【フジロック】小沢健二の2ステージの全貌をご紹介!写真がないから絵で描いてみました

特集・インタビュー

[2017/8/5 18:00]

夜中のセットは幻想的な雰囲気のなか朗読&弾き語り

大盛況のホワイトステージが21時過ぎに終わり、グリーンステージやレッドマーキーを越え、キャンプサイトの奥に潜むピラミッドガーデンへ移動します。ステージ上にはさまざまな種類のキャンドル(おそらくこのエリアをプロデュースしているCandle JUNEのもの)が置かれていて、幻想的な雰囲気。雨にも負けず風にも負けず「オザケンのライブが観たい!」という一心で集まったであろうオーディエンスは、心のなかで静かな炎を燃やしながら開演の23時30分を待ちました。

そんななか、オザケンがにっこりとゴキゲンな様子でスカパラのNARGO(トランペット)とともに登場。このステージでオザケンは小ぶりなガットギターやアコースティックギター、リズムマシンを使用して、時にひとりで、時にホワイトステージにも出演したバンドメンバーを呼び込みながら演奏を繰り広げます。1曲目に演奏したのは『天使たちのシーン』。オザケンは同曲を透き通った声で弾き語り、NARGOが感傷的な演奏で寄り添います。容赦なく降り続いた雨によってフロアの地面は水田のような質感になっていましたが、そんなことも気にならないくらい、これから始まるステージに胸が高鳴りました。

たくさんのキャンドルで彩られたステージに、オザケンはピンクのシャツとデニムで登場。顔のペイントはホワイトステージと同じでした

オザケンは、このセットが演奏の間にモノローグの朗読を挟んだ構成になることを説明し、「今そちら(フロア)は雨降ってるの?」「曲だけやって、みんな早く帰って寝たいのか、どうしようかな。元気あるのかな?」と問いかけます。客席からあがった「(元気が)ある!」「大丈夫!」との声に応え、モノローグ『夏休み 我らが社会の偉大なる時計』の第1章『休みの日』がスタート。このパートでは、現代の社会では“休みの日”がもはや“休みの日”ではなくなっているという問題が提起されました。 “休みの日”がなくなることで現場型の娯楽産業(例えば遊園地やロックフェスなど)が衰退してしまう懸念があるが、「人はやっぱり密接に同じ空間で身体を温め合う必要がある」といった内容が語られました。印象的な語りのあと、アコースティックギターとリズムマシンから流れるドラムのみで、2曲目の『飛行する君と僕のために』に突入。夜に合うオトナなグルーヴを響かせました。

ここでスカパラの北原雅彦(トロンボーン)を迎えて『僕らが旅に出る理由』『それはちょっと』を披露。オザケンの歌うようなギターは高揚感にあふれ、北原も柔らかくて温かい音色でそれに応えます。続いてスカパラのGAMO(サックス)が登場し、ライブでも人気の楽曲『ドアをノックするのは誰だ?』を披露。ちょっぴり切ないギターの響きと円熟味のあるサックスで魅せつつ、終盤のサビでオザケンは「みんな歌える?」と呼びかけ、オーディエンスは手拍子とつつましやかな歌声で応えます。

次から次へと繰り出される演奏に息をつく暇もないまま、モノローグの第2章『夏休みって春休みだったのか』が始まります。ここでは、欧米から輸入されたという“夏休み”について語られました。日本の学校と欧米の学校では夏休みの感覚が違い、9月から新学期が始まる欧米にとって夏休みは“神聖”で“穢(けが)せない”ものであるようです。彼らにとっては新学期の前の“大きく息を吸い込む時間”ということで、「夏休みは(日本で言う)春休みのすごーく長いやつなのか」といった答えに辿り着いていました。モノローグでは某人気遊園地のキャラクターのモノマネや妻との会話から生まれたエピソードを交えながら彼の考えていることが語られ、とっても惹き込まれます。

スカパラメンバーとともにキラーチューンを連発!

続いてギター1本で語りかけるように『神秘的』が披露され、少しの沈黙を経てスカパラの沖祐市(オルガン)と、ドラマーの 白根桂尚が登場。オザケンの「大丈夫かな……はい」とのつぶやきののち、パワフルに鳴り響くのは『流星ビバップ』! 抜群の音量バランスで聴かせる3人のエネルギッシュな演奏につられて、オーディエンスも揺れたり声を出したりと盛り上がります。そんな明るいムードから一転、今度はオザケンと沖のふたりで『いちょう並木のセレナーデ』をしっとりと繊細に演奏。沖による包容力と趣のあるオルガン&口笛と、ささやくように歌うオザケンの声が美しく響きました。

モノローグもラストの第3章『夏休み 我らが社会の偉大なる時計』へ。第1章、第2章から続くこのパートでは、現れたものが必ず消えるように休みという感覚もなくなってしまうかもしれない、といった例えに続いて、勉強や見聞を重ねるほど“当たり前”のものが奇妙で不思議に思えて驚く、という彼の見識が語られました。「なんて不思議な世の中」という印象的なフレーズの余韻を残したまま『天気読み』が披露され、リズムマシンから流れる不思議な音色とともに歌われたのは、ラストの楽曲『流動体について』。オザケンは最後まで躍動的な歌声を響かせて、夜中まで彼の音楽に浸ったオーディエンスたちはこれ以上ない声援と拍手を送りました。

【小沢健二 ピラミッドガーデン セットリスト】

1.『天使たちのシーン』
(モノローグ『夏休み 我らが社会の偉大なる時計』第1章『休みの日』)
2.『飛行する君と僕のために』
3.『僕らが旅に出る理由』
4.『それはちょっと』
5.『ドアをノックするのは誰だ?』
(モノローグ第2章『夏休みって春休みだったのか』)
6.『神秘的』
7.『流星ビバップ』
8.『いちょう並木のセレナーデ』
(モノローグ第3章『夏休み 我らが社会の偉大なる時計』)
9.『天気読み』
10.『流動体について』

またフェスでオザケンが観たいッ!

オザケンによるフジロック初出演は前述のとおり2公演とも一切の出し惜しみがない贅沢なステージで、これからも語り継がれていくような“伝説”になったのではないでしょうか。緻密に作り込まれた構成や乱れることのない完璧なグルーヴからは彼が丹念に準備を重ねていたであろうことがうかがえましたし、ステージ上で発されていた楽しくハッピーなムードはフロアにも充満していました。これからもオザケンは多くの人々の心を震わせてくれるに違いありません! これを機に、今後さまざまなイベントで彼のステージが観られることを心から願います。

FUJI ROCK FESTIVAL’17

7月28日(金)、29日(土)、30日(日)
新潟県 湯沢町 苗場スキー場
http://www.fujirockfestival.com

[榊ピアノ]