【掟ポルシェの食尽族】第26回:美味さと安さの感動的な同居……サイゼリヤ最高!

連載・コラム

[2021/11/12 12:00]

自称「食べもののことになると人格が変わる」ほど食に執心する“食尽族”でミュージシャンの掟ポルシェ(ロマンポルシェ。、ド・ロドロシテル)が、実際に食べてみて感動するほど美味しかったものや、はたまた頭にくるほどマズかったもの、食にまつわるエピソードについて綴る連載。読んで味わうグルメコラムがここに!


第26回:美味さと安さの感動的な同居……サイゼリヤ最高!


うちの息子も就職したいほど大好きなサイゼリヤの話

 現在中1になる息子がいまして、で、これがキンタマぶらりオヤジの俺に似ても似つかない堅実な性格でして。小学校高学年でまだ何も考えてなくても許される年齢のときにはすでに、なりたい職業を訊かれると、「サイゼリヤの店長」と地に足のつきまくったことをのたまっておりました。しかも「サイゼリヤは大卒で入社すると高卒より給料が高いから、まずは大学へ行く」とまで言っており、アリとキリギリスで言えばキリギリス街道をまっしぐらにひた走り、顔面を白く塗ったりまぶたを銀色に塗ったりしながら鶏を絞め殺したような声で歌い舞い踊ることぐらいしか生計を立てる手段を知らず、老後はYouTuberになって間違って巨万の富を得ちゃったりしちゃったりなんかして!とかポワ~ンと思い描いてはニヤニヤしている夢見がちな父親の自分としましては、もう顔から火が出る思いです。おい息子! お父さんの存在自体がミジメに思えてくるような将来の夢は抱かないで! お願いします!

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 というわけで、うちの息子も就職したいほど大好き! 今回はサイゼリヤの話です! サイゼはね、美味しいの。いや、俺が言うまでもなくみなさんおわかりだと思いますが、それでも言う。サイゼはね、美味しいの(大事なことだから2回言うふかわりょう方式)! 俺だけでなく、サイゼリヤが家の近くにできてからというもの、ほかのファミレスに行かなくなったという方は多いのではないかと思います。デリバリーのピザ屋で訳わからんくっそ高っけえピザが、サイゼだと400円とかで食べられるの、企業努力と真理が詰まってるよなぁと。おもに小麦粉とトマトソースとチーズでできてる物体にこれまで数千円払ってたのやっぱおかしかったなと思いますし。そんでうめええのな! 薄さとかもあれがベストで食感が良くて、ピザってこういうのでいいの感に満ち満ちている。で、ほかのファミレスのファンの皆様には申し訳ないですが、従来のファミレスってでけえ駐車場があるからとか、消極的な理由で仕方なくしか行かなかったわけ、俺の場合。で、そんなに食べたいメニューがない。そして、結構高い。いや、美味しいのは美味しいんだけど、この値段出すならほかにもっとうまいもの世の中にあるでしょ的な、抜群に損した気持ちになる。サイゼができるまではファミレスで飯食うのが我慢できない性分でした。あとは、従来の激安ファミレスって「安かろうマズかろう」だったわけじゃないですか。この値段ならこの程度の味でも許されるべ?ぐらいのズルい心根が味に出ちゃってるというか。学食か社食だったら仕方なく許せる程度の貧乏味で商売してたあの店とかあの店に今後行かなくて済むんだと思っただけで晴れやかな気持ちになれる。家の近所の何屋かわかんねえきったねえ店とかある日突然全部サイゼになってますように!ぐらいのことは本気で思ってます(かつて渋谷にあったジョイタイムのゴワゴワしたカルボナーラの味を思い出して今猛烈にエモくなっていますがまぁそれはそれとして)。

シンプルなメニューほど完成度が高い! いつも頼むのはコレ!

 他店の口汚い悪口で俺内ひと盛り上がりありましたところで、いつもサイゼリヤで何頼んでるかをザックリ書いてみます。サイゼリヤといえば美味さと安さの感動的な同居が最高なわけですが、安いんで大体2品以上頼みます。サイゼのメニューはどれもお腹が一杯になるサイズより多少少なめで、故に「ああ、せっかくサイゼリヤに来たんだからパスタも食べたいしグラタンも食べたい!」という欲張りな2択に対して「じゃあどっちも食べる!」というバカみたいな解決法が可能なのです。ピザとドリア両方注文とか、もうテーブルの上がパーティー会場ですよ。なんのお祝いだっつう。で、これ両方食べても千円行かないとか、控えめに見ても気が狂ってるでしょ。サイゼ来るたび「安くて美味い店にいつでも来られる……良い世の中になったなぁ」とか感涙しますもん俺(※サイゼのワインを飲んで酔っているためちょっとしたことでも泣きます)。
 一品はメインディッシュとして、もう一品は飲むためのツマミとしてというやり方もありますね。そう! サイゼリヤといえば飲酒目的でも使えるほど飲むためのツマミが充実! そしてワインが死ぬほど安い! どうなってんだってくらい安い! いつもはまずビール中ジョッキ1杯、それから赤ワインを250mlデカンタで頼みます。しかも赤ワインなのにキンキンに冷えてる! サイゼの赤ワインはさっぱりした飲み口なので常温ではないほうがいいの! わかってらっしゃる! グラスで2杯強とれるデカンタ、量としても丁度いいんですよね! サイゼ出たあと、おかしのまちおか行って子どもらに「なんでも好きなもん買え!」とか勢いで言ってしまう程度に気持ちよく酔えます(なんでもと言ったのに無視して親の一存で10円のガムを20個ぐらい与えて)。

『生ビール・キリン一番搾りジョッキ』(税込400円)と『デカンタワイン赤』(税込200円)

 おっと、ここまで料理の味に1個も言及してないことに気づきました。それというのもサイゼリヤの料理には「これは頼んじゃダメなやつ」というものが存在せず、毎回ちょっとずつ違うものを食べていて、それらほぼすべてに満足が行くのだからひとつだけ取り上げて味を云々しづらいのです。俺なんかが特にゴチャゴチャ言われんでもサイゼの料理が美味いのなんて常識じゃい!ってなもんでしょうし。パスタなんかはほぼ当たり。よく食べているのは『パルマ風スパゲッティ(トマト味)』、『カルボナーラ』でしょうか。熟成された旨味に満ちたパンチェッタがゴロゴロ入っていて、シンプルなメニューほど完成度が高い印象。『パンチェッタのピザ』とか、これで400円なんて死んだかあちゃんの墓前に報告レベル! 死んだ親にも食べさせてあげたかった~! そして、特にお腹が空いてる日はそこに『ミラノ風ドリア』を合わせたり、パスタがトマト系だったから『エビクリームグラタン』も行っとくか、なんてチョイスも全然アリですね。サイゼリヤにひとつだけ不満があるとすれば、かつてグラタンなどにはしこたまタバスコをかけて食べていたのが、2020年からまた国内生産のオリジナルホットソースになってしまったこと。これはホットソースなのであってタバスコではないから当然といえば当然なんですが、辛さが弱くて粘液質で味食感ともにこれじゃない感がありまして、タバスコという調味料の完成度の高さを改めて思い知った次第。これまでにも何度かタバスコになったりホットソースになったりを繰り返していますが、地味にタバスコの復活希望。

バラエティ豊かなメニュー!
『エビクリームグラタン』(税込400円)
『イカの墨入りスパゲッティ』(税込500円)

 飲むツマミ系のほうが気が利いたひと捻りがあって特記しやすいですね。ワインと合わせて頼むなら、『フリウリ風フリコ』が最近のお気に入り。ちょっと前までアンチョビのフリコだったときにはさらに塩気が強くてちびちび酒飲むにはこれ以上ないんじゃないかという具合で、じゃがいもが基本得意ではない俺でもこれは別。うんまいの。あと、『煉獄のたまご』を『ミニフィセル』と一緒に食べるのもイイですね。トマトソースとケチャップの中間ぐらいの甘みあるソースと半熟卵のアンサンブルに酒も進み、気がつけばワインのデカンタがいくつもカラになっていたりして。地味に『鬼滅の刃』ブームに乗っかった疑惑のあるネーミングもGOOD! あとは定番・『辛味チキン』のイタリアンというよりはメキシカンなチポトレテイストも捨てがたい。名古屋で手羽先食べて「これってラーメンスープの素まぶしたみたいでちょっとなぁ」と思っていた自分にとってベストオブ手羽先料理でもあるのです(一応言っとくと名古屋めしは基本好きです)。冷凍のデカイパック買って家にストックしてます。あー、サイゼ行きたくなってきた。

サイゼリヤ名物・間違い探しの法則性も解説

 サイゼリヤといえば、もうひとつ大事なことを書いておかねばなりません。そう、間違い探しです! お子様メニューの扉にあるサイゼリヤの間違い探しは年4回のタイミングで新しいのが出てきます。自分が人間的に間違いだらけ故、他人の間違いには非常に厳しい私としましては、間違い探しとかアラ探しとかに恐ろしいまでに才能を発揮。間違い、許さんぞ! で、長年サイゼリヤ間違い探しをやってきた結果、答えにいくつか法則性みたいなものがあることに気付いたのです。思いついた順に列挙。

1:間違いは10個あるが、小さな子どももでもわかるデカイ間違いが毎回2~3個ある(羊のキャラクターがどちらかだけにいる場合多し)。
2:間違いは全体に満遍なく分散していることはまずなく、一箇所間違いが見つかったらそのまわりに集中してほかにも間違いがある場合が多い。
3:一番見つけにくい間違いは、“微妙な長さ・幅系”をチェックすると見つかることが多い。最後どうしても見つからないという時は“長さ・幅系”に着目すべし(椅子の脚の長さ、窓枠の幅等)。
4:料理の形状の細かすぎる間違いパターンはほとんどない。料理はサイゼリヤの売りなため、間違いに盛り込むことで食欲が削がれないようにとの配慮なのか、その形状に手が加えられるようなことはまずない(料理の間違いがある場合は個数の違い、素材の重なり方等に限定される)。
5:食品の形状の間違いがほぼないのに対して飲料の間違いは頻繁にある。ジュースの色違い間違いは割と定番である。
6:絵の上のほう、背景や建物には間違いが複数あることが多い(窓の数、屋根の形状等)。
7:人間の腕の長さ、フォークやスプーンの長さの間違いはよくある。
8:帽子や襟の形状の間違いもよくあるが、この場合は露骨に違うので見つけやすい。
9:絵の中で間違いを探して最後の1個がどうにも見つからない場合、一番上に「Kids menuキッズメニュー」と書かれている文字や文面に違いがあることが2年に一度くらいある。
10:ここ数年羊料理を扱うようになったタイミングでは、羊料理と羊のキャラクターが同じ場所に描かれない等、残酷に感じる要素がないよう配慮がなされている(羊串焼きの『アロスティチーニ』をみんなで食べる絵の間違い探しのときは羊登場せず)。

※ちなみにこれらの法則性は2017年以降、現在のイラストレーターのthe rocket gold star(山崎秀昭)さんになってからの間違い探しを見て、個人的に感じたものです。よし、今日もサイゼ行って間違い探すぞ(自分ちの子どもが見つけるよりも早く10個見つけてしまう大人げなさで)!

キッズメニューでお馴染みの間違い探し。過去の間違い探しと正解は、サイゼリヤのオフィシャルサイトに掲載

掟ポルシェ 通販サイト開店!

『掟ポルシェ泥棒市場』https://okite.theshop.jp/

掟ポルシェ

おきてぽるしぇ●1968年北海道生まれ。1997年、男気啓蒙ニューウェイヴバンド、ロマンポルシェ。のボーカル&説教担当としてデビュー、これまで『盗んだバイクで天城越え』ほか、8枚のCDをリリース。音楽活動のほかに男の曲がった価値観を力業で文章化したコラムも執筆し、雑誌連載も『TV Bros.』、『別冊少年チャンピオン』など多数。著書に『説教番長 どなりつけハンター』(文芸春秋社)、『男道コーチ屋稼業』(マガジン・ファイブ)、『出し逃げ』(おおかみ書房)、『男の!ヤバすぎバイト列伝』(リットーミュージック)、『豪傑っぽいの好き』(ガイドワークス)がある。そのほか、俳優、声優、DJなど活動は多岐にわたるが、ここ数年はアイドル関連の仕事も多く、イベントの司会や楽曲のリミックスも手がける。