に最適な感じの仕上がり。昨今流行りのつけ麺でよく使用される昆布水、本来ならあまり魅力を感じないんで敬遠していたところ、冷やしのスープベースに豚鶏動物系スープと昆布水を合わせて使用してあるこちらのは旨さに直結、ゆえに別口っつうことで。辛くて塩っ気あって程よく酸味もある夏の冷やし腕刀は今夏何度も食べるほどハマりました。国分寺RAMEN WANTO、これ書いてる12月下旬現在、麻布台ヒルズに出店した麺尊RAGEの支店立ち上げに駆り出されて暫くの間休業中。1日も早い復活を望む。

『冷やし腕刀そば』

荻窪『人と羊』の『冷たいひつじそばJARIKO』

 昨年も美味いもの企画で取り上げた、先鋭的羊出汁ラーメンを出している荻窪『人と羊(ひととよう)』からも美味しかった冷やしメニューをご紹介。数日間で変わる限定で今夏ホームラン級に美味かったのが冷たいひつじそばJARIKO。羊コンソメ+ママカリ煮干のWスープという、人と羊の限定の中でもっとも好きな番紅花そばと一緒の羊出汁+魚介系で最高確定の組み合わせ、そこに大葉オイルを合わせ魚醤で旨みを補強しててとんでもなく旨かったです。低い温度で固まりやすい羊の脂分だけを取り除き旨味だけを残した冷製羊スープを作り出す技術に脱帽。赤身ローストマトン+ラムランプスモークに大葉を乗せてバリカタ細麺啜ればメチャ旨羊蕎麦天国昇天。羊そぼろと玉ねぎの薬味も完璧、丼の底スープにも胡椒が効いていてこりゃ最高。来年夏もぜひ再登場お願いしたい1杯。

『冷たいひつじそばJARIKO』

新橋『ニューともちんラーメン』の『中華そば』

 昨年ベストの高円寺ともちんラーメンは、所謂「ちゃん系」で1番美味しい(自分調べ)店としてご紹介させていただきましたが、ともちんラーメンを人気店にしたバンタム店長が、社長命令で新橋でちゃん系の新店立ち上げを任されたのが新橋『ニューともちんラーメン』。メニューは中華そば一本のみ、営業時間は平日朝8時から15時まで。オフィス街でのサラリーマン需要に的を絞り提供しているそのラーメンは、高円寺で叩き出したちゃん系のバッケンレコードを更新。ネオノス(昔懐かしいラーメンの最新換骨奪胎版の意)の極北を味わえます。実は毎日微妙に味や材料を変えたり等、より美味しくなるための実験を行い(社長に内緒で味変えて怒られてすぐ戻した模様)、ラヲタのバンタム店長らしいラーメン作りを楽しんでいる姿勢も魅力です。未食ですが11月からはトッピングにワカメが登場。あのバンタム氏が満を持して発表したトッピングだけに最上級の高級ワカメかと思いきや、なんの変哲もない普通のワカメなんだとか。なぜ今このタイミングでワカメなの?と訊くと、「一部の名店を除いて、ワカメの乗ったラーメンって一般的にダメなイメージしかないと思うんですよ。でも、僕はそんなワカメトッピングの既成概念を打ち破りたい。カウンターカルチャーとしてのワカメです!」と、もうよくわからないことを言い出して爆笑。ラヲタを極限までこじらせたバンタム店長が言うことなので、ワカメが苦手な俺も次回必ずトッピング! 「めっちゃ合うんですよワカメ!」だそうです。

『中華そば』
『ニューともちん』のバンタム店長と

恋ヶ窪『むたひろ食堂』の『中華そば』

 やっと近所にまともなラーメン屋ができたーッ! 近所って言っても全力で自転車こいで20分くらいのとこなんで全然近所じゃないっちゃないけどーッ! でも美味しいから無理やり近所にあると念力で思い込んでご紹介。国分寺を中心に数軒のラーメン屋を展開するムタヒログループの新店が、西武国分寺線恋ヶ窪駅徒歩6分の地に2023年10月オープン。それが『むたひろ食堂』です。ムタヒロは各店舗味が違いますが、こちらは長岡生姜醤油インスパイア。生姜醤油ラーメンで店名に「食堂」ってついてるということで、ラーメン好きならあの某有名人気店を思い浮かべますが、吊るし焼き燻製チャーシューの甘くふくらみのある風味がスープに反映されていてバリバリ美味いです。長岡にあっても人気出ちゃうんじゃないかというくらいよく出来た生姜醤油ラーメン、お近くの方はぜひ。お近くでない方は秋葉原……、いやなんでもありません。

『中華そば』

 そんなわけで気づけばまた8,000字オーバー(泣)! ぎゃーまた今年もやっちゃった! まだまだ書いておきたい美味しい店あるんですけど、これ以上は読むほうも書くほうもしんどい! というわけでラーメン以外の美味しいお店について触れる機会があったらまたお会いしましょう!

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書籍『食尽族〜読んで味わうグルメコラム集〜』表紙

書籍『食尽族〜読んで味わうグルメコラム集〜』好評発売中! 自称「食べもののことになると人格が変わる」ほど食に執心する“食尽族”の掟ポルシェが、これまでに食べて感動するほど美味しかったもの、はたまた頭にくるほどマズかったもの等、食にまつわるエピソードを独特なタッチで綴ります。さらに書籍限定の新録コンテンツとして、大のラーメン好きとして知られ、著書『ラーメン狂走曲』も話題のベーシスト田中貴(サニーデイ・サービス)、書籍にも登場し筆者が愛してやまないカレー店『かれーの店 うどん?』店主との特別グルメ対談も収録。食欲をそそること間違いなしの1冊です!

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掟ポルシェ

おきてぽるしぇ●1968年北海道生まれ。1997年、男気啓蒙ニューウェイヴバンド、ロマンポルシェ。のボーカル&説教担当としてデビュー、これまで『盗んだバイクで天城越え』ほか、8枚のCDをリリース。音楽活動のほかに男の曲がった価値観を力業で文章化したコラムも執筆し、雑誌連載も『TV Bros.』、『別冊少年チャンピオン』など多数。著書に『説教番長 どなりつけハンター』(文芸春秋社)、『男道コーチ屋稼業』(マガジン・ファイブ)、『出し逃げ』(おおかみ書房)、『男の!ヤバすぎバイト列伝』(リットーミュージック)、『豪傑っぽいの好き』(ガイドワークス)がある。そのほか、俳優、声優、DJなど活動は多岐にわたるが、ここ数年はアイドル関連の仕事も多く、イベントの司会や楽曲のリミックスも手がける。