証明写真でしょこれ?え?就職すんの?〜イングヴェイ・マルムスティーン『フェイシング・ジ・アニマル』〜平井“ファラオ”光(馬鹿よ貴方は)連載
音楽と絵画を愛するお笑い芸人・平井“ファラオ”光(馬鹿よ貴方は)が美術館の館長となり、自身が所持する数々のCDジャケットのなかから絵画的に見て優れているもの、時に珍しいものをご紹介する連載。
番外編(第43回):証明写真でしょこれ?え?就職すんの?
証明写真?
というわけで月の最終火曜日なので今月もヒドいジャケットをご紹介。
イングヴェイ・マルムスティーン『フェイシング・ジ・アニマル』(1997年)
以前もヒドいジャケットとして紹介させていただいたイングヴェイ・マルムスティーンさん。前は『トリロジー』というメタル史に残る名盤にして名ダサジャケであるアルバムを紹介したが、今回は『フェイシング・ジ・アニマル』というアルバムを。
自らの欲望の赴くままに次々と恋人(ボーカリスト)を変えるわがまま貴族のイングヴェイ氏。この時期は体型的にもかなりのわがままボディに仕上がっており、一部ファンからは「豚貴族」という世界最悪の呼び名で呼ばれていたりもした。ちなみにこのアルバムでのボーカリストはマッツ・レヴィン。歴代のボーカリストたちと性質もわりと近いタイプなので、違和感もないしよく歌えていたと思うが、例のごとく彼もバンド加入時はべた褒めされていたのに、ある程度時間が経つと評価は180度変わり、クソミソに否定されて脱退させられるというイングヴェイの様式美の被害に遭っている。
またこのアルバムではレインボーなどで活躍したドラムヒーロー、コージー・パウエルも参加しており、彼は過去に自分のバンドに在籍したほとんどのメンバーの悪口を言っているイングヴェイがほぼ唯一敬意を払っていた相手でもあった。マッツ、コージー両者ともアルバムのなかで素晴らしい仕事をしており、『フェイシング・ジ・アニマル』はイングヴェイの名盤のうちの一枚に数えていいくらいのできに仕上がっている。
が、相変わらずジャケットはだめだめである。
以前紹介した『トリロジー』ではストラトキャスターでドラゴンと戦う(劣勢)という奇行をみせた貴族だが、この『フェイシング・ジ・アニマル』はというと………。
何の発想もアイデアもないただの顔面。ただのバストアップ。
証明写真?
証明写真でしょこれ?え?就職すんの?この世界やめんの?
え?バイト?レジ?スーパーのレジ?
え?免許証?更新?更新の時期?来月?来月なの?グリーン?グリーンのやつ?フェラーリ乗ってて?
え?パスポート?パスポートなの?どっか行くの?日本?来日?場所は?駒込?こまごめわいわいほーる?こまごめわいわいほーるなの?ねえ?
相変わらずひどいセンスだ。かろうじて背景のヒョウ柄がタイトルにある『アニマル』的要素を感じさせるが。まあ彼は昔から自分のルックスにも自信もってるし、「俺様の顔だけでリスナー共は充分満足だろう」的なことなのかもしれない。要するにいつもどおりのことなのである(絶対にバンドメンバーをジャケットに入れない)。
しかしまわりにもこのセンスを指摘できる人はおそらくいないのだろう。むしろ皆おもしろがって観察しているだけかもしれない。何にせよイングヴェイにはこれからも変わらず独自のセンスの道を突っ走っていってもらいたいものだ。
それにしても頑固な人の多いメタルファンの間でもイングヴェイに関してはイジっていいっぽい風潮があるのは助かるなあ。まあ愛ゆえにってところでね。