竹下幸之介(DDTプロレスリング)『ニシナリライオット』第37回:「運動会の組体操で挑んだ80人の大ピラミッド」

連載・コラム

[2020/8/14 12:00]

DDTプロレスリングの未来を担う若き逸材・竹下幸之介。そんな彼が自身の昔のブログを読み返しながらつづる、地元・西成のお話!


2007年10月03日

443話『一番大切なことは特別なことではなく~心をひとつに~』

ボクは入場行進で一番初めに校旗を持ってでてくる大役で緊張!!
緊張でアクビがとまりませんでした(^^ゞ
なんとか大役が終わり次の舞台は騎馬戦!!
こげの騎馬と壮絶なタックル合戦をして盛り上がりました(o^-')b
それから前半の部のとりのリレー!!
ボクは3とアンカーだったんですがまあまあ活躍できたんでよかったです('◇')ゞ

休憩が少しあり運動会最後を締めくくるは組体!!こうゆうも来た‼
これが本当に泣きそうになりました(T^T)
練習の時はほとんど成功がなかったんですが最後の三段タワー、ピラミッドがビシッと決まり担任の先生も泣き!!親も泣き!!生徒も泣き...
担任の先生も20年ちかく学校の先生をして初めて泣いたと言ってました(´ー`)
本当にすばらしい運動会になりました!!
このメンバーでする運動会は最後だと思うとまたウルウルきます...
ほんまにみんなありがとう!!


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小学校の運動会の記憶というと、ソーラン節を踊ったり、リレーを走ったり、何より6年生のときの組体操は今でも印象に残ってます。全員で行うピラミッドが練習の段階ではまあ成功しなくてですね。

私のように6年間、背の順で最後列を守り続けてきた人間は、ピラミッドでは最下層になるわけです。基本的には背の順でうしろのほうにいる子は、背丈も大きければ恰幅がいい子が男女問わず揃っているわけで。80人のピラミッドですから、上には60人近くが乗るわけですが、なんとか数十秒耐えるわけです。

ただ、背が高くて、体重が重いからといって、必ずしも力も強いとは限らないわけです。ただただ、美味しいご飯を食べることが好きで、太っちゃった子もいるわけ。そんな子からしたら、組体操のピラミッドなんてたまったもんじゃない! 炎天下の中での猛特訓なんてしたら汗だくになっちゃう! 汗をかいたらその倍は、水筒に入れてきたカルピスをこっそり飲んじゃう!(お茶か水以外は校則違反)

その代表格がY木君。通称コーユー。

コーユーといえば、特製ドリンクを作っては公園に置いて帰ることでお馴染み。そのドリンクとは、犬のう○こを拾って、いつも持ち歩いている紙コップにそれを入れて、そこに水道水を注ぎ、最後に野草をふりかけたら完成。それを公園の神様に捧げたら、優しいお母さんが「コーヨー!コーヨー!」と呼びにきて、それを聞くと帰っていくのだ。(本名はコーユーなのだが、なぜかお母さんはコーヨーと呼ぶ。)

運動は嫌いでみんなとサッカーをしたり、野球をすることもないので、たまに数名でコーユーの家に押しかけては、コーユーの好きなゴジラのゲームで一緒に遊んだりする。基本的に言葉は発さず、笑っているか、たまに怒っているのが表情でわかる程度。コミュニケーションをとるのには、そこそこコツが必要だった。

そんなコーユーが、ピラミッドではもれなく潰れてしまう。力及ばず、崩れてしまうというよりも、端から諦めていて「むーりー」と情けない声をあげながら、ビターン!と崩れてしまうのだ。そのせいで、成功しない組体操にみんなのイライラも高まっていき、ついにコーユーの隣で最下層を支えていたK村という女子がキレてしまった。

「お前、男なんやからもっと根性出せよ! みんなしんどいのにがんばってんねん! お前のせいで何回もやってるんやぞ!」

このK村の口火を皮切りに、女子からどんどん詰められていくコーユー。ボロボロと涙がこぼれてくる。

「できひんもん」

これがコーユーの本音だったんだと、今になっては思う。そのときもっと励ましてあげていればと思うのだが、そこまで人間ができていなかった。

それから、組体操の練習がある日は学校に来なかったり、何かと理由をつけて見学していた。残酷なことに、コーユーがいない状態のピラミッドだと成功してしまったのだ。そのとき子どもながらに、

「このままやったら小学校最後の運動会、コーユー休むんちゃうかなあ」

と、思った。

それから私が励ましたのか、先生が励ましたのか覚えていないが、コーユーは運動会に来た。そして組体操。ブリッジや、サボテン、タワーなどを成功させながら最後の大トリであるピラミッドの時間がやってきた。

この頃の竹下少年も力には自信があったので、コーユーの右隣に入ることになった。「キツかったら、おれのほうに体重かけるんやで」とコーユーに伝えると、「うん」と返してくれたのですが、目にエネルギーは宿っておらず。

(これ、多分無理やな)と思ってしまったことが印象に残っている。

ピラミッドが組み立てられていくなか、中段あたりの誰かがバランスを崩して、下層の我々にも大きな圧がかかってしまい、コーユーが崩れてしまった。これはどちらかいうと中段のミスだと思うが、まわりは(やっぱりコーユーあかんやん)という空気が流れてしまうことに。

「もう一回。まだ時間はあるよ」

先生が助けの舟を出した。

2度目は順調に組み立てられていき、残り数人で完成というタイミングでふと隣のコーユーに目をやると、涙を浮かべながら下唇をこれでもかと噛みしめながら震えていた。

大袈裟ではなく、その表情とは鬼気迫るもので、人間の本気の顔だった。

「コーヨー!コーヨー!コーヨー!」

コーユーのお母さんの声援が響きわたるなか、組体操は大大大成功に終わった。

竹下幸之介

1995年5月29日生まれ、大阪府大阪市出身。身長187センチ、95キロ。現役高校生レスラーとして2012年8月の日本武道館大会でデビュー。高校卒業後、日本体育大学へと進学し、学業とプロレスの両立に励み、2018年3月に無事卒業した。卒論のテーマは『ジャーマン・スープレックス』。2018年4月に入江茂弘に敗れるまで、KO-D無差別級王座11回防衛の最多記録を樹立した。地元西成への愛が深く、2018年大みそかの『年越しプロレス』には、「西成魂」の刺繍が入ったオーダーメイドの特攻服をわざわざ作って参戦。“西成のエリートヤンキー幸之介”として愛されている。