なんかもう情報が多い!〜B'z『ギリギリchop』〜平井“ファラオ”光(馬鹿よ貴方は)連載
音楽と絵画を愛するお笑い芸人・平井“ファラオ”光(馬鹿よ貴方は)が美術館の館長となり、自身が所持する数々のCDジャケットのなかから絵画的に見て優れているもの、時に珍しいものをご紹介する連載。
第46回:なんかもう情報が多い!
今回ご紹介するのはこちら。
B'z『ギリギリchop』(1999年)
コンビとして取り上げるのは初となるB'zのおふたり。こちらは8センチシングル衰退期に発売されたB'zとしても最後の8センチシングル盤。ストレートでアップテンポなハードロックナンバーで、どこをどう切り取ってもB'zでしかない、らしさ全開の名曲。コナン君(アニメ『名探偵コナン』)のオープニング曲だったが、あまりにも音が“B'z”だしあまりにも声が“INABA”なので当時見たときはすさまじい違和感を感じた。
ところでこのジャケット、実は以前からどこかのタイミングでこの連載の番外編である“ヒドいジャケット”のコーナーで取り上げようと思っていた。だってこれ明らかにおかしいでしょう? 何このシチュエーション。楽しそうにスーパーの買い物カゴに乗るボーカリストの稲葉浩志氏とそれを仏頂面で押すギタリストの松本孝弘氏。高所得者ふたり。
あまりにも意味不明すぎるのである。多分コナン君でも解読できないのではないか?
可能性としては「前の車を追ってくれ!」だろうか。普通に買い物したいのに稲葉氏の熱量に負けてしぶしぶ買い物カゴを押す松本氏という構図。「いや、無理ですよ。絶対追いつかないですよ。」「いいから追え!早く!」「こいつなんなんだよ……」。
もしくは松本氏が稲葉氏を万引きしてきたという設定だろうか。弁当か何かと間違えて。何食わぬ顔でそそくさと逃げる松本氏。「おまわりさーん!僕万引きされてまーす!」的な。
さらにそこへきてタイトルが『ギリギリchop』である。なんかもう情報が多い! こちとらパニックである。しかしどうやらこの『ギリギリchop』という言葉自体に深い意味はないようだ。シンプルにインパクトのある響きにしたかったらしい。そうなるとこのジャケットのシチュエーションにも実はあまり深い意味はないのかも知れない(いろいろ勘ぐったこちらの時間を返せ)。
このようにあまりにもぶっ飛んだ意味不明なシチュエーションのこのジャケットをもともとはヒドいジャケットとして取り上げようとしてはいたのだが、よくよく考えてみると、日本を代表する国民的ハードロックバンドである彼らの立場でここまで“バカ”な姿を見せるというのは、逆にかっこいいことのような気がしてきたのである。本来ならルックス的にもただスカした顔で写ってればそれでいいはずなのに。
人間味が見えた、というのだろうか。このジャケットに関してはその感覚に近いもののような気がする。普段メディア露出が少ないぶん余計にね。
要するに僕のなかでは“ギリギリOK”となったわけだ。