【レポート】ミーハー心も吹っ飛んだTHE XXXXXX(山田孝之&綾野剛&内田朝陽)の圧巻ライブ
山田孝之、綾野剛、内田朝陽によるバンドの1stワンマンライブ
山田孝之(ボーカル)、綾野剛(ギター)、内田朝陽(シンセ他)によるバンドTHE XXXXXX(ザ・シックス)が、4月24日、25日にEX THEATER ROPPONGIにてワンマンライブ『「THE XXXXXX」1stワンマンライブ "MUSIC EXISTENCE"』を開催。2018年11月に本格始動し、2019年4月5日にはバンド名を冠したファーストアルバムを配信リリースした彼ら。今回の企画は昼夜2公演ずつ、2日間で計4公演実施された。編集部は初日の昼公演に潜入。記念すべきTHE XXXXXXのライブデビューの模様をレポートする。
普段はスクリーンやテレビ画面の向こうにいる人気俳優3名を、間近で見ることができる。正直のところ、ミーハー心を持って会場に向かったのは否定できない。しかし、そのよこしまな気持ちはライブが始まると同時に吹き飛ばされることになる。
会場が暗転すると、ステージ後方のスクリーンに映像が映し出される。雪が降りしきる森で、白いワンピースを着た女性が優しい表情を浮かべながら草木を愛でる様子……それは、映画のプロローグのような映像だった。その後、THE XXXXXXが登場。綾野が「Are you ready? 盛り上がっていくぞ!」と煽ると、『seeds』でライブスタート。シンセサイザーと有機的なバンドサウンドが融和した圧巻の演奏に、会場の熱気は一気に最高潮に達する。
3人のバランスのよさ
激しくギターをかき鳴らし、情熱的なプレイで魅せる綾野。マイクスタンドの前でどっしりと構え、クールに歌い上げる山田。フロアを見渡し観客の表情を見ながら、山田と綾野の呼吸に合わせるように演奏する内田。ライブを観てまず感じたのは、3人のバランスのよさだ。山田と綾野の立ち振る舞いのコントラストはまず目を引くし、のちのMCで山田に“バンドの頭脳”と称された内田は、ステージやフロアの様子をうかがいながら観客を煽ったり、会場の空気を操る。三者三様、死角のないパフォーマンスに1曲目から驚かされた。
2曲目の『horizon bloom』を演奏し終えると、山田は感慨深そうに「すげぇ、ライブやってるよ」と漏らす。綾野が「楽しいねぇ。みんなのおかげで緊張が飛んだ」と笑顔で話すも、山田は「俺、緊張で声が全然出ないんだけど(笑)」と告白。そう語っていた山田だが、「second hand」では時にパワフルに時に艶やかに、静と動が入り混じるボーカルで魅了する。
映像を駆使した圧巻のパフォーマンス
今回のライブでは、映像を駆使したパフォーマンスも印象的だった。ライブで映像を用いるのは難しさもある。映像のインパクトが強すぎたり演奏が拙いと、音楽が映像に負けてしまうからだ。ましてやTHE XXXXXXは今回が初ライブ。映像を用いた演出は挑戦と言えるだろう。ところが彼らは、映像と音楽を見事に融合して楽曲の世界観を膨らませてみせた。
その後もアルバム『THE XXXXXX』の楽曲を収録順に披露。テクノやサイケデリック・ロック、シューゲイザー、時には歌謡曲風など、多彩なアプローチを織り交ぜたサウンドで魅了し、『tut-tut』での美しいコーラスワークも心惹かれた。
山田が「アルバムは10曲入りで作ったんですけど、先に配信されたものは9曲になっています。次にやる曲は3人が本当に好きで、すごく思い入れが強くて。なので、会場に来た人たちに最初に聴かせたかったんです」と説明すると、『deep breath』を披露。山田は振り絞るように全身全霊で歌い、綾野もエネルギッシュにギターをかき鳴らし、内田は切なさや儚さを帯びたサウンドで彩りを添える。彼らの演奏は生命の息吹を表現した映像と相まって、壮大な空間を作り出していた。
アンコールは無し「ごめんなさい、もう歌えないです(笑)」
ラストは『end starter』。内田のアコースティックギターの調べに乗せて、綾野は繊細なプレイを展開、山田は優しく歌い上げる。次第にステージが暗くなると、メンバーがステージをあとにして、再び白いワンピースの女性が映像に登場。荒れ果てた砂漠の中で倒れるという余韻のある映像に観客はどよめくが、会場はすぐさまアンコールを求める盛大な拍手であふれる。すると、3人がステージに登場。山田は「ごめんなさい、もう歌えないです(笑)」と、ファンに感謝の気持ちを伝えるために現れたことを明かす。内田と綾野も感謝を伝えつつ「毎日進化していくので。“THE XXXXXXまだまだだな”って思われながら頑張っていきますので、応援してください」(綾野)と約束し、ライブは幕を閉じた。
振り幅のある音楽性や映像を駆使した演出など、驚くべき完成度でライブデビューを果たしたTHE XXXXXX。綿密な準備はもちろん、演技で培った表現者としての地力の高さがライブを成功に導いたのだろう。今後、さらなる成長を遂げるであろうTHE XXXXXXの動向に注目したい。