セイジ(ギターウルフ)×一二三(四十七大戦)……“島根”を盛り上げる2人の異種格闘ローカルトーク

特集・インタビュー

[2017/10/1 12:00]

ロックバンド・ギターウルフのセイジが地元島根で10月7日、音楽フェス『シマネジェットフェスヤマタノオロチライジング2017』を開催する。ところで、中国地方では今“ある漫画”がバカ売れしているらしい――。

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それは新鋭作家・一二三(ひふみ)によるバトル漫画『四十七大戦』。四十七都道府県を擬人化したキャラクターたちが次の首都を争う物語で、主人公の“鳥取”と相棒の“島根”が活躍する。そのため、書店ごとの売上ランキングはたいてい東京や大阪といった大都市がトップになるにも関わらず、『四十七大戦』は中国地方での売上が絶好調だ。

ロックミュージシャンと漫画家。立場は違えど島根を盛り上げるのに一役買っている2人が、県あるあるトークを繰り広げた。

島根と鳥取の微妙な関係

セイジ:『四十七大戦』、おもしろいね! なんだかんだ言って島根と鳥取は仲がいい。その微妙なバランスをよくわかってるよ。第1話で、島根と鳥取がごっちゃにされて、「島取県」って間違えて書かれるところなんて、うすうす感じていたことだったから吹き出しちゃったね。東京の人、だいたい島根と鳥取、左右どっちかわかってないから。

一二三:地元民なら絶対間違えないですよね。

セイジ:“鳥取”は自信がないキャラクターだけど、その気持ちもわかる。高校卒業後に上京する奴は、半年前から「俺、今日から標準語使う」って宣言するんだ。みんな笑うけどその気持ちはわかる。それくらい鳥取、島根の人間は都会を恐れている!

一二三:セイジさんも恐れていたんですか?

セイジ:都会への憧れは強烈だったよ。今はSNSの発達で地球が狭くなっているけど、俺が若い頃はインターネットなんてなかったし、東京は遥か遠くだったからね。ところで『四十七大戦』のアイデアは、どうやって思いついたの?

一二三:バカらしい話が描きたくて、ギャグのつもりだったんです。都道府県同士がスターバックスの数で競ったらおもしろいんじゃないかとひらめきました。で、最後に鳥取にスタバができたニュースを見ているうちに、これで最後の参加者がそろったという方向に……(作中では“スタベ”が出店されることが戦いの参加資格となっている)。

セイジ:鳥取はセブンイレブンも最近までなかったからね。

(c) Hifumi 2017アース・スター エンターテイメント刊

松江は“モダン化”を阻まれている!?

一二三:“島根”のキャラはいかがですか?

セイジ:途中で鳥取を裏切って広島に身売りしたのはちょっとな……。

一二三:すみません! でも、鳥取に併合されるなら広島を選ぶ島根県民の割合は高いんじゃないかと感じたんです(笑)。

セイジ:確かに広島への憧れはあるかもしれないけどね。島根にいる頃は、せめて広島くらいになんねーかなって思ってた(笑)。でも東京に出てきたらワガママなもんでさ、「島根は開発しなくていい。田舎のままでいい」って思うようになって(笑)。

一二三:セイジさんの頃は、島根の若者が遊ぶとなったら広島だったんですか?

セイジ:いや、鳥取の米子がデートコースだったよ。今でこそシャッター商店街だけど、鳥取は大阪に近いせいか、島根よりモダンな雰囲気だった。松江(島根)はお城とか神社が多いからモダン化を阻まれてるよ。

一二三:鳥取や島根の他に『四十七大戦』で気になる都道府県はありますか?

セイジ;長崎は出ないの? 俺、育ちは島根だけど、生まれは長崎なんだ。

一二三:3巻で出ます!

セイジ:そうなんだ。2巻まで読んで、なんで佐賀が先に出るんだろうなって……。いや、佐賀を馬鹿にするわけじゃないけどさ、長崎に住んでたとき、福岡に親戚がたくさんいるからよく行ったんだけど、佐賀を通過したことに気づかないんだよ。

一二三:(笑)。でも九州の方にそれぞれの県のイメージをアンケートで質問したら、宮崎は「マンゴー」とか熊本は「くまモン」とか答えてくれるんですけど、佐賀だけみんな答えが「通過点」なんですよ。

セイジ:がばいばあちゃんはがんばってるけどね。あとほかに『四十七大戦』で楽しみなのは青森かな。よく高知がお酒に強いって言われるけど、俺は青森もいい線いくと思うんだ。派手には飲まないけど、女の人もドクッドクッといっぱい飲む。あとは福井、富山、石川の三県連合みたいな感じも気になるね。

一二三:最初はこの漫画、いくら資料をあさっても描きにくい県があるんじゃないか不安だったんです。でも調べてみて、個性のない県はないなと。「うちには何もないよ」という人が多い場所だって、住んでいる人が気づいていない魅力も多いと思うんですよね。

セイジ:本当にめちゃくちゃおもしろい漫画だから、続きが楽しみだよなぁ。鳥取と東京の最終決戦、楽しみにしてます!

最高のしじみ汁が飲めるフェス

一二三:『シマネジェットフェス』は、よさこい踊りや松江ニューオリンズ倶楽部バンドのパフォーマンスなど、島根ならではの催しも多く、このイベントによって島根を盛り上げるという意識を感じます。

セイジ:ステージの一発目には石見神楽が観られるからね。神楽自体は日本全国にあるけど、石見神楽は日本神話をもとにしていて、日本最古のモンスターであるヤマタノオロチと、日本最古のヒーローであるスサノオノミコトが戦うんだ! 10月7日から9日は、松江全体が“まつえランド”というでっかい催しをやっていて、ディズニーランドみたいに盛り上がる。そのなかで『シマネジェットフェス』は……“スペースマウンテン”の役割かな。

一二三:神楽は漫画でもぜひネタにしたいんです。県外から来た人も島根を知って帰れるのがいいですね。

セイジ:宍道湖のしじみ汁もフードで出るよ。

一二三:本当ですか!? 宍道湖のしじみ、本当においしいですよね!

セイジ:宍道湖のしじみを冷凍で送ってもらったりするんだけど、東京で食べてもイマイチなんだよね。俺も作れるんだけど、きっと水が違うんだよ。宍道湖の水で宍道湖のしじみを食べるのがやっぱり一番。

一二三:つまり最高のしじみ汁が飲めるフェスでもあるんですね。

セイジ:そう!

電車内もステージにしちゃった!

一二三:出演アーティストの方々は、どんなこだわりで選んだんですか?

セイジ:この人を呼べばお客がいっぱい来るという基準ではなくてさ、本当に自分が素晴らしいと思える人たちを呼んでるんだよね。世界でいろんな素晴らしいアーティストを見てきたけど、それに負けないくらいの、個性の塊のような人たちが集まるんだ。

一二三:アーティストもですが、“一畑電車ステージ”というステージも気になりました。

セイジ:会場の島根県立古墳の丘古曽志公園は、一畑電車の朝日が丘駅が最寄りなんだけど、その電車で朝日が丘駅から一畑口駅までの往復1時間、電車内で2アーティストがパフォーマンスするんだ。中井貴一の『RAILWAYS』っていう映画に出た電車なんだよ。知らない?

一二三:……?

セイジ:松江の人間だけか! 松江の人間はみんな観てるんだよ(笑)。

一二三:勉強不足ですみません! 電車がステージっていうのは、このフェスでしか観られませんね……!

島根のオススメスポットはどこでしょうか?

セイジ:『シマネジェットフェス』は17時と、フェスにしてはちょっと早い時間に終わるから、ぜひ松江の街に繰り出してほしい。俺は『炉端かば』って店で飲んでいるから、みなさん来たら声かけてください(笑)。この店は最初行ったとき、世界一の居酒屋だと思ったよ。

一二三:夕方閉園なのでフェス翌日か前日に行くことになりますが、私は由志園という日本庭園をオススメしたいです。牡丹の花がキレイで、ルートの最後には喫茶店もあって、お店の大きな窓から景色を見てゆっくりできるんです。

セイジ:その“庭でゆっくりしたい”っていう感じは、ちょっと鳥取くんっぽいね(笑)。

一二三:家にこもって漫画を描く生活なんで、キレイな景色を見ながらゆっくりしたい瞬間が多くて(笑)。東京で流行しているものを地方に持って行くのではなく、その地域にもともとあるものを盛り上げていくという点は、『四十七大戦』も『シマネジェットフェス』も共通していると思います。地元の方にも、それ以外の方にも『こんなものがあったんだ』という発見のきっかけになってほしいと思っています。

『シマネジェットフェス』『四十七大戦』が気になったら……

職業も年齢も異なる2人でも、地方を愛する気持ちは同じ。“島根”をキーワードにそれぞれのファンが混ざり合い、山陰地方がさらに盛り上がっていくことに期待だ!

『シマネジェットフェス』は、10月7日9時~17時に島根県松江市・古墳の丘古曽志公園にて開催。翌8日には、14時~22時にAZTiC canova にて後夜祭を開催。
『シマネジェットフェス ヤマタノオロチライジング2017』ホームページ

『四十七大戦』はアース・スター エンターテイメントより既刊2巻。漫画配信サイト『コミック アース・スター』にて連載中。
コミック アース・スター『四十七大戦』

プロフィール

セイジ

1987年に結成されたロックバンド・ギターウルフのボーカル&ギター。長崎で生まれ、父親の仕事の関係により引っ越しの多い幼少時代を過ごしたが、小学5年生から高校まで過ごした島根を出身地としている。昨年6月、青春の記憶をつづった書籍『昭和UFO』をリットーミュージックより出版。

一二三

2014年11月、スクウェア・エニックスのウェブマンガサイト『ガンガンONLINE』にて、高校演劇を描いた漫画『Nowplaying』で初連載。その後、『四十七大戦』の連載をスタートして、鳥取県知事・平井伸治氏からコスプレ姿で応援メッセージを送られるなど、中国地方を中心に人気を博す。年齢・性別・出身地などは非公表。

[原田イチボ@HEW]