『音鳴(オトナ)の玩具(オモチャ)』第2回:いろいろ怖いカンフーアクション人形
[2018/6/19 12:00]
漫画家・イラストレーターの福島モンタが、音の鳴る香ばしいおもちゃを紹介していく連載!
これは誰なんだろう……
その節はすみません、漫画家・イラストレーターの福島モンタと申します。
私が日夜何かに取り憑かれたように集め続けている膨大なおもちゃコレクションの中から特に音の鳴るおもちゃを紹介するこのコラム。
題して『福島モンタの音鳴(オトナ)の玩具(オモチャ)』
第2回はこちらです。
覇気のない呆けた顔。その虚ろな目とは裏腹に耳を裂く絶叫と咆哮。足の先のみで繰り出されるちょこまかし過ぎる蹴り。
おざなりな蹴りより、むしろ彼が前のめりに強調したいのは、腰のひねり。
アジア的イントネーションで奏でられる下手くそな『カンフーファイティング』に合わせて、これでもかとうなりをあげる腰。タイミングもばっちりだ。
ふと考える。
何故これを生産する必要があったか、ビジネスとしての勝算はあったのか……。
その前にこれは誰なんだろう。ブルースリーの映画にこんな感じの人見かけなくもないが、そんなレベル。
誰でもない誰か。何それ怖い。
人は誰しも70億もいる人類のほとんどを知らないまま人生を終える。知らない人間のほうが圧倒的に多いのだ。
自分の無知を棚に上げて、これは誰かなど、愚問だ。
そういう愚者に対しての「蹴り」なのだろう。曲が終わって、まだ回し足りないとばかりにひねられる腰。断末魔のような怪鳥音。
しかし最後まで控えめ目な蹴りに彼の人柄がしのばれる。
おしまい。