絶対観てほしい韓国映画はコレ!……ローバー美々『美々の耳〜韓国エンタメが好きだから〜』【第5回】
日本で韓流ブームが起きる前からその魅力を体感してきたローバー美々による、韓国エンタメ&K-POPファン必見の連載です!
ロケは優先されるし、規模も大きい! 韓国映画も国の国策
K-POP洗脳家として、活動している私ですが、韓国のエンタメは、K-POPよりも先に映像に興味をもちました。そして、映画やドラマの挿入歌として韓国の音楽を知ったという流れなので、今回は私の記憶に深く刻まれている映画やドラマの話をしますね。
韓国で国をあげて盛り上げている映画産業。映画も国策なので、ロケなどは優先されるし、規模も大きい。何と言っても、韓国には映画館がたくさんあるんです。アミューズメントパークのような映画館もみられますね。
私が韓国の映画を観はじめた1990年代半ばから後半は、日本に韓国のエンタメが進出してきた時期です。シネカノンなどが韓国映画専門の映画館を作ったり、韓国映画の買い付けをする映画会社が増えたりしました。映画の内容は戦争を題材にした映画が多かったですね。題名は聞いたことがある……みたいな方も多いかと思います。例えば『シュリ』『JSA』『シルミド』『ブラザーフッド』などなど。これらはすべて戦争映画ですね。それも南北の戦争です。朝鮮半島は過去の悲しい歴史から韓国と北朝鮮に分断されているのは、ご存知ですよね。今でも兵役があるし、戦争は終わっていない冷戦状態。K-POPアイドルが活動途中で兵役に行くのも、韓国ならではです。この悲しい歴史を、映画で知った日本人も多いはずです。
私も、教科書で習ったくらいの知識でしたが、映画を観ることでそれ以上の情報と人々の悲しみを少しだけ勉強できました。正直、この歴史を知らなければ、韓国のエンタメには携わってはいけないし、日本人である私が他国の文化を楽しむためには作り出した方々の背景を知っておかなければ失礼にあたるから。『ブラザーフッド』は南北に分かれて戦わなければならなくなった兄弟の話で、大規模な戦争映画ですが、ぜひ観てほしい映画です。私の友人の俳優さんも、この映画で注目されました。
韓国映画は、もちろん恋愛映画もあります。ただ、一筋縄ではいかない内容の恋愛映画が多いです。『猟奇的な彼女』は映画館で観てDVDも購入し、挿入歌が聴きたくて、その歌手のコンサートにも行った程です。気の弱い男子が気の強い女子と恋愛するのですが、何かあると女子が男子を殴る。なぜ、彼女は男子を殴るのか? なぜふたりは出会ったのか? 今でも内容を思い出すと涙が出ます。私自身に投影してしまう映画です。私がなぜ強く生きようと決めたのか? その理由にリンクする内容の映画で観たときに衝撃を受けました。
“報われない”ストーリーにジーンとくる
私が韓国映画で一番好きなところ。それは“報われない”内容が多いところです。日本のエンタメは平和や勧善懲悪や、夢をみさせてくれる題材が多い。一方で、韓国映画の“どんなにがんばってもダメ”“人は死ぬ”“裏切り”……などの負の内容が多いところが本当に好きです。人間、生きていると綺麗事ばかりではなくて、ドロドロになってもがいたり、死の淵を見たり、人の残酷さを見たり。人生って何だろう、生きるって何だろう、と考えることが多いです。でも、韓国映画を観ると人間は報われないことのほうが多いんだ、と良い意味で安心できたりもします。
そういう残酷さをを剥き出しに表現している映画監督が、私が一番好きなキム・ギドク監督作品です。そのなかでも、声の出ないヤクザと女子大生の恋愛を描いた『悪い男』という作品が好きです。キム・ギドク監督は、韓国の北野武監督と呼ばれています。兵役やアメリカ軍やヤクザ、売春、整形、近親相姦など、社会の闇を題材にした映画が多いのです。私は20代からこの監督の作品を鑑賞し続けています。ぶれることなく、今でも“報われない”を描く監督です。
ご紹介した作品以外にも、もっともっとお伝えしたい韓国映画があります。それはまたの機会に。現実を描き続ける、綺麗事ばかりではない人生を伝えてくれる韓国映画に、一度ぜひ、触れてみてくださいね。
では、次回をお楽し耳〜♡