これぞ男のハードロック!しかしジャケットは〜スキッド・ロウ『スレイヴ・トゥ・ザ・グラインド』〜平井“ファラオ”光(馬鹿よ貴方は)連載
音楽と絵画を愛するお笑い芸人・平井“ファラオ”光(馬鹿よ貴方は)が美術館の館長となり、自身が所持する数々のCDジャケットのなかから絵画的に見て優れているもの、時に珍しいものをご紹介する連載。
番外編(第47回):これぞ男のハードロック!しかしジャケットは……
恒例のヒドすぎるジャケット紹介のコーナー。本来だったら今回はB'zの『ギリギリchop』を紹介する予定だったのだが(前回参照)、やむをえない事情により(前回参照)、『ギリギリchop』はいいジャケットとして紹介することとなったので(前回参照)、代わりに繰り上がってきたのがこのスキッド・ロウである。
スキッド・ロウ『スレイヴ・トゥ・ザ・グラインド』(1991年)
スキッド・ロウは1989年にデビューしたハードロックバンドで、デビューまでの経緯は同郷であるボン・ジョヴィの支援によるところが大きく、サウンドもやはり1980年代LAメタルの流れを受け継いでいる。また彼らの大きな個性のひとつともなっているのがボーカル、セバスチャン・バックの存在。彼はそのルックスの良さから、初期の頃はややアイドル的な見方をされていたようだが、現在はむしろ硬派なロックンローラーとしてのイメージの方が強くなっている(現在はバンドを脱退)。
『スレイヴ・トゥ・ザ・グラインド』は大ヒットしたデビューアルバムに次いで発表された彼らの2枚目のアルバム。冒頭から終わりに至るまですさまじいほどのパワーがみなぎっている。ヘヴィで攻撃的、抑え切れない巨大なエネルギーが暴走しているような、または高火力のバズーカ砲に直撃したような圧倒的な破壊力を感じる。セバスチャンのボーカルも野性味が強く、その声だけを聴いたらとてもアイドル視されるような顔面の持ち主だとは思えない。
ハードロック/ヘヴィメタルが崩壊する寸前に生まれた強力な1枚。恐竜史の最後期に生まれた最強の恐竜、ティラノサウルスのようなアルバムだ。
これぞ男のハードロックである。
しかし忘れてはならないのが今回は番外編。褒めるだけでは終わらない。終われない。終わってたまるか。悪口を言ってやる。
そう、ジャケット、これははっきり言ってないと思う。
絵はセバスチャン・バックの父親であるデビッド・バークによるもので、彼はカナダでは有名な画家らしい。しかしどうにも画力があれなのである。特に人体描写がひどくあれだ。見開くともっと多くの人物が描かれているが、やはりあれだ。古い西洋画からの影響が露骨に感じられるが、ああいう絵はどれも高度な技術と写実性が伴っているものなので、比較してしまうと余計にこれがあれに感じてしまうのである。
一応彼のほかの作品も見てみたが、基本は風景画をメインで描いている人のようだ。確かに風景画はあれじゃないものも多い。静物画も描いているが静物画に至っては見事な腕前を披露しており全然あれじゃない。これがこんなにもあれなのにあれはあんなにもあれじゃない。
逆に人物画がほとんどないようなのでもしかしたら苦手分野なのかもしれない。
まあメタルの世界でこういうあれな絵をジャケットに使うのは恒例行事なので、そういう意味ではそれほど違和感はないのだが、影響元である古い西洋画と比較してしまうとやはりね。どうしてもね。なんというかね。
あれだよね。
下手だよね。