音楽の都市伝説:自殺の聖歌

連載・コラム

[2015/11/19 12:00]

『月刊ムー』でも執筆するライター長田遊馬氏が音楽にまつわる都市伝説に迫る!


都市伝説――。世間に流布する「ある」のか「ない」のかわからない噂。それは、人から人へと語り継がれ、昔は単純に「怖い噂」として広まっていった。近年では、テレビ番組で特集企画が定期的に放送され人気を集め、今や現代人にとって「都市伝説」という言葉が当たり前のように認知されている――そんな時代になった。

今、本稿を読んでくれている読者諸氏も、秘密結社にまつわる話やアメリカ政府がUFOと宇宙人の存在を隠蔽している、などといった都市伝説を一度は耳にしたことがあるだろう。が、そういった陰謀に関するものだけではなく、「音楽」にも都市伝説=怖い噂が存在しているのをご存じだろうか? 本稿では、あまり知られていない音楽にまつわる都市伝説を紹介していきたいと思う。

自殺の聖歌『暗い日曜日』

(c) oiseyshowaa

“自殺の聖歌”と呼ばれる曲がある。1933年にハンガリーで発表された『暗い日曜日』だ。同国ブタペストでレストランのピアノ弾きだったレジュー・セレッシュが作曲、作詞はそのレストランのオーナー、ラズロ・ヤヴォールが書いたシャンソンの名曲だ。

時はおりしも、第二次世界大戦下で、胸が締め付けられるほど切ない『暗い日曜日』の旋律は、言い知れぬ不安を感じていた当時の人々の心を震わせ、大ヒットしたのである。

そんな大ヒット曲が、なぜ“自殺の聖歌”などと呼ばれるようになったのだろうか? それにはこんな背景がある。

実は、『暗い日曜日』がヨーロッパ全土を席巻した直後、ブタペストで自殺者が多発したのである。しかもただの自殺ではない。ある者は遺書に『暗い日曜日』の歌詞を引用して自殺、またある者はレコードでこの曲を聴きながら自ら命を絶ち、手に楽譜を握りしめながら亡くなっていた者もいたという。

こうした『暗い日曜日』との関連が推測される自殺者は、ハンガリー全土で157名にも及んだ。また、同じ事例はベルリンやパリ、アメリカのニューヨークなどでも報告され、いつしか“自殺の聖歌”と呼ばれるようになったのだ。

おそらく、死んでいった者たちは、曲が第二次世界大戦下だった暗い世相とシンクロし、世を儚んで亡くなっていったのだろう。だが、本当に“世情”が多くの自殺者を出したのだろうか? いや、そうではない。『暗い日曜日』には、秘された恐ろしいエピソードが存在する。

作曲者が『暗い日曜日』を作ったきっかけは……
実は、作曲者のセレッシュが『暗い日曜日』を作ったきっかけは“別れた恋人の死”だったのだ。彼が元恋人にもう一度会おうと連絡を取った。だが、その翌日、恋人が服毒自殺を遂げてしまったのである。かたわらに“暗い日曜日”というメモを残して……。

そう、つまり『暗い日曜日』はセレッシュの悲哀の念が込められた曲なのである。それが“呪い”となって流布してしまったのだ。また、当時この話を知っている者は、“恋人の怨念が曲に宿っている”“怨念が自殺を誘発している”とも口々に噂した。そして、セレッシュ自身も、『暗い日曜日』を発表してから30年余りが経過した1968年に投身自殺を遂げている。

今でも、イギリスのBBC放送などは、『暗い日曜日』を放送禁止にしているし、イタリアのローマでは、物乞いの口ずさむ『暗い日曜日』を耳にした少年が、有り金をすべて渡し、その直後に身を投げたという不可解な事件も起きているという。

最後に、『暗い日曜日』の歌詞を記しておこうと思ったが、どうやら禁忌を犯す行為のようだ。興味のある読者はご自身で調べてみるといい。だが、筆者はいっさいの責任は負いかねることをここで申し上げておく。


【著者紹介】

長田遊馬
東京都出身。超常現象研究家の新星。幼少のころからUFOや超常現象に造詣が深く、オカルト界の重鎮・並木伸一郎を師と仰いでいる。専門誌『月刊ムー』でもUFO、UMA、超常現象に関する記事を執筆している。好きな音楽はヘヴィメタル。超常現象を研究するかたわら、『地獄のメカニカルトレーニングフレーズ』(リットーミュージック刊)を片手に、日夜スウィープ奏法を練習中。

[耳マン編集部]