ガールフレンドとは会っていないけれど、僕にはいつでも会いに来れるアイドルがいる【推しメンが結婚しちゃった日記】

連載・コラム

[2019/8/12 12:00]

元モーニング娘。の石川梨華に10年以上“ガチ恋”を続けているドルヲタのふちりんによる完全ノンフィクション連載。梨華ちゃんに健気に恋をする彼が、2017年3月13日に結婚した彼女への想いを、結婚が近いという報道があった2017年元旦から振り返り繊細に紡ぐ。【ガチ恋……アイドルにガチ(本気)で恋をすること】


7月24日

ガールフレンドとは会っていないけれど、僕にはいつでも会いに来れるアイドルがいる


7月24日 水曜日

 もともとがんばってないのに、phaさんの『がんばらない練習』という本を購入しました。帯には「やりたくないことは、やらない」と書いてあります。僕はもともと、やりたくないことはやっていません。「でもたまにがんばってしまうし、たまにやりたくないことをやってしまうから、もっと上を目指そう」と思いながら本を開き、読み始めました。しかし数ページ読んだところで疲れてきて「これ以上読むと、それは“がんばり”になってしまう!」と思い、本を閉じました。ベッドに横になって目を閉じます。すると暗闇のなかに、立ち飲み日高の情景が浮かんできました。しばらくするとそれは大宮アイドール(行きつけのアイドルカフェ)の情景に切り替わり、可愛いアイドルたちと楽しげに話している僕の姿が現れました。そうなるともういても立ってもいられず、先日久しぶりに購入したコンタクトレンズを着けて外に飛び出しました。

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 大宮駅についた僕は立ち飲み日高に向かって歩きます。店内に入ると、仕事帰りのサラリーマンたちでかなり混み合っています。カウンターの一番奥が空いていたのでそこに行きました。いつものように生ビールを頼んでのんびり飲んでいると、隣に白髪のおじさんが立ちました。おじさんのすぐ後ろにはビールの樽が積み上げられています。これは面倒なことになったぞ、と思いました。僕が店を出るには、おじさんに「ちょっとすみません、通ります」とひと声かける必要がありそうだからです。
 僕は声が通らないし滑舌が悪いから、「ちょっとすみません、通ります」と言っても気づいてもらえないかもしれない。そしたら僕は、おじさんに接近して何やらモゴモゴ言っている極めて怪しい人間になってしまう。いやだなあ。このおじさん、さっさと飲み終わって帰らないかなあ。

 そう思ってやきもきしながら生ビールを飲んでいると、白髪のおじさんは2杯目の酒を飲み終えそうになったので、「お! そろそろ帰るかなあ。帰ってほしい。3杯目は飲まなくていいんじゃないの? 立ち飲み屋なんだし、さっと飲んでさっと帰るべきなのでは?」と心のなかで呟きつつ、横目でおじさんの動向を見つめました。しかしおじさんは3杯目を頼みました。「なんだよ! なんで3杯も飲むんだよ! がっかりだよ!」と僕は心のなかで慨嘆しました。携帯をポケットから取り出して時計を見ます。午後6時50分です。「もうこれ以上待てない。大宮アイドールで午後7時からライブが始まってしまう」。僕は隣のおじさんに声をかけることを決意しました。鼓動が速くなっていきます。ゆっくりと深呼吸して、生ビールを飲み干し、おもむろに体をおじさんの方へ向けます。そして小さく一歩踏み出し、やや声を張って「ちょっとすみません」と言いながら、空中で軽くチョップをしました。すると白髪のおじさんは飛び跳ねるようにして向こうに退き、わずかに頭を下げながら「あ、すみません」と声を発しました。僕は「このおじさん、めっちゃいい人じゃん。さっきはなんで3杯も飲むんだよ!とか思ってしまってすみません。ゆっくり飲んでください」と心のなかで謝罪しつつ、おじさんがあけてくれた道を小走りで通りました。(次ページへ)