ジェフ・ベックのすごいところ三行で教えろ〜『楽器レジェンドの“今北産業”』

連載・コラム

[2015/12/1 10:01]

『ジェフ・ベック』を三行で説明すると……

ジェフ・ベックが表紙を飾る『ギター・マガジン』2009年1月号


・3大ギタリストの一人

・ストラトをフィンガーピッキングで歌わせたらナンバー1

・ギター・インストの王者


ということになります。覚えておきましょう。
三行協力:『ギター・マガジン』編集人・野口広之



もっと『ジェフ・ベック』を知りたい人は以下参照
文・綾小路 龍一
「孤高のギタリスト」と聞いてジェフ・ベックの名前がすぐに思い浮かべば、立派な洋楽ファン、ギターファンと言える。ジェフ・ベックは、エリック・クラプトン、ジミー・ペイジと並び、「3大ギタリスト」に数えられるギタリストの一人である。3大ギタリストは全員がヤードバーズに所属していたことはエリック・クラプトンの回にて紹介したが、ジェフ・ベックはクラプトンの後任として1965年にヤードバーズに参加。フィードバック奏法など、当時まだメジャーではなかった奏法を柔軟に取り入れたスタイルで、クラプトン脱退後のヤードバーズを支えた。

ヤードバーズ加入の翌年、健康上の理由から同バンドを脱退すると、ジェフ・ベック・グループを結成し、活躍の場を広げることとなるが、彼の活躍について特筆すべきは、ソロに移行してからの「ギター・インストゥルメンタル」路線だろう。1975年に発表された『ブロウ・バイ・ブロウ』は、当時珍しかったロックを基調としたインストゥルメンタルアルバムであるにも関わらず、大ヒットとなる。同じ3大ギタリストであるジミー・ペイジにも「ギタリストには最高の教科書」と言わせしめ、ゴールドディスクを獲得するなど、商業的にも成功を収めた。翌年に発表された『ワイアード』とともに、ロックとジャズをクロスオーバーさせた、いわゆるフュージョンに当たる両作は、ギター、そしてフュージョン両ジャンルの発展に多大な影響を与え、今なお名作として名高い。

何故それほどまでにインストゥルメンタルである上記の2作が評価されているのか。理由のひとつに、ジェフ・ベックがエレキギターを演奏することにおいて、常に新しいアプローチを取り入れ続けた結果、類稀な表現力を得ることができたからであると言える。その中で最も代表的なスタイルが「フィンガーピッキング」である。エレキギターはアコースティックギターなどと違い、ほとんどの場合、ピックを使用して演奏する。エレキギターでも、音を歪ませないクリーントーンであれば指で弾くケースも少なくないが、ジェフ・ベックはエレキギター(ストラトキャスター)を歪ませ、フィンガーピッキングを多用し、結果としてハードなサウンドの中にも繊細なニュアンスをつけることに成功している。さらに、演奏中にギター本体のボリューム、トーンのつまみを調整する“ボリューム奏法”を駆使することで、“歌よりも歌う”ギターの調べが生み出されている。ボーカルを必要としないこの表現力をもって、上記2作は名作となり得たのである。

「すべてのギタリストは2種類に分けられる。ジェフ・ベックと、それ以外だ」「ジェフ・ベックは、後継者が現れない、孤高のギタリストである」などと評されるジェフ・ベック。ギタリストはもちろん、ギターが好きな人であれば、必ず一度は聴くべきプレイヤーである。きっとギターの新たな魅力に気がつくことだろう。

[綾小路 龍一]