B'zのYouTube映像『B'z LIVE-GYM -At Your Home-』はこう楽しめ~平井“ファラオ”光(馬鹿よ貴方は)コラム~

連載・コラム

[2020/4/18 12:00]

なんというウルトラサービス精神ソウル

昨今、コロナウイルス騒動により自宅でのALONEな生活を余儀なくされ、何をして時間を潰したらいいか悩んでいる人も多いことかと思う。そんな人たちのために今さまざまな表現者達が自宅で楽しめるコンテンツを提供してくれているが、先日満を持してついにBIG MACHINEが動きだした。

<のりピー、B'z、オフコースも……再生したときに怪音が聴こえる曲たち〜音楽の都市伝説〜>

あの日本を代表するハードロックユニットであるB'zが、『B'z LIVE-GYM -At Your Home-』として過去にVHSやDVDで販売してきたライブ映像全23作品をYouTube公式チャンネルで5月31日まで無料配信してくれるというのだ。

太っ腹すぎて気を失った。

ならばせっかくのウルトラサービス精神ソウルに乗っからない手はない。ということで今回僕がリットー大王様(※)に下された使命は、

「B'zのライブ映像の楽しみ方をわかりやすく解説しろこの売れ損ないが」

というもの。
(※『耳マン』はリットーミュージックによるサイトです)

正直僕としてもありがたい話である。何しろB'zは僕をロックの沼に引きずり込んでくれた張本人であり、現状でも充分売れてはいるが、もっともっと多くの人に彼らのすごさを知ってもらいたいという気持ちがあるからだ。

ではわかりやすく彼らのすごさをいくつかのポイントに分けて説明させていただこうと思う。

言うまでもない稲葉浩志のカリスマ性と松本孝弘の職人的プレイ

まずは何と言ってもボーカリスト、稲葉浩志の存在である。彼が国内屈指のボーカリストであることはもはや言うまでもないことだが、その歌唱力、ルックス、肉体美、パフォーマンス、それらすべてをトータルした衰えることのないフロントマンとしてのカリスマ性。その超人っぷりは映像を観ればすぐに理解できると思う。

しかし一見いかにもロックンローラー然とした雰囲気であっても、実は根底に“暗さ”という一面も持ち合わせているところが彼の不思議なところでもあり、それは特にソロアルバムの世界観などによく表れている。そんな両極端な二面性を兼ね備えている一筋縄ではいかないボーカリスト、それが稲葉浩志という人なのである。

彼のどこか危険な香り漂うセクシーさを堪能したければ1990年代後半の映像、大人の色気を堪能したければ最近の映像がお勧めといったところだろうか。まだまだ男女ともに憧れるスーパーヒーローである。よくタマキンを触る。

次にギタリスト、松本孝弘の存在。この人もまたザ・マイスターとも言える国内トップレベルのギタリストある。やはりボーカリストに負けないくらいの存在感をもつギタリストというのは古くから大物ロックバンドの様式美だ。

『耳マン』の連載でも数回ソロアルバムを取り上げさせていただいているが、この人のギターは本当に特徴的で、派手なプレイを聴かせるだけのテクニックはあるのにあくまでも感情表現を優先し、ギターを歌わせることに徹している。それも日本人特有の演歌的アプローチで。そしてそれはライブでも同じで、ザ・ギターヒーロー的に激しく動き回ったりはせず、派手なパフォーマンスは稲葉氏に任せ、自らはあくまで音で観客を魅了する。その姿はさながら頑固な壺職人のようである。しかし時たまニコッと笑うこともあり、仏頂面のイメージが強いぶんその笑顔が妙に癒し効果がある。この人もまた見た目が変わらないが、この人の場合は昔から老けてた。

これだけスケールのでかい演出ができるのはB'z以外にはZERO

次にサポートメンバーの存在。B'zは正式メンバーがあくまで上のふたりなのでサポートメンバーは時期によって変動するのだが、常に国内外の一流ミュージシャンが脇を固めており抜群の安定感を誇る演奏を聴かせてくれている。特にキーボードの増田隆宣とドラムのシェーン・ガラースは長きにわたってサポートを務めてきたのでもはや正式メンバーでもいいんじゃないかと思うほどである(ただ、最近サポートメンバーが一新されたので現在はB'zを離れている)。ちなみに、かつてはあのMR.BIGのベーシスト、ビリー・シーンもサポートで在籍しており、『a BEAUTIFUL REEL. B'z LIVE-GYM 2002 GREEN ~GO★FIGHT★WIN~』で彼の変態的活躍は観られる。

そして、最後にライブそのものの演出。やはり国民的なバンドだけあって毎回ライブの演出面においても相当な凝りようで、かっこいい演出からコミカルな演出までよく練られていて毎度驚かせてくれる。なかでも『"BUZZ!!" THE MOVIE』の『LOVE PHANTOM』の演出は中学生だった頃に観て大きな衝撃を受けた(内容はぜひその目で確かめてほしい)。またド派手なセットなども含めて現状日本のハードロックバンドでこれだけスケールのでかい演出をライブで行えるのはB'z以外にはZEROなので、本当に貴重な存在であり日本人は誇りに感じて観るべきである。

ライト層にお勧めは『B'z LIVE-GYM Pleasure 2008 -GLORY DAYS-』

とまあこのように上記のポイントが合わさることによりすさまじいMAGICが生まれるのがB'zのライブというわけである。そんなB'zのライブのすごみをぜひ味わってほしいのだが、今回の23作品、一体どこから観始めればいいかわからないという人も多いかと思う。単純に古い順に観るのが彼らの足跡を辿るという意味でいいかとも思うが、それはファンの観方だろう。

とりあえずライト層に僕がお勧めしたいのは『B'z LIVE-GYM Pleasure 2008 -GLORY DAYS-』。デビュー20周年を記念したライブなので長いがセットリストは有名曲が多く、しかもセールス的に最も売れていた1990年代の楽曲がメインなので、ライトなファンでも入りやすいと思う。純粋にライブそのもののレベルも申し分ない。

今回のサービスによりB'zのライブを初めて観るという人たちも、なぜ彼らが30年間も日本の音楽シーンのトップを走り続けてきたのかがきっと理解できると思う(この文章を書いているのが配信スタートの次の日なのだが、この時点ですでに数十万再生を超えているものもある)。

今、我々にとってコロナと戦う方法は徹底的に“逃げる”こと。他人との接触すら許されないこの状況は相当孤独のRunawayだが、B'zは逃げるという戦いをするための最高の武器を我々に与えてくれた。それはライブ配信という名のエクスカリバーである。だってB'zのライブを観るためにもっと家にいたくなってしまったんだもん。こんなんでいいんだもん。

Stay home, Stay ROCK, STAY GREEN!!

平井“ファラオ”光(馬鹿よ貴方は)

ひらい“ふぁらお”ひかる●1984年3月21日生まれ、神奈川県出身。2008年に新道竜巳とのお笑いコンビ“馬鹿よ貴方は”を結成。数々のテレビ/ラジオ番組に出演するほか、『THEMANZAI2014』『M-1グランプリ2015』の決勝進出で大きな注目を集める。個人では俳優やナレーターとしても活躍。音楽・映画観賞や古代エジプト、恐竜やサンリオなど幅広い趣味を持つ。