みんな絶望していたアムラーファッション〜アロム奈美江『永遠ていう安室奈美恵なんて知らなかったよね。』第7回

連載・コラム

[2018/5/16 00:00]

安室奈美恵に命を捧げる女装ライター・アロム奈美江が、引退する安室ちゃんへの愛をつづっていく新連載!


20年以上前のアムラーブームの頃から始まっていたことだけど

読者のみなさんは、4月25日から発売になった『Namie Amuro × H&M』のファッションアイテムをお買い求めになりました?

Namie Amuro x H&M

発売初日、東京はあいにくの大雨と強風で荒れていたにも関わらず、オープンの何時間も前からH&Mの前で辛抱強く並んで待っている友人知人(ほぼゲイと女装)のツイートを眺めながら、オールナイト仕事終わりで寝床についていた私は、ぶっちゃけ「そこまでしなくても買えるんじゃ……。だってH&Mなんて全国に何店舗もあるんだし……」と思っていたの。

でも本当にごめんなさい! 私、ナメてました! 夕方に駆けつけたときには、安室ちゃんが広告で着用していたガウンやワンピース、アクセサリーはすべて売り切れ。ほかのアイテムもでっかいサイズのものだけが残されているのみ。それから日を改めても、違う店舗に行ってみても、ウェブサイトを覗いてみても惨状は変わらずよ……。結局何もゲットできなかった私……。安室ちゃん効果、恐るべし!

とはいえ、実際に購入できた女装の友人知人も、それぞれ着こなすことができず悩んでいるみたい。オレンジのパンプスはそもそもサイズが合わないし、植物柄のブルーワンピースは沖縄のおばあたちが着ている部屋着に見えるし、赤い花の柄がポイントのガウンは、ガタイのいい女装が着ると屈強な女子プロレスラーを連想させる装いに……。私、買えなくて良かったのかも……。

誰しもが薄々感づいているけれど、それにフタをしていること。

「安室ちゃんが着ているから、可愛くてオシャレ」

思い返せば、それは20年以上前に巻き起こったアムラーブームの頃から始まっていたわ。平成生まれのヤングな読者のみなさんはよく知らないと思うけど、1995年、安室ちゃんが『TRY ME』をヒットさせたのを皮切りに、焼けた肌に極細の眉毛、ロングのヘアスタイル、光沢のあるサテン生地のシャツ、ロングブーツ(当時はひざ下までの長さ)というメイク&ファッションを真似する女子、いわゆるアムラーが急増していったのよ。

でも、安室ファッションに身を包んで鏡の前に立ったアムラーたちの多くが絶望感に苛まれたに違いない。だって、安室ちゃんの異常なほどの顔の小ささと手足の長さ、そしてダンスで鍛え上げられたスレンダーボディがあってこそ、あのファッションがカッコよく映えるのであって、手足が短く、ずんぐりむっくり体型の女子だったら、テカテカ光ったシャツを着ている美味しそうな焼豚になってしまうのがオチ。嗚呼、無情……。

ましてや私みたいな女装者だったりしたら、より一層ヒドいもんよ。

私が女装を始めた頃には、音楽性がR&B、ヒップホップ色が強くなっていたこともあり安室ちゃんのファッションもBガール寄りになっていたので、その手のアイテムを買って身につけていたわ。腰部が浅めのパンツをニーハイブーツにインするのにも憧れて、よく試したもんだわ〜(今でもやってるけど)。

でもね、そもそも男性の骨格だから、腰回りがブッカブカだし、脚線もまっすぐでマッチ棒みたいだし、色気もへったくれもない状態なのよ。安室ちゃんみたいなロングのストレートウィッグをかぶっても、私の頭部の大きさと顔の長さが強調されるだけで思いっきり逆効果だし……。

それらを振り返ると、現在放送中のコーセーのCMや広告で使われているキャッチコピー「みんな、あなたになりたかった」は実にリアル。

でも、安室ちゃんになれないことも誰もが身をもって自覚していたんだと思う。なのに安室ちゃんの真似っこがやめられないのは、カッコよくて可愛い安室ちゃんに近づこうとすること自体が『自分らしく』あることだったからに他ならない。

だから私も、傍目から見たらどんなに違和感があろうと、イタイと罵られようと、安室ファッションはやめられないわ!

6月はいよいよFinal Tourもラスト! いい歳したオカマの私も安室コーデでライブへ遊びに行っちゃうんだから!

アロム奈美江

ゲイをテーマにした電子書籍ライター、ゲイ雑誌『Badi』編集者を経て、2009年にドラァグクイーンデビュー。プライベートでは、30歳から女性ホルモン投与を始め、ゲイからトランスジェンダーの領域へ転向。現在は、流しの女装パフォーマー、ホステス、MC、イベントオーガナイザーとして節操なく小銭を稼いでいる。