ラスト紅白で涙の安室ちゃん、そのとき新宿二丁目では〜アロム奈美江『永遠ていう安室奈美恵なんて知らなかったよね。』第3回

連載・コラム

[2018/1/16 00:00]

安室奈美恵に命を捧げる女装ライター・アロム奈美江が、引退する安室ちゃんへの愛をつづっていく新連載!


おそらくテレビ出演ラストとなる安室ちゃんの姿

今さら感満載ですけど、一応……明けましておめでとうございます!

そして、改めてごめんなさい! 当連載の第1回で私は、「安室ちゃんが今年もまた紅白歌合戦に出演しない方に一票!」という旨のことを言い放っていたのですが、まさかまさかの特別出演が実現しておりました。そして、出演するとなったらなったで、歌うのはあの曲かしら?それともあの曲!? なんてめちゃめちゃ楽しみにしてみたり。ほんとゲンキンな私……。

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大晦日の放送は、女装仕事で観られなかった──というか、そもそも自宅にテレビがないので観ることができなくて、女装友だちに録画してもらっていたものを時間差で視聴したわ。そして、おそらくテレビ出演ラストとなる安室ちゃんの姿を目と心に焼きつけておきたくて、何度もそれを見返している日々よ。

総合司会の内村さんからの問いかけに、丁寧な言葉遣いで真摯に受け答えする安室ちゃんの誠実さと謙虚さに感心したり、緊張を隠せずに顔を手のひらで扇ぐ姿に愛らしさを感じたり、まったくブレることなく見事に『Hero』を歌い上げる勇敢さに感嘆したり、最後の安室ちゃんの涙にこちらももらい泣きしてみたり……。

あ、もちろん、安室ちゃんに向けられた凄まじい光量のライティングに、NHK側の力の入れようも感じ取りましたよ、ええ。

君だけのhero……そう、それはまさに安室ちゃん自身のことだった。いつまでもそばにいるよ……そう、安室ちゃんが歌って踊る姿は、記憶と思い出となって、ずっと私たちのそばに寄り添ってくれる。

って、そんな安室ちゃんの大きな節目となるパフォーマンスがオンエアされている最中、私がどんな仕事をしていたかというと、新宿二丁目の大晦日恒例の『女装紅白歌合戦』に出演していたのでした。

16回目となる、年に一度のドラァグクイーンの総決算! 紅も女装、白も女装で繰り広げる、本家・紅白歌合戦への愛と皮肉を込めたパロディイベント。この歴史あるイベントに、私は初めてピンで選出されたので、意気込みもひとしお。故郷・沖縄にも錦を飾ることができたわ!(と、自分だけ思い込んでいる)

そこでパフォーマンスしたのは、もちろん安室ちゃん……と言いたいところだけど、実際は私がオーガナイズしたイベント『中島美嘉ナイト』で披露したことのある、中島美嘉さんのなりきりショーをさせていただきましたよ。

主催者側からは「安室ちゃんやる?」と申し出ていただいて大変光栄ではあったんだけど……。安室ちゃん本人にとって大切な時期だけに、二丁目のゲイファンたちからの注目度や期待値もとてつもなく高くなっているから、私みたいな底辺女装には荷が重すぎると思い、泣く泣くお断りしたのでした。私も私なりに安室ちゃんを愛してるから、下手なマネできないっていうプレッシャーもあるしね。

で、実際に安室ちゃんのショーをやってくれたのは、私も敬愛してやまない大先輩のホラー系ドラァグクイーン、エスムラルダさん!

産休から復帰し、紅白歌合戦出演を果たしたときの安室ちゃんコス。わりと再現率高いけど、何か決定的に違っているエスムラルダさん。Photo by チャム

大ヒット曲『CAN YOU CELEBRATE?』の歌詞を、おどろおどろしく朗読した後、この曲のPVのパロディ映像を上映。本物の安室ちゃんにエスムラルダさんの怖い顔を合成していたり、イケメンに襲いかかる濡れ場シーンがあったりと、抱腹絶倒の映像ショーだったわ! コテコテのお笑いだけど、とっても手が込んでいる……これぞ大真面目に悪ふざけをやってのける新宿二丁目の真骨頂!

言っておくけど、安室ちゃんのガチファンのみなさ〜ん! このエスムラルダさんのショーに対して怒ったら負けよ! 多少なりとも安室ちゃんへの愛がなきゃ、こんな手の込んだ悪ふざけできないんだからね! 楽しんだモン勝ちよ!

甘く切ない 若くて幼い 愛情振り返れば 結構可愛いね……よ!? (可愛くねぇーよ!)

他の女装たちからは、「ふざけんな!」と充分非難轟々だったよ……。エスムラルダさん、お疲れ様でした。Photo by チャム

アロム奈美江

ゲイをテーマにした電子書籍ライター、ゲイ雑誌『Badi』編集者を経て、2009年にドラァグクイーンデビュー。プライベートでは、30歳から女性ホルモン投与を始め、ゲイからトランスジェンダーの領域へ転向。現在は、流しの女装パフォーマー、ホステス、MC、イベントオーガナイザーとして節操なく小銭を稼いでいる。