ラストツアーの安室ちゃんを観て感じたこと〜アロム奈美江『永遠ていう安室奈美恵なんて知らなかったよね。』第8回

連載・コラム

[2018/6/15 00:00]

安室奈美恵に命を捧げる女装ライター・アロム奈美江が、引退する安室ちゃんへの愛をつづっていく新連載!


ツアー最終日前日の東京ドーム公演に行ってきたわ

安室ちゃん最後のライブツアー『namie amuro Final Tour 2018〜Finally〜』に参加できた読者さん、どれだけいらっしゃるかしら?

1公演につき1名1席分しか申し込めないとか、同行者がいるのであれば同行者もticket board(※電子チケット販売サイト)の登録が必要とか、開催当日もライブ会場で写真付き身分証の提示が必要など、かなり厳しい条件があるうえに、安室ちゃん引退フィーバーによって競争率も何倍と囁かれたこのライブツアー。

私も女装友達と手分けして先行予約から申し込んだけど、ことごとく落ちまくって、もうダメか……と思っていたところ、ツアー最終日前日となる6月2日の東京ドーム公演だけが当選したの!

私が沖縄から上京したばかりの19歳当時、安室ちゃんは小室さんプロデュース最後となるアルバム『break the rules』を引っさげてライブツアーをスタートさせようとしていて、まだ安室ちゃんのライブに行ったことがなかった私は、この機会に絶対行かねば!とチケットぴあに申し込むことを決意。

当時は受付専用窓口に電話をかけてチケットを申し込むのが主流だったのだけど(時代だわね)、まだ自宅に電話線を引いてなかったので、外の公衆電話からかけるしか手段がなかった。でも、受付開始日の東京はまさかの大雪……。初めて見る雪への感動もそこそこに、近所の公衆電話(しかもボックスじゃないっていう)へ走って、受付開始時間と同時にダイヤルスタート! なかなか窓口に繋がらず、何度も10円玉を入れ直してはリダイヤル。指先がかじかんで、うまくダイヤルプッシュできなくなってきた頃に、ついに窓口に繋がってチケット予約が成功したのよ! あのときの喜びと高揚感は今でも忘れられないわ。

あれからずっとライブに通い続けているけど、最後のライブツアーのチケットもとれて本当によかった……。「すべての音楽活動は、ライブをするためにしている」とたびたび語り、ライブをずっと大切にしてきた安室ちゃん。最後の勇姿、絶対に生で観なきゃ!

そんなわけで、ここぞとばかりに力入っちゃって、初めて安室コスでライブに行って参りました。Huluのインタビューで、「ファンの人たちにもいつもどおりな感じで観に来てほしい」と語っていた安室ちゃんを、今回は申し訳ないけど無視よ!

自宅からこの格好で電車はツラかったけど、これが私なりの本気! ニーハイブーツの中の蒸れ方ハンパない!

東京ドームに到着すると、同じく安室コスのファン(さすがに女子ばかり)が想像していた以上にたくさんいて、彼女たちの心意気も私と同じなのだと、勝手にシンパシー感じてみたり。なかにはチケットがとれず、音漏れだけを聴きに来ているファンもいたようで、なんだか涙ぐましい……。

いよいよ開演時間になると、ロボット風ダンサー2名がせり出しステージを走って登場し、火矢を放ってステージ上部に点火するというオリンピックを彷彿とさせる演出でスタート! 『Hero』を歌いながら姿を現した安室ちゃんの神々しさといったらもう! 昨年の紅白歌合戦でも歌唱した楽曲だしアンコールで歌いそうなのに、あえて1曲目にもってくるあたり、憎い演出だわ〜。

それからはファン投票で選出されたセットリストなだけに、ヒットシングル曲を中心に、ファン人気の高いアルバム曲も立て続けに歌って踊り倒していく安室ちゃん。火薬やLED照明を使った派手なステージ演出が時折入りつつも、引退を思わせるような感傷的な演出はなく、いつもどおり粛々とカッコいいパフォーマンスを続けていく姿に「やっぱりこの人はブレないな〜」と改めて感心しきりだったわ。

とはいえ、『Love story』の歌詞「生まれ変わっても 愛し続けるけど 一緒にはいられないもう」で、安室ちゃんにライブで会えるのは本当に最後なんだ……と変に感情移入して目頭が熱くなってみたり、激しいダンスナンバー『You’re my sunshine』の歌詞「long long time ago」を歌っているところで、同行した女装友達からの私の長めの顎(long 顎)に対する視線を感じてイラっとしたりと、感情があっちこっちに乱れていたことは内緒よ……。

全30曲を歌い終え、ダンサー陣を見送ったあとの安室ちゃんの久しぶりのMCでは、9月16日で引退したら二度とステージに立つことはないと改めて断言。まだライブ中にMCをしていた頃には、シャイで口下手な安室ちゃんらしく、特に話すことないけど……といった感じでグダグダなことが多かったけど、今回は一語一句を噛みしめるようにしっかりとした口調で「この25年間が私のなかでとても大切な思い出になりました」と語っていて、生のメッセージをファンに届けようとする安室ちゃんはすごく力強く前向きだったわ。

だから、悲しいとか寂しいという思いより、「安室ちゃんが次なるステージに向かおうとしてるのだから、ちゃんと送り出してあげなきゃ!」という思いが込み上げてきて、涙は不思議と出てこなかった。最後に投げキッスをしてステージ奥に消えていった安室ちゃんを見送ったあとも、妙な清々しさが残ったくらいよ。

……って、すっかりシメに入ろうとしちゃったけど、安室ちゃんの正式な引退まで、まだ3ヵ月ある。ライブDVD&Blu-rayのリリースが発表されてすぐさま予約したし、引退日には沖縄で本当に最後のライブをおこなうのでは!?という予測で、一か八か女装友達と一緒に沖縄行きのチケット予約もしちゃった私……。

安室ちゃん、貴女は引退までこれからどんな活動をするのぉぉぉ!? 早く教えてぇぇぇ!!

アロム奈美江

ゲイをテーマにした電子書籍ライター、ゲイ雑誌『Badi』編集者を経て、2009年にドラァグクイーンデビュー。プライベートでは、30歳から女性ホルモン投与を始め、ゲイからトランスジェンダーの領域へ転向。現在は、流しの女装パフォーマー、ホステス、MC、イベントオーガナイザーとして節操なく小銭を稼いでいる。