安室ちゃんが『イッテQ』で伝えようとしていたこと〜アロム奈美江『永遠ていう安室奈美恵なんて知らなかったよね。』第10回

連載・コラム

[2018/8/16 17:00]

安室奈美恵に命を捧げる女装ライター・アロム奈美江が、引退する安室ちゃんへの愛をつづっていく新連載!


イモトアヤコさんの安室愛が鮮明に映し出された神回

安室ちゃん引退まで、もう後1ヵ月を切った……。引退日の9月16日あたりに故郷・沖縄で何かをやるのでは……という想像を膨らませ、沖縄行きの航空チケットとホテルはおさえたものの、いまだ公式からは何も発表されず、やきもきしているのは私だけではないはず。

その一方で、安室ちゃんの活動の軌跡を辿る展覧会『Final Space』が開催スタートしたり、ファッションブランドH&Mとのコラボ第2弾を発売、沖縄県の無償PR協力の発表、さらには、過去の当コラムでもご紹介した新宿二丁目のイベント『AMR-安室奈美恵ナイト-』が『Final Space』とコラボして全国開催が決定するなど、沸き立つトピックもいっぱい。安室ちゃんのラストスパートといった様相を呈しており、私も追いかけるのに必死よ。

なかでも、安室ちゃんのバラエティ番組出演ラスト、およびテレビ出演ラストでは?と思われる『世界の果てまでイッテQ!』7月29日放送回は、SNSでも話題となったし、私自身もいまだに繰り返し観ているスペシャルな番組だったわ。

ざっくり放送内容を説明すると、安室ちゃんの大ファンであることを公言しているイモトアヤコさんが、安室ちゃんとツーショット写真を撮るというミッションを達成するためにファイナルツアーの台湾公演に合わせて同地に乗り込むの。出待ちをしてみたり、過酷な課題をクリアしてライブチケットをゲットし、実際ライブに行ってみたりするものの、結局ミッションは失敗。

翌日、イモトさんが最も嫌うヘビを使った料理を食すというロケを敢行して、そこで安室ちゃん本人がサプライズゲストとして登場。そのままふたりだけの独占インタビュー! さらに本来の目的である、ツーショット写真の撮影も成功してめでたく終了という内容。

この放送は神回と呼べるものだったけど、その理由は、安室ちゃん本人の登場はもちろん、何よりイモトさんの安室愛が本当に真摯で、これぞファンならではの想い!というものを鮮明に映し出していたからよ。

台湾人のファンからも安室ちゃんが愛されていること実感して誇らしさで涙したり、報道陣にもみくちゃにされる安室ちゃんを気遣ったり、ライブ前でナーバスになっているであろう安室ちゃんに迷惑をかけたくないと直撃取材を中止したうえに、離れた場所から「ゆっくり休んでください」と心の中だけで声をかけたり……イモトさん、本当にピュアで健気な人だよ。

さらには、「私だけじゃなくて、たくさんのファンの皆さんがそう思っている」と念押しのように安室ちゃん本人に想いを伝えてくれていたシーンがあり、私たちファンの気持ちを代弁してくれてありがとう!という感謝の念が湧き上がって泣けてくる。そして、本人と会って話せてよかったね!と素直に思えて、また泣けてくるのよ。

思えば、ソロでミリオンヒットをバンバン出していたころには、『ポンキッキーズ』や『THE夜もヒッパレ』といったレギュラーのバラエティ番組はどんどん卒業していき、アイドルからアーティストとしての立ち位置を確立していった安室ちゃん。

その後は歌番組に出るのがメインで、バラエティ番組にはあくまで新曲の宣伝活動としてひとつのコーナーにゲスト出演するのみだった。私が記憶している範囲だと、『CAN'T SLEEP, CAN'T EAT, I'M SICK/人魚』がリリースされた2006年、『ワンナイR&R』『めちゃ×2イケてるッ!』に登場したのがバラエティ番組出演最後だったような……(違ってたら誰か教えて!)。

それ以来のバラエティ番組が『世界の果てまでイッテQ!』だったのは、一般人には知り得ない大人の事情(Huluをはじめとする日本テレビとの癒着?とか)も裏で大きく影響しているとは思うけれど、一番の理由はやはりイモトさんの安室愛が、安室ちゃん本人に届いていたからだと信じているわ。

安室ちゃんはずっとファンを大切にする人ではあったけれど、とくに引退を表明してからは、ファンへの愛と感謝をいろんな形で見せて伝えようとしてくれているの。だから、イモトさんというファンの目の前に現れるという行為も、自分の宣伝活動は二の次で、純粋なファンサービスの一環であったように思う。

そして、番組中にも口にしていた「夢は叶う」ということを、自ら証明してみせてファンに伝えたかったんじゃないかしら。

夢なんて見るモンじゃない
語るモンじゃない
叶えるものだから

アロム奈美江

ゲイをテーマにした電子書籍ライター、ゲイ雑誌『Badi』編集者を経て、2009年にドラァグクイーンデビュー。プライベートでは、30歳から女性ホルモン投与を始め、ゲイからトランスジェンダーの領域へ転向。現在は、流しの女装パフォーマー、ホステス、MC、イベントオーガナイザーとして節操なく小銭を稼いでいる。