ギターウルフのセイジの『昭和UFO』を掟ポルシェが語る「ギターウルフの極端なカッコよさの理由のすべてがここにある」

特集・インタビュー

[2016/6/9 17:00]

『ギターウルフ・セイジのブログが書籍化!ロックの日に発売』
ギターウルフのセイジ(ギター、ボーカル)の人気ブログ『フジヤマシャウト』が書籍となり『昭和UFO』というタイトルで“ロックの日”6月9日に発売される。同書は2007年にスタートし2016年春の時点で400にせまる膨大なエントリーを擁する『フジヤマシャウト』のなかから珠玉の89篇を抜粋し、再構成したもの。今回は、かねてからセイジと交流の深いミュージシャンの掟ポルシェに、セイジとのこれまでのエピソードとともに同書の感想を綴ってもらった! これを読んでセイジおよびギターウルフの世界にハマるきっかけになれば幸いだ。

<耳マンのそのほかの記事>

阿武誠二『昭和UFO』表紙

『ギターウルフの極端なカッコよさの理由のすべてがここにある———掟ポルシェ』
先日、福岡で行われたセイジさんのトークイベント『SEIJI’S R&R JETカレッジ 博多編』のゲストに元レーベルメイトとして出させていただいた。端的に内容を述べると、「セイジさんがカッコイイと思ったミュージシャン等の動画を見せて、その見習うべきカッコいいポイントをお客さんにレクチャーする」というものだ。「ここ! この口元の曲がり具合を見ろ!」「ここ! このドアの閉め方をみんな見習って!」等……。R&R JETカレッジのセイジ校長が、R&Rライフに不可欠なスターたちの表情とアクションを動画で見せ、紹介しながら自分が一番感動&いいシーンを何度となく巻き戻し、生徒となった我々に千本ノックが如くアツく逆ゆとり教育する。教材となる偉人のセレクトには一本のぶっとい芯が通っており、昔から一切ブレがない。生徒(と俺)は皆、JET校長のR&R講義波状攻撃にグッタリしながら惚れ惚れしていた。

セイジさんが思うカッコイイものの基準と、それらを貪欲に取り入れ自らの血肉とする姿勢が昔から一切変わっていないということを思い知らされた夜だったが、この処女エッセイ集『昭和UFO』は、また違った形でヒロイズムを説く教科書となっている。ブログの文章を少年期から現在までの時系列に並べて再構成したもので、読めばセイジさんがなるべくしてギターウルフになったことがわかる。ヒロイズムへの強い憧れ、そしてそれを取り込んで自らもヒロイズムの体現者となってきた過程を、徒然なるまま描いている。

セイジさんは自分が影響を受けた「カッコイイ」ものを隠さない。それどころか、声高に叫ぶ。なぜなら、ギターウルフとは、かつてセイジさんが見た「カッコイイ」の集積であるからだ。中3のとき、翌日の期末試験そっちのけで心奪われたブルース・リー、曲名やライブタイトル等になんでも“JET”と付けるほど電撃ハートブレイクを受けた女性ロッカーのジョーン・ジェット、果ては機敏な動きのファミレスのウェイトレスや、カマキリ、カラスまで。『昭和UFO』は、セイジ界の天頂に綺羅星の如く輝く「カッコイイ」を、部屋にお気に入りのポスターを貼るかのように散りばめ、己を構成する曼荼羅として「どうだ!」と読者に見せつける。セイジさんの生き様と嗜好、ものの考え方を通じ、我々読者に「カッコよく生きること」を教示するのだ。

生来の素直さ真面目さが文章にも現れ、自然や天体に心惹かれるロマンチストな部分も隠さず出す反面、ヒロイズムを求道する者独自の妙な意地の張り方や天然的思考も全開で、隙もボロボロ見せてくれる。故に、ただの完璧よりも人を魅了し、猛烈に愛される。ギターウルフの極端なカッコよさの理由のすべてがここにある。野口英世やキュリー夫人の伝記に代わって学級文庫に採用されれば、日本中の子どもたちをJETなカッコイイ大人にしてしまうだろうこと確実なので、文部科学省様、ヨロシク頼むぜ!

【著者紹介】

掟ポルシェ
(Okite Porsche)
1968年北海道生まれ。1997年、男気啓蒙ニューウェイヴバンド、ロマンポルシェ。のボーカル&説教担当としてデビュー、これまで『盗んだバイクで天城越え』ほか、8枚のCDをリリース。音楽活動のほかに男の曲がった価値観を力業で文章化したコラムも執筆し、雑誌連載も『TV Bros.』、『別冊少年チャンピオン』など多数。著書に『説教番長 どなりつけハンター』(文芸春秋社刊)、『男道コーチ屋稼業』(マガジン5刊)がある。そのほか、俳優、声優、DJなど、活動は多岐にわたるが、なかでも独自の視点からのアイドル評論には定評があり、ここ数年はアイドル関連の仕事も多く、イベントの司会や楽曲のリミックスも手がける。

[耳マン編集部]