まるでナッシングスファンの女子会! 愛にあふれたNCISフォトブック発売イベントの様子をたっっっぷりと

特集・インタビュー

[2016/10/23 12:00]

Nothing's Carved In Stoneが初のドキュメントフォトブック

ELLEGARDENの生形真一(ギター)がストレイテナーの日向秀和(ベース)に声をかけたのをきっかけに結成され、最強実力派ロックバンドとして熱い支持を集めているNothing's Carved In Stone(以下、ナッシングス)が、9月28日にバンド初のドキュメントフォトブック『僕らにとって自由とはなんだ Nothing's Carved In Stone』を発売した。

なんと著者は『羊と鋼の森』で2016年本屋大賞を受賞した作家・宮下奈都氏。バラエティー番組『アウト×デラックス』では「ザ・ハイロウズが好きすぎる」と公言していたが、実は大のナッシングスファンでもある。そして、写真は堀田芳香氏。ポール・マッカートニーやマドンナ、レディー・ガガなど、数々の洋楽アーティストを撮影して来た日本を代表するロックフォトグラファーだ。堀田氏はデビュー時からナッシングスを撮り続けてきた。

そんなふたりのナッシングス愛が形になったのがこの本だ。

「高校のクラスでとなりの席同士だったふたりが、30年後、ひとりは大作家になり、ひとりは写真家になりました。そしてふたりで一緒に大好きなバンドの本を完成させることができました!」 (堀田氏のInstagramより)

ふたりは地元・福井の高校時代からの友人同士。ロック好きだった宮下氏を「絶対に良いから」と堀田氏が誘い、一緒に福井のライブハウスにナッシングスを観に行ったのが始まりだったという。

大阪で発売記念イベント……ふたりのトーク&サイン会からスタート

十月十六日、日曜日、晴れ。
大阪梅田の紀伊國屋書店グランフロント大阪店にて同書の発売記念イベントが行われた。お店の入口には宮下氏のポスターも貼られていた。

ナッシングスのメンバーは出演しないものの、このイベントのために堀田氏が撮影したメンバー独占インタビュー映像や、同書未収録写真が公開されるということで、宮下氏のファンだけでなく多くのナッシングスファンが集まった。なかにはライブさながらにナッシングスのTシャツを着ている女子も!

まずは『宮下奈都×堀田芳香トーク&サイン会』がスタート。この本ができあがった経緯からトークが始まった。同書は2016年の5月に行われたナッシングスの日比谷野外大音楽堂でのワンマンライブのドキュメントを中心に構成されているが、宮下氏と堀田氏が同ライブを一緒に観に行き、「これを形に残したい!」と盛り上がったことから話が進んだそう。宮下氏が書いた序文を読んだギターの生形も、「ぜひ本にしたい」と賛同。ふたりでナッシングスの事務所に行ったときには、生形を前にした宮下氏があまりに緊張して息ができず固まってしまったという裏話も明かされた。

小説家である宮下氏がバンドのドキュメンタリーやインタビュー原稿を書くのは初めてのことだが、「ナッシングスへの想いがあふれて一気に書いた」という。同書は『僕らにとって自由とはなんだ』とのタイトルだが、「好きなバンドについて書くことができること。これが私にとっての自由だ」と実感したとも語った。

メンバーのインタビュー映像の上映

本ができあがるまでのエピソードを語ったあとは、待ちに待ったナッシングスのインタビュー映像の登場だ。「この本のなかで気に入っているところ」や「同書で宮下氏にインタビューされた感想」「野音のライブを振り返ってみて」などがメンバーごとに語られた。

まずはベースのひなっち(日向秀和)から。
「なかなか話し合うことがないですが、自分以外のメンバーが何を考えているかがわかったのがよかったです」「(宮下氏のインタビューは)普段音楽誌で聞かれることが少ない内面に迫るもので、自分を再確認することができて良い経験になりました」とコメント。

宮下氏はとにかくひなっちの指がキレイだと大絶賛しており、堀田氏もあまりに同氏が熱弁するため、指を切らないように写真を撮るようになったというほど! これからはひなっちの指に注目して観てみよう……!

続いてドラムのオニィ(大喜多崇規)。
「普段はライブ会場内しかわからないですが、ファンが過ごしている外の時間の風景を、文章を通してみることができてグッときました」「宮下氏のインタビューではいきなりスティックの話をしてくれました。でも、音楽観にすぐシフトしていって、宮下さんの人柄もあり、ホッして話せました」

このコメントについて宮下氏は、「本当は質問内容をワープロで用意していたのに開けず、スティックの話をしました」と明かし、「オニィはドラムの機材の話を愛おしそうにする、本当にドラムが大好きな人。ていねいにわかりやすく説明をしてくれる、頭の良い人」と語った。

そしてギターのウブさん(生形真一)。
「2、3年かかると思っていた本がこんなに早く完成するとは思っていなかったので、野音という節目で作品にしてもらえて嬉しかったです」「宮下さんのインタビューは角度が違って新鮮。福井のライブで感想とそれぞれへの印象をFacebookに書いてくれたのですが、それがおもしろくて、いつかインタビューをしてもらいたいと思っていました」

ここでとても印象的なエピソードが明かされた。インタビュアーは取材時のインタビューを録音してからまとめることがほとんどだが、なんと宮下氏は一切録音をせずに臨んだというのだ。
「頭の中の記憶の方が真実」――この力に引き寄せられるように生形は素を出して語っていたようにみえたそうで、その姿はまるで自分自身に向けて語っているようにも感じたそうだ。

堀田氏によると宮下氏の記憶力は相当なもので、だからこそたくさんの引き出しがあり、豊かな文章を書くことができるのはないかとのこと。それに対して、宮下氏が「フォトグラファーは写真を通して刹那をその場所に残す。だから(堀田氏は)すぐにいろいろ忘れてしまうのかもしれない(笑)」と返し、笑いを誘った。

最後はボーカルの拓さん(村松拓)。
「(堀田氏に)ずっと撮ってもらってきた写真からはバンドの歴史が感じられ、ステージを通して見せている姿とは違ったナッシングスをみせることができて、宝物になりました」「タイトルは宮下さんと堀田さんが決めてくれましたが、曲の一節にもなった“究極の問い”。この答えを見つけたいと活動を行ってきましたが、宮下さんがインタビューのなかでみつけてくれました」

彼はポジティブなバンドのムードメーカー。彼の笑顔はみんなを幸せにしてしまうと言う。また、最後にバンドに加入した村松が近年どんどん前に出てくることにより、バンドとして面白みが増しているそうだ。堀田氏によると、村松は歳を重ねるごとに鼻の空洞の響きがよくなり、どんどん声に深みが増しているという。

このように、ふたりから飛び出すメンバーの印象はファンにとっても新鮮でおもしろいものだっただろう。今後の彼らの新しい見方、聴き方の参考になるかもしれない。

レア写真の公開コーナー

ナッシングスファンも、貴重な映像に気持ちが高まった様子。ここからは、同書に収録はされなかったが、堀田氏が撮り溜めてきたナッシングスの写真を、エピソードトークを交えながら紹介するコーナーだ。

デビュー時からの貴重な写真が公開されるが、堀田氏だからこそ引き出せるであろう自然な表情の写真は、まるでナッシングスの日常を覗き見しているようだ。バッチリ決まったアーティスト写真だけでなく、採用されなかった“某イギリスアイドル風写真”などを、笑いを交えながら紹介。ファンにとっては見たことがないであろうお宝写真が多数飛び出し、会場はまるでふたりと観客における「ナッシングス大好き女子会」のような大盛り上がりとなった。

愛を持って聞きたい、書きたい

トークのラストは観客からふたりへの質問コーナーだったのだが、ここでとても印象的だったふたりの言葉があった。宮下氏がこの本を執筆するときには「愛を持って聞きたい、書きたい」という気持ちを大切にしていたという。普段は小説家として文章を世に出す宮下氏。今回は小説ではなく、ナッシングスのいちファンとして彼らについての文章を書いた。「メンバーはもちろんのこと、1番はナッシングスのファンに喜んでほしいという気持ちで書いた」「ファンと一緒にNCISを愛でたい」という宮下氏の言葉が、この本のすべてなのではないかと感じた。

それは堀田氏も同じだった。同氏は撮影するアーティストをすぐ好きになってしまうという。「この人が好き!」「カッコいい!」と思って撮っているからこそ、愛のある写真として形に残るのだろう。これもまさにナッシングスへの愛の証だった。

最後はサイン本抽選会&サイン会!

最後は10名限定のナッシングスメンバーのサイン本抽選会! さらにここに宮下・堀田両氏のサインも加わるのだから、こんなレアなサイン本はなかなかない。サイン会には会場にいたほぼすべての観客が参加していたが、ふたりはサインをしながら、「どのメンバーが好きなんですか?」「あのライブ行きました!」などと、まるでファン同士のような和やかな会話を楽しんでいた。

「ナッシングスが好き」というピュアで強い絆

宮下氏のファンは、「この本を通じてナッシングスのCDを聴いた。ぜひライブに行ってみたい!」と語ってくれた。また、ナッシングスのファンからも「野音の景色が蘇った。自分と同じファンの目線で書かれていたので読んでいて楽しかった」「宮下さんのほかの著書も読んでみたくなった」と、大満足の声が飛んでいた。

小説家とカメラマンとバンドファン。交わることがなさそうな三者であるが、そこにはただただ「ナッシングスが好き」というピュアで強い絆があった。実は、このイベントを取り仕切っていた書店関係者の方々も、宮下氏とナッシングスが大好き。すべてが繋がったことで生まれた、とても幸せな時間であった。

「メンバーが60歳になったとき、ふたりでまた本を出したい!」と笑いながら宣言した宮下氏と堀田氏。このふたりなら、そしてナッシングスなら、きっと実現するのではないかと思わせてくれる。その日が来ることを楽しみに待ちながら、たくさんの人の幸せが詰まったこの本とともに、ナッシングスを愛でましょう!

[ニシコ]