音楽の都市伝説:心霊音楽は存在する
『月刊ムー』でも執筆するライター長田遊馬氏が音楽にまつわる都市伝説に迫る!
『トゥオネラの白鳥』がヤバい
フィンランドの作曲家ヤン・シベリウスが、北欧神話をモチーフにした『4つの伝説曲』の中に『トゥオネラの白鳥』という曲がある。実は、この曲を子どもが聴くと、異変が起きるという。
そもそも、この4つの伝説曲は、青年レミンカイネンの恋と冒険を描いたものだ。
――心惹かれた美しい女性キュリッキと結婚を果たしたレミンカイネンだったが、約束を破られたために、彼女を捨てて旅に出る。彼は旅先のポヨヒラの地で、ひとりの娘に求婚するが、その条件として「ヒーシの大鹿を捕える」「ヒーシに棲(す)む火のような口をした雄馬に轡(くつわ)をつける」「黄泉の国トゥオネラの川の白鳥を射止める」という3 つの試練を約束する。
彼ははじめのふたつの条件は見事に果たすがトゥオネラでポヨヒラの牧者の策略に遭い、命を落としてしまう。それを知ったレミンカイネンの母は、急流渦巻くトゥオネラ川から息子の遺体を拾い、呪文と膏薬(こうやく)によって蘇生させ、故郷に帰るのだった――。
以上が、伝説曲の概要である。問題の『トゥオネラの白鳥』は、黄泉の国であるトゥオネラに流れる黒い川と、そこに妖しく漂いながら悲しげに鳴く白鳥の様子を幻想的な雰囲気で描いている。
ある人物がこの曲を指揮すると……
単純に考えると、レミンカイネンの死が呪いの元凶と思いがちだが、それは違う。なぜなら、この楽曲がもたらす呪いは、ある人物が指揮したときにしか起こらないからだ。その人物とは、イタリアの名指揮者アルトゥーロ・トスカーニ。彼が指揮したトゥオネラの白鳥を子どもたちが聴くと、突然興奮し、泣き叫び、失神したりするという。
しかし、この曲には以前に紹介した『暗い日曜日』と違って人の心を刺激する歌詞などはない。そして、トスカーニ自身も、この楽曲とは何ら関係はない。なぜならトスカーニに原因があるなら、ほかの楽曲でも同じような現象が起きてもおかしくないが、この曲以外でそれは確認されていない。では、いったいなぜこのような現象が起こるのだろうか?
以前の記事と同じような理由になるが、モノ作りにおいて、作られた“もの”には製作者の念が宿る。その人物がどんな思いで作ったかによって異なるが、それがプラスエネルギーだけとは限らない。つまり、マイナス・エネルギーが宿ってしまうこともあるのだ。
そのエネルギーが霊を呼び寄せることもある。『トゥオネラの白鳥』に霊魂が宿っているかどうかは不明だが、そうした“負の力”を宿していることだけは確かだ。それは作曲したシベリウスの念によるもので、さらにトスカーニの指揮に呼応して、子どもに影響を及ぼすのだ。
今ではシベリウスもトスカーニも他界し、トスカーが指揮した『トゥオネラの白鳥』を実際に聴くこともできない。もう原因を探る術がないのだ。ただ、最後にこれだけは言っておきたい。実際に“心霊音楽”は存在する、と。
【著者紹介】
長田遊馬
東京都出身。超常現象研究家の新星。幼少のころからUFOや超常現象に造詣が深く、オカルト界の重鎮・並木伸一郎を師と仰いでいる。専門誌「月刊ムー」でもUFO、UMA、超常現象に関する記事を執筆している。好きな音楽はヘヴィメタル。超常現象を研究するかたわら、『地獄のメカニカルトレーニングフレーズ』(リットーミュージック刊)を片手に、日夜スウィープ奏法を練習中。