推しメンの結婚・妊娠……激動の1年をガチ恋おじさんがどうやって生き延びたか

連載・コラム

[2017/12/29 12:00]

元モーニング娘。の石川梨華に10年以上“ガチ恋”を続けているドルヲタのふちりんによる完全ノンフィクション連載。梨華ちゃんに健気に恋をする彼が、2017年3月13日に結婚した彼女への想いを、結婚が近いという報道があった2017年元旦から振り返り繊細に紡ぐ。【ガチ恋……アイドルにガチ(本気)で恋をすること】


激動の1年をガチ恋おじさんがどうやって生き延びたか

 今回は『耳マン』で連載中の『推しメンが結婚しちゃった日記』の番外編ということで、2017年の総括的なものを書こうと思います。元旦には『元モー娘。石川梨華、結婚へ』という報道があり、死にそうになりました。2月には婚約報道があって死にそうになり、3月にはとうとう入籍し、また死にそうになりました。その後もいろいろありました。それでも何とか生き延びているのは、小説家・平野啓一郎さんの提唱する「分人主義」のおかげだと思っています。分人主義とは「人間は、さまざまな分人(分割された人格)が集まってできたものである」という考え方です。

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 僕の場合は、梨華ちゃんに対する分人、大宮アイドール(ご当地アイドル)に対する分人、メイドカフェに対する分人、行きつけのバーに対する分人、美人女医さんに対する分人、などで成り立っています。今年はたび重なる報道で、梨華ちゃんに対する分人が何度も瀕死の状態に陥りました。もし僕が、梨華ちゃんに対する分人しか持っていなかったら、苦しみに耐えられず本当に死んでいたかもしれません。死なずに済んだのは、ほかにもいくつか分人を持っていたからだと思います。

 報道などによって梨華ちゃんに対する分人が死にそうになったら、大宮アイドールに行って、大宮アイドールに対する分人を生きました。メイドカフェに行ったり、行きつけのバーに行ったりもしました。そうやってほかの元気な分人を生きていると、梨華ちゃんに対する分人も次第に回復してくるのです。そしてまた梨華ちゃんに健康的に向き合うことができます。

 ガチ恋おじさんを救ってくれるのは、この分人主義という考え方だと思っています。推しメンに対する分人しか持っていないと、その推しメンが結婚したりしたときに、精神的に瀕死の状態のまま、日々を過ごさなくてはなりません。それは本当に苦しいことだと思うし、愛情が憎しみに変化して、CDを割ったり、推しメンのTwitterに憎しみのリプライを送りまくったりしてしまうかもしれません。

 しかし、ほかにもいくつか分人を持っていれば、その分人に一時的に避難することができます。メイドカフェに行けば、メイドさんが相談に乗ったりしてくれます。行きつけのバーがあれば、マスターが有効なアドバイスをしてくれるでしょう。本当にきつければ、精神科に行くのも手です。恋愛関係で心を病み、精神科に行く人も今は結構いるみたいだから、ガチ恋おじさんが精神科に行っても何の問題もありません。そこで思いの丈を医師にぶちまけましょう。とにかく、瀕死の状態に陥っている“推しメンに対する分人”を回復させることが肝要です。回復して健康になった分人で、再び推しメンに向き合えば、もしも推しメンが結婚したときに「結婚おめでとう」という言葉も届けることができるかもしれません。

 分人主義についてもっと知りたいという方は、平野啓一郎さんの『私とは何か——「個人」から「分人」へ』という本を読んでみてください。薄い本で、平易な言葉で書かれているので、すぐに読むことができます。すべての悩めるガチ恋おじさんに読んでほしい本です。


【著者紹介】

ふちりん●1980年生まれ、埼玉県出身。おひつじ座のA型。2003年頃より当時モーニング娘。のメンバーであった石川梨華へのガチ恋を開始。その赤裸々な想いを綴ったブログやTwitterが一部のアイドルファンの間で人気を呼ぶ。趣味は読書やサッカー観戦、アイドル鑑賞、ベースを弾くこと。好きな作家は村上春樹、太宰治、中村文則。

[ふちりん]