誰もが予想しなかった韓国ブーム……ローバー美々『美々の耳〜韓国エンタメが好きだから〜』【第3回】

連載・コラム

[2015/12/22 17:00]

日本で韓流ブームが起きる前からその魅力を体感してきたローバー美々による、韓国エンタメ&K-POPファン必見の連載です!


私が韓国に興味を持ち始めた1990年代後半は……
「韓国の音楽なんて、日本のテレビで放送できるわけないじゃないですか〜美々さん!」――この言葉は私が韓国の音楽を好きになった頃(1990年代後半、K-POPという言葉もなかった時期)にあるテレビ番組のスタッフさんに言われた言葉です。今やテレビをつけるとK-POPが流れていたり、K-POPアーティストが出演していたりが当たり前になりましたが、韓国の音楽を日本のテレビで放送できるなんてありえない!そんな不思議な時代があったのです。

先ほどの言葉をおっしゃった番組スタッフさんに、今の状況の感想を聞いてみたいです(笑)。名前も顔も覚えてます。悪気はなかったでしょう……。私が韓国に興味を持ち始めた頃はそういう時代だったんです。

コリアンタウン(イメージ)

私が韓国という国を知るきっかけになったのが、韓国の料理と韓国の友人。1990年代後半に、私は赤坂に住んでいました。赤坂にはコリアンタウンがあり、日本の友人に「韓国料理、食べたことある?」と聞かれて「ないから行ってみたい」と答えました。そしてそこで初めて食べたサムギョプサルとスンドゥブチゲ……おいしくてビックリしました。

実は豚肉が苦手だった私が、豚肉を克服できたのもサムギョプサルのおかげ。そこの店には韓国人の女性へウナちゃんが働いていました。とても可愛くて、一生懸命日本語を話す店員さんでした。“あれ? 韓国の方々は日本語を話すのに、日本人って韓国語を話さないなぁ……”と感じ、韓国料理にハマった私は、家も近いこともありそのお店に通ってへウナちゃんに「アニョハセヨ。マシッソヨ。ジュセヨ」など単語を並べて話しかけました。へウナちゃんやお店おママは「韓国語、上手。勉強してくれてありがとう」と言ってくれました。

この言葉は今でも韓国の方々に言われます。韓国語で「ハングゴ、チャレヨ〜 コンブ カムサハムニダ」となります。でも、日本人は韓国人が日本語を話していても「日本語、上手ですね」とは言わないですよね。この頃から私は、日本語を話す韓国人には「日本語、上手♡」と言っています。

韓国の食文化にハマった私は、韓国のエンタメ文化を知るようになります。へウナちゃんと、その頃流行っていた韓国ドラマの話しをしたり、韓国ドラマのサウンドトラックを一緒に聴いたり。

その時期、韓国の俳優さんたちが集まるパーティに行きました。日本のある芸能プロダクションの社長(その頃は不動産会社の社長)さんが「美々ちゃん、韓国の俳優さんたちとパーティするけど顔出す?」と、韓国文化に興味を持つ私に声をかけてくれたのです。そのパーティには、韓国では有名な俳優さんが何人も来ていて、当時から韓国ドラマも片っ端から観ていた私は「ひゃー!あの俳優さんだ! わー! ドラマのキャラどおり!」と心で叫んでいました。

そしてある俳優さんが、かなりノリノリな感じで韓国の曲を歌ました。その曲がDJ DOC 『RUN TO YOU』だったのですが、あまりのノリの良い曲に、私は立ち上がり踊っていました。その俳優さんは日本の女子が自分の歌に合わせて踊ってることにビックリしたのか、歌い終わると「一緒に飲もう」と席に来てくれたのです。へウナちゃんと片言の韓国語で会話していたから、その俳優さんとも韓国語でやりとりしました。「ナ アラヨ?(僕を知ってる?)」「アラヨ〜!(知ってる〜!)」っていう感じで。

そのときもやっぱり「ハングゴ チャレヨ〜!」と喜んでくれました。そして「美々ちゃん、韓国語もっと勉強してください」とアドバイスを受けた私は韓国への留学を決めたのです。今でもその俳優さんは友人です。そしてこのパーティの締めの挨拶で、先ほどの社長は「僕はいずれ日韓の架け橋になります!」と言っていたのですが、現在は日本で韓国の有名な歌手や俳優を所属させる大手プロダクションを経営しています。素晴らしいです……(涙)。

K-POPアーティストは、国の代表として、商品として
海外に派遣されているんだから!
日本側の私たちみたいな草の根運動(笑)と並行して、韓国は国策として韓国のエンタメ文化を推進しています。小さい国、少ない人口の韓国にとって、外貨を稼ぐことができる韓国エンタメは国の商品になります。ドラマを輸出したり、K-POPのライブを国内、国外で開催したり、韓国のエンタメをどんどん世界に広めていきます。韓国に興味をもった外国人が韓国を訪れ、韓国への旅行者も増えました。

K-POPを推す近年の韓国のパワーはすごいです。毎日のように韓国ではK-POPのイベントやライブが開催されています。それも同日に何ヵ所で。そのイベントやライブ観たさに、日本人の若い子たちが韓国に行く。その楽しさをTwitterやブログに残す。その情報をリサーチして日本で若い子たちに受けているK-POPアーティストを日本デビューさせる。日本のテレビ番組、音楽番組に出演。さらに人気を得て、外貨をまた稼ぐ……。これは1990年代後半では、考えられなかった現象なんです。

国を背負うK-POPアーティストのみなさまは、国の代表として、商品として、海外に派遣されているようなモノ。だから、彼ら、彼女たちが国から求められているハードルは高いです。売れなきゃいけない、品行方正でなきゃいけないわけなのです。実は私の仕事柄、K-POPアーティストのスキャンダルを目の当たりにすることが多く……最近は「どうか、K-POPを大好きな若いファンの子たちの夢を壊さないで。国を背負うアーティストさんたちは、韓国のイメージを壊さないで」と切に祈っています。日本のテレビでK-POPを放送できなかった時代から草の根運動をしてきた私たちの“いつかみんなに韓国のエンタメの良さを感じてほしい”という苦労がやっと報われたのに……。すべて水の泡になってしまうから。

そして、へウナちゃんのような人たちが必死に日本語を覚えて働く姿を、K-POPアーティストや韓国の俳優さんは忘れてはいけないと思います。国の代表が韓国のイメージを壊したら、日本でがんばる韓国の方々の足を引っ張るのです。

長くなりましたが、韓国のエンタメ文化は、国と国を繋ぐ素晴らしい商品です。今後もクオリティ高いエンタメを私は見つけて行きますし、ご紹介して行きます。では、次回をお楽し耳〜♡

【著者紹介】

ローバー美々
高校生で芸能界デビューを果たし、レースクイーン、NHK教育テレビのお姉さん役などを経て、1994年に日本テレビのバラエティ番組『ロバの耳そうじ』に出演。セクシーニュースキャスター“ローバー美々”として人気を博す。その後、韓国への語学留学をきっかけに韓流エンタメの魅力に取りつかれ、現在は“K-POP洗脳家”を名乗り韓国エンタメの普及に励んでいる。韓流エンタメチャンネル『Mnet Japan』番組審議委員長、K-POPカバーダンスイベント『DREAM ON! 』司会としても活躍中!

[耳マン編集部]