ジミ・ヘンドリックスのすごいところ三行で教えろ〜『楽器レジェンドの“今北産業”』

連載・コラム

[2016/1/16 12:00]

『ジミ・ヘンドリックス』を三行で説明すると……

ジミ・ヘンドリックスが表紙を飾る『ギター・マガジン』2013年4月号


・ロックギタリスト最高のレジェンド

・ストラトキャスターを燃やした男

・不世出のギター・ヒーロー


ということになります。覚えておきましょう。
三行協力:『ギター・マガジン』編集人・野口広之



もっと『ジミ・ヘンドリックス』を知りたい人は以下参照
文・綾小路 龍一
「ローリング・ストーン誌の選ぶ歴史上最も偉大なギタリスト100人」にて、2003年版、2011年版ともに1位。「ギター・マガジンが選ぶ史上最も偉大なギタリスト100人」にて1位。死後40年余り経ち、いまなおロック史に燦然と輝く、「ロックギタリスト最高のレジェンド」と言えば、ジミ・ヘンドリックスをおいてほかにない。彼のプレイの特徴と言えば、ワウやユニヴァイブなどのエフェクターの多用や、「ジミヘンコード」と呼ばれる独特の音使いなどが挙げられるが、最も代表的なものと言えば、大音量で歪ませた、迫力のあるギターサウンドだろう。このサウンドを「開発」したジミ・ヘンドリックスは、ハードロックや、ヘヴィメタルの起源のひとりとされている。

ジミ・ヘンドリックスと言えば、そのルックス、パフォーマンスも避けて語れない。右利き用のギターを左利き用に付け替え、「エレキトリック・ヘア」と呼ばれるアフロのようなヘアスタイル、古い軍服や、カラフルでサイケデリックなシャツで着飾ったファッションは、視覚的にも非常に刺激的であった。それらと相まって「歯や背中でギターを弾く」「ギター1本で反戦を表現する」など、純粋な演奏面以外のパフォーマンス面でも類い稀なセンスを発揮していた。パフォーマンスと言えば、同時期に刺激的なパフォーマンスを行うバンドとしてザ・フーがいた。そのギタリストであるピート・タウンゼントのギター破壊は、非常に有名であり、それを目当てにライブに通うファンまでいたほどである。

そんなピートを意識していたかどうかは定かではないが、ジミ・ヘンドリックスは1967年に行われたモントレー・ポップ・フェスティバルにて「ギターを燃やす」という、衝撃的なパフォーマンスを行い、オーディエンスや共演者を圧倒した。このパフォーマンスは伝説となり、彼の名をさらに世間に広めた。

27歳で急逝するまでの、わずか4年ほどの活動期間にも関わらず、その活動は後世のみならず同時期に活躍したミュージシャンにも多大な影響を与えた。エリック・クラプトンはジミ・ヘンドリックスのギタープレイに衝撃を受け、ギターを置くことを考え、同じストラトキャスター使いで有名なジェフ・ベックも「好調なときのジミ・ヘンドリックスを観ると、自分がギタリストであることを恥ずかしく思う」と語っている。その影響はギタリストだけに留まらず、ビートルズのジョン・レノンは「ロックの指導者で、革命者」と語り、ジャズ界の巨匠であるマイルス・デイヴィスもその才能に惚れ込み、度々自身のバンドのギタリストに、ジミ・ヘンドリックスのように演奏することを求めた。

黒人差別があった1960年代に、当時「白人向けの音楽」とされていたロックで、類い稀なる実力を武器に白人以上の活躍をみせた黒人ギタリスト、ジミ・ヘンドリックス。しかし、その活躍ぶりから、白人黒人を問わず、現在に至るまで世界中で愛される、まさに「不世出のギターヒーロー」となったのである。たった4年近くの活躍でこれほどの強いインパクトを残した彼がもしも、もう少し長くこの世にいたのであれば、きっと音楽シーンは現在のそれとは違っていたことだろう。

世界を熱狂させたギターを、今改めて聴いてみることで、今まで知らなかったギターのルーツが明らかになるかもしれない。

[綾小路 龍一]