「ここまで立ち直ったのは、つらいときも彼女ときちんと向き合ってきたから」【推しメンが結婚しちゃった日記】

　りなりーと手を振って別れたあと、僕はまたチェキ列に並びました。係の人にチェキ券を渡すと、白川ももちゃんが満面に笑みを浮かべてこちらへ走ってきます。普通に生きていたら、こんなに可愛い女の子が嬉しそうにこちらに走り寄ってくることって滅多にないよな……と思っていると、ももちゃんは「手でハートを作ろうよ」と言います。しかし僕は慣れておらず、うまくハートが作れません。そのままチェキが撮られました。するとももちゃんは両手の人差し指と中指でハートを作る方法をとても優しく教えてくれます。僕の人差し指と中指は慣れないポーズと緊張のためにプルプル震えたけれど、ももちゃんは「そうだよ！　上手だね！」と笑顔で褒めてくれたので好きになりそうになりました。

8月24日　土曜日

　一昨日ももちゃんに教えてもらった人差し指と中指で作るハートを練習していたら、とうとう上手くできるようになりました。嬉しかったので、セルフタイマーで写真を撮ってTwitterにアップしました。

9月5日　木曜日

　今日は美人女医さんの個別診察会に行ってきました。
　「日常生活を送っていて、梨華さんを思い出すことはありますか」と美人女医さん。
　「しばしば思い出しますが、以前よりはだいぶ頻度が下がりました」と僕。
　「思い出すときはどんな気持ちになりますか」
　「悲しい気持ちが5割くらいを占めますが、以前よりはだいぶ割合が下がりました」
　「うん、いい感じですね。田中さんがここまで立ち直ったのは、つらいときも梨華さんときちんと向き合ってきたからだと思います。梨華さんのディナーショーに行くかどうか迷っていたときがあったじゃないですか。迷った結果、ちゃんと行きましたもんね」
　美人女医さんはそう言ってにっこり笑い、僕もつられて笑顔になりました。それからガールフレンドのSちゃんとのデートが雨天中止になったことを思い出し、「親しくさせていただいている女性の話なんですけど、最近ちょっと疎遠なんです」と告げました。
　「何か原因があるんですか。最近その女性が忙しくなったとか」
　「原因はとくに思い当たりません。自然と疎遠になりました」
　「そのことについて、田中さんはどんな気持ちですか」
　「うーん、そうですね、切ない気持ちです」
　美人女医さんは、少し考えこんだ後で言いました。
　「親しくしている女性に関しては、一般の女性とそういう関係になれたことが大事です。上手く行かなくても、気にすることはありません。次にいい人が見つかれば、自然と気持ちがそちらに向かうと思います。また何かあれば相談してくださいね」
　僕は美人女医さんの言葉を大事に心のなかにしまい、診察室を出ました。それから大宮駅に戻り、セブンイレブンで発泡酒を買いました。大宮ソニックシティ前の公園に行って鳩や景色を眺めながらちびちび飲んでいたら、ふと以前出会ったセブンイレブンの爽やかすぎる店員のことを思い出しました。さっき発泡酒を買った店の若い男性店員です。春の陽光のような笑顔で僕の目をまっすぐに見つめ、心のこもった丁寧な言葉を提供してくれたあのハンサムな店員。ああ、あの店員さんにまた会いたいな。そう思って、夕空にそのハンサムな店員の素敵すぎる笑顔を思い描きました。