『ピッコロ虫』は悔しさから生まれた曲だった〜眉村ちあきの『歌詞の解読は趣味じゃないし』〜第1回

連載・コラム

[2018/10/8 12:00]

地上波バラエティ番組にも進出し、飛ぶ鳥を落とす勢いで知名度を伸ばしている“弾き語りトラックメイカーアイドル”眉村ちあき。ほぼフィーリングで歌詞を考えているという彼女に、あえて歌詞について語ってもらうコラムをお願いしちゃおーっと!


第1回:『ピッコロ虫』は悔しさから生まれた曲だった


記念すべき第1回のテーマは、2018年7月に配信リリースした『ピッコロ虫』。この曲の歌詞には、珍しくいろいろな思いを詰め込んだらしく……。

豪雨のなか、「あそぼ~!」と言う眉村ちあき

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私がお前たちの偏見を取り除いてやるーー!

やーい! ちちゃんです! 初めてコロム(※1)をやりますが原稿の締め切りはちょっとだけ守りつつ楽しんでやっちゃおーっと! よろしくね。
(※編注1:眉村さんが「コロム」と呼ぶなら、今日から「コラム」は「コロム」です!)

第1回は『ピッコロ虫』の歌詞の解説です。この曲は、現在眉村のMRI(※2)であるトイズファクトリーの堀越さんが怪しいメールをくれた頃に作った曲です。『ゴッドタン』に初めて出演(※3)して、もうテレビに出たしメジャーアイドルだな→メジャーっぽい曲を!と思って作った。
(※編注2:核磁気共鳴画像法……ではなく、A&Rと言いたかったと思われる。レコード会社における職務のひとつで、アーティストの発掘・育成・契約から楽曲まわりまで幅広く担当する)
(※編注3:2018年6月、バラエティ番組『ゴッドタン』に“歌唱力がヤバいアイドル”として初出演。同番組出演をきっかけにトイズファクトリーとの契約が決まった)

歌詞は、基本的に悔しい思いが込められています。何が悔しかったかというと。某夏フェスの出演権をかけたオーディションのライブ審査の自己紹介でアイドルを名乗ったところ、気のせいかもしれないけど審査員の方々が下を向いた気がして、いざ歌ってみてもこっちを見てくれない人も何人かいて、それがすごい悔しくて、それは私がこっちを向かせるような歌声じゃなかっただけなんだろうけど、さすがに自己紹介してからの態度がおかしくて、もしかしてこれ、アイドルって名乗ったからなの?となって、そういえば日本のアイドル文化やオタク文化はちょぴっと舐められてる気もするし、くっそー!私がお前たちの偏見を取り除いてやるーー!となった。

「愛の愛のドルを知ってよ、ねえ、君のまだ知らぬ世界なだけ」の歌詞は「まずアイドル文化とその深さとおもしろさを知ってよ!」ってかんじです。知らないことについて評価やどうこう言う筋合いなんてないね! あたかも審査員の立場で。という悔しさ!

なぜ私がアイドルにこだわってるか

きっと私がアイドルを自称することに違和感を感じる人もいると思います。アイドルかどうかなんて客が判断することだってのもわかってます。ではなぜ私がアイドルにこだわってるかをここに書こうと思います。

私は3人組キラキラアイドルのメンバーでした。歌って踊って、せーので「ちーちゃーん」って呼んでね☆ってやつをやってました。当時のプロデューサーは「モー娘。みたいなグループにしたい」と言っていました。正直、ほかのアイドルより秀でたものもないし売れなさそうなグループでした。

私はリーダーをやってて、ダンスの振り付けを作ってました。そもそも歌詞や振り付けを覚えるのは当然だし、次回の練習までに覚えてこないのはありえないと思っていました。そういう最低限の意識というか、人としての常識(道にゴミを捨てない!とかそういうレベル)が、ほかのメンバーやスタッフさんと違ったみたいで、私はその環境にいるのがアイドルとしても人としても辛かったです。どんなにやっても、練習してこなかった人にペースを合わせなきゃいけなかった。

そういう苦しみや、売れたいのにこのままじゃダメだとかいろんなこと考えて活動してるときに「地下アイドルなんてどうせバンドマンと繋がるためにやってるんだろ!」って言ってるバンドのボーカルさん(可愛い女の子)に出会いました……(笑)。私そのバンド、かっこいいな〜って思ってそれまでの曲聴いてたのにその瞬間サーーーって冷めちゃって、次の曲からニコニコ顔で観れなくなっちゃった。

そのとき思ったことリスト
・アイドルやったことない(確認済み)のに知ったこっちゃ言っちゃって〜。
・絶対に私はアイドルとして、この人より売れてやる
です。

私よりずっとそのボーカルさんのほうがはるかに可愛くてスタイルもいいけど!!!そんな彼女よりも売れてやる、彼女がバカにしてる“アイドル”としてな!!!!!!!!!!と決めた瞬間でした。

ichibunはhyakkenにしかずです

それからいろいろあって私のいたグループは解散しました。ソロになって“弾き語りトラックメイカーアイドル”になった私がアイドルを名乗り始めた1番最初の理由は、悔しさでした。って聞いてがっかりさせちゃったらごめん! けど今はとっくに誇りを持ちすぎて、何を言われても平気だし元気だしハッピーです。アイドルでよかったー!

私はほかの音楽畑を知らないので、きっとそれぞれおもしろいことあると思います。でもやっぱりアイドルって、おもしろいです。無限の振り幅で、だからアイドルってひと言じゃ何も伝わらないです! ichibunはhyakkenにしかず(※4)です。
(※編注4:「いろんなアイドルがいることを知ってほしい!」という気持ちがほとばしった眉村語だと思われる)

私のことどんなふうに受け取るかは人それぞれなのでいいです! 私は、アイドルと名乗りたいから名乗ってます! やりたいことをやる精神です!

最後に。その某フェスオーディションに落ちたから『ピッコロ虫』が生まれたし、何より今まで以上にすべての職業に対するリスペクトを持てるようになったのでよかったです。ありがとうサマソニ!

(編集:原田イチボ@HEW

眉村ちあき

まゆむらちあき●1996年9月12日生まれ、東京都出身。株式会社・会社じゃないもん代表取締役社長。"弾き語りトラックメイカーアイドル"として、全楽曲の作詞・作曲・編曲を自ら担当している。2018年9月、トイズファクトリーと晴れて正式契約を結ぶ。講談社主催のオーディション『ミスiD 2019』にて、『ミスiD 2019』と『クリエイティブは最高に優雅な復讐である賞』、『家入一真賞』のトリプル受賞を果たす。ソフトバンクのCM『白戸家ミステリートレイン 新米教師(眉村ちあき)篇』、缶コーヒー『ジョージア』のキャンペーンに出演。2019年4月よりNHK Eテレの子ども向けバラエティ番組『ビットワールド』のうたのコーナーに“マーメイドちゃん”としてレギュラー出演中。