【掟ポルシェの食尽族】第28回:バームクーヘン、台湾カステラ、ジェラート……2021年に食べて美味しかったもの・スイーツ編

連載・コラム

[2022/1/31 12:00]

自称「食べもののことになると人格が変わる」ほど食に執心する“食尽族”でミュージシャンの掟ポルシェ(ロマンポルシェ。、ド・ロドロシテル)が、実際に食べてみて感動するほど美味しかったものや、はたまた頭にくるほどマズかったもの、食にまつわるエピソードについて綴る連載。読んで味わうグルメコラムがここに!


第28回:バームクーヘン、台湾カステラ、ジェラート……2021年に食べて美味しかったもの・スイーツ編


甘いものが苦手でも楽しめる、上品な甘みを感じるスイーツたち

 甘いものが苦手です(書き出しからダメなやつ)! ひとり暮らしを始めた大学生の頃は、親から仕送りが送られてくるとミスドの10個入りパック買って一瞬で食べたりする程度には甘いものを体が欲していたものの、酒を飲むようになってからというもの、25歳を境に酒量が増すのとクロスフェードする形で甘いものがまったく受け付けなくなってしまいました。酒で体に必要な糖分を摂取しているということなのでしょうか。30~40代、甘いもの欲はごくたまに思い出したように『モナ王』食ったりする程度。で、俺のような者でも数名奇特なファンの方がいらっしゃいますけども、バレンタインにチョコ贈っても食べないと知ってるので、ワインに変更して差し入れてくれたり。なんか異常なほど甘味が得意ではなかったのです。
 そんな自分の甘いもの欲が、ここ数年なぜか蘇ってきていまして。単純に歳をとったってこともあるのでしょうが、うっすらと上品な甘みを感じるスイーツとたまたま出会ったことでたまに無性に食べたくなり、折りに触れ買って食ってます。ってことで、2021年に食べておいしかったものを、甘いものジャンルに絞っていくつかご紹介。1月末に去年の話の続きで失礼します!

【掟ポルシェの食尽族】第26回:美味さと安さの感動的な同居……サイゼリヤ最高!

★『ねんりん家』(東京・銀座、羽田空港ほか)の『ストレートバーム やわらか芽』

『ねんりん家』の『ストレートバーム やわらか芽』

 初めて食べたのは2018年にさかのぼります。私掟ポルシェ、コレクションしているものがひとつだけありまして、それが80年代のキャラクターファッションブランドである『セーラーズ』のグッズ収集。バラエティ番組『夕やけニャンニャン』でおニャン子クラブやとんねるずが衣装として着ていたことで爆発的人気となり、9坪しかない渋谷の1店舗だけで年商28億円を売り上げたという伝説のブランドです。パステルカラーのポップなデザインは80年代的を象徴するアイコンですらあるということで、80年代カルチャーをこよなく愛する自分としまして、衣装はもちろん私服としても愛用させていただいております。そんなセーラーズですが、服だけでなくさまざまなグッズもこれまで数多く制作しておりまして、オークションサイトで見かけるたび競り落としています。ある日、セーラーズのキャラクターのセーラー君の人形を落札したところ、出品者の方から「お会いして直接手渡ししたい」との申し出を受けまして、指定された喫茶店に行ってみますとそこには上品なご婦人が。人形全般を収集されていらっしゃる方でこれがセーラーズのものだとご存じなかったようでしたが、「汚れているものを買っていただいたから申し訳なくて」と、喫茶店でのお茶代を持っていただいた上、お菓子の手土産までいただいてしまいました。落札金額上回ってんじゃん!と思いながらもご厚意に甘えさせていただきましたが、その手土産というのが『ねんりん家』の『ストレートバーム やわらか芽』だったのです。
 ねんりん家は『東京ばな奈』でおなじみのお菓子メーカー・グレープストーンが2007年から展開するバームクーヘン専門店。甘いもの得意じゃないんだよなぁと思いながらも、せっかくいただいたので家族のために切り分けたのをちょっともらって食べたところ、これがまぁ、上品な程よい甘みで。それまでのギッシリとした食感とバターの風味が濃厚なバームクーヘンとは真逆の、なんぼでも食べられるさっぱりした美味しさにショックを受けました。これは美味い! 飲酒を始めて以来忘れていた「甘いものを美味しいと思う感覚」をふたたび呼び覚まされのです。上品なご婦人がお遣い物に持参するのも頷けます。銀座に本店があるほか、東京駅や羽田空港等、東京土産としても買いやすい場所に店舗を増やし、福岡に家族が住んでいた時期にはいつもこれを土産に買って帰っていたほどです。ホール状で売られていますが、お気に入りの食べ方は薄く切って食べること。やはり塊で食べるとギッシリ感が発生して口の中の水分を一瞬にして奪われてしまいますから、口の中の水分を一瞬にして奪われる系食品も苦手な自分としましてはスライスしてよりふんわりいきたいものです。購入時、「やわらかいので縦にしたりせずそのままお持ち帰り下さい」と言われる程度にはやわらかい。『マウントバーム しっかり芽』なる商品(どっちかというとそっちが主力商品っぽい)もありますが、断然やわらか芽圧勝。

このくらい薄く切って食べてます

★『新カステラ』(東京・高円寺ほか)の『新カステラ プレーン』

『新カステラ』
『新カステラ プレーン ハーフサイズ』

 続いても持ち帰りが大変なふわふわ食品です。かつて音楽誌『フールズメイト』編集長だった北村昌士先生がミニコミのアンケートで、好きな食べもののところに「あまり噛まなくてもいいやわらかいもの」と回答されていて気が利いているなと思い、それ以来好きな食べものを唐突に訊かれた際真似して「あまり噛まなくてもいいやわらかいもの」と答えるようにしていたほどには、ふんわり食感のものが好みです。そしてねんりん家のストレートバームやわらか芽に第一次接近遭遇したことで自分の中の甘い物熱が再燃。そこで気になりだしたのが、この『新カステラ』です。台湾で流行した新食感のカステラで、2017年には高円寺に第1号店を出店。メレンゲを大量に使用し空気を混ぜてふんわりとした食感に焼き上げた台湾カステラは何かと話題になり、2020年にテレビで見て「これは絶対俺の好きなやつ」と思い、カップ入りの一番小さいのを買い食いしましたところ、まぁこれが見事なまでに「俺の好きなやつ」。甘みはうっすらと感じられる程度、カステラというにはぎっしり感皆無で、口の中に入れると同時に消えるような感じはカステラというよりスフレや子どもの頃に食べたベイクド感の薄いふんわりとしたチーズケーキみたいで感激。ビビビッときた!というやつです。ねんりん家のストレートバームよりもさらに甘みほんのりでこんなのナンボでも食えます。いろいろ試した結果、主力商品であるプレーンの新カステラがベスト。クリームが入ったものやクリーム別添えのとかもありますが、もうこれはシンプルなやつがまずオススメ。そしてこちらの新カステラは月替りでテイストが変化、粉砂糖でかわいい絵が描いてあり、こちらもプレーンと一緒に買います。ここ最近ではやはり12月の『いちごカステラ』が思いの外苺の果実味があって、予想していた大味な苺フレーバーではなく自然な酸味が新カステラのほんのりスイートとあいまって非常に美味しかったです。こちらもクリームなしのプレーンのほうがオススメ。今は売っていませんが、数ヶ月後には再登場もあるんじゃないかと。高円寺に2店舗あったのが3月1日から3号店の場所に統合される予定だとか。ほかには浅草店もあります。

『1月限定 100%お米のカステラ プレーン』

★『ジェラテリア シンチェリータ』(東京・阿佐ヶ谷)の『完熟南高梅のジェラート』

『ジェラテリア シンチェリータ』店頭にて
『完熟南高梅のジェラート』と『ジンとカルダモンのジェラート』

 甘いものは長いこと苦手でしたが、アイスの類は別! シャリシャリ系で甘みを抑えた酸味のあるもの、パピコのちょっといいレモン使ってるやつ(『パピコ シチリアレモン』)とか家に常備する程度には好きです。で、2021年4月、家族全員で福岡から東京都下の某市に引っ越してきて、嫁が「阿佐ヶ谷に気になる店があるから行こう」とわざわざ車で出かけてまで食べに行ったのが、『ジェラテリア シンチェリータ』でした。なんでも国際ジェラートコンテスト第3位だとかで、平日昼にもかかわらずお客さんが途切れません。3種類選んでカップに入れてもらい食べたんですが、まぁこれがですね、とん~~~でもなく美味い! 食感の口当たりの良さ&果実味フルMAXで目が覚めるような旨さは、今まで食べたジェラートがなんだったんだと思うほど(実際これ食べたあと、家の近所で評判のジェラート屋行きましたがコンビニスイーツ以下にしか思えなくなってました。美味しすぎるのを一度味わってしまって舌が肥えすぎた?)。
 ジェラテリア シンチェリータは2010年創業。阿佐ヶ谷の細い路地に構えた店舗は清潔感にあふれており、店構えのおしゃれさもなかなかのもの。世界第3位の味の秘密は店内キッチンで作ってすぐ出していることも大きいのでしょう。配合の比率を完全に数値化し、さらに感性により多少の乱数を入れ込む独自の製法でほかの追随を許しません(いやここ以外そんなに食べ歩いたわけじゃないので大きく出ちゃいましたがホント美味しいんで許して下さいすみません)。あまりに美味しいので2021年の夏場何度も訪れていろいろ試しましたが、なんといってもオススメは『完熟南高梅のジェラート』。梅肉のフレッシュな酸味が感動的で、梅干しとは違った梅本来の風味と旨味を最大限にジェラートに注入することに成功しています。酸味ファンに激推奨。ほかにもシンプルど定番な『フレッシュミルク』やスリランカのミルクティー銘茶・『ウバティー』など、どれを食べても完成度が高く、カップ1杯550円とかでこんなに美味しいものいただいてしまっていいんでしょうかという気分に。季節に寄ってフレーバーが変化しますので、今後も阿佐ヶ谷近辺に行くことがあるときは歯を食いしばってでも立ち寄らせていただく予定。
(※編注:2022年1月17日から31日まで店舗・オンラインショップともに冬季休業とのこと。詳しくはオフィシャルサイトをご確認ください。https://www.sincerita.jp/)

『ジェラテリア シンチェリータ』のメニュー

 以上、甘いものが得意ではない掟ポルシェによる2021年に食べて美味しかったもの・スイーツ編でした。多少の体重増加は、もうあきらめていいんじゃないでしょうか……。

掟ポルシェ 通販サイト開店!

『掟ポルシェ泥棒市場』https://okite.theshop.jp/

掟ポルシェ

おきてぽるしぇ●1968年北海道生まれ。1997年、男気啓蒙ニューウェイヴバンド、ロマンポルシェ。のボーカル&説教担当としてデビュー、これまで『盗んだバイクで天城越え』ほか、8枚のCDをリリース。音楽活動のほかに男の曲がった価値観を力業で文章化したコラムも執筆し、雑誌連載も『TV Bros.』、『別冊少年チャンピオン』など多数。著書に『説教番長 どなりつけハンター』(文芸春秋社)、『男道コーチ屋稼業』(マガジン・ファイブ)、『出し逃げ』(おおかみ書房)、『男の!ヤバすぎバイト列伝』(リットーミュージック)、『豪傑っぽいの好き』(ガイドワークス)がある。そのほか、俳優、声優、DJなど活動は多岐にわたるが、ここ数年はアイドル関連の仕事も多く、イベントの司会や楽曲のリミックスも手がける。