【お悔やみ】RIP……2018年、ミュージシャンの訃報

連載・コラム

[2018/12/30 10:00]

偉大なミュージシャンたちの功績をプレイバック

2018年も多くの才能が生まれた一方で、素晴らしい音楽を人々に送り届けてきた才能がこの世を去った音楽界。新年を迎えるにあたって、あらためて逝去したミュージシャンたちの功績を振り返りたい。

いときんさん

J-POPユニット・ET-KINGのいときんさんが、がん性心膜炎のため1月31日に亡くなった。38歳だった。いときんさんはET-KINGのリーダーとして、MCのほかトラックメイクやユニットのプロデュースを手がけていた。関西弁を用いたHIP HOP調の楽曲が若年層に支持され、2007年の「愛しい人へ」は大ヒットを記録した。2017年にステージ4の肺腺がんと診断されたいときんさん。その後は懸命な闘病生活を続け、没後の2018年4月に発売されたアルバム『LIFE』でも全曲のレコーディングに参加していた。

森田童子さん

楽曲の強烈な個性と、謎に包まれた素顔でカリスマ的な支持を集めた女性シンガーソングライターの森田童子さんが、4月24日に心不全のため亡くなった。65歳だった。森田さんは1975年にデビュー。もじゃもじゃのカーリーヘアに大きなサングラスがトレードマークで、中央線沿線のアングラ文化の中で熱狂的なファンを生んだものの、1983年に音楽活動を休止。その後、1993年のドラマ『高校教師』の主題歌として「ぼくたちの失敗」が採用され、同シングルは100万枚に迫る記録的なリバイバルヒットとなった。さまざまなジャンルのミュージシャンにカバーされ、多大なリスペクトを捧げられながらも、最後まで森田さんが表舞台に立つことはなかった。70〜80年代のカウンターカルチャーを象徴する伝説的な歌手として、その楽曲は今後も聴き継がれていくだろう。

西城秀樹さん

1970年代にアイドル歌手として大人気を博し、郷ひろみ、野口五郎と並んで“新御三家”と称された西城秀樹さんが、4月25日に急性心不全で亡くなった。63歳だった。17歳でデビューした西城さんは、アメリカの最先端のロックミュージックに触発され、それまでのアイドル歌手とは異なる色気たっぷりのパフォーマンスを展開。持ち前のハスキーボイスとワイルドなシャウト、圧倒的な歌唱力でファンを虜にした。「ちぎれた愛」「傷だらけのローラ」といったヒット曲のほか、ヴィレッジ・ピープルの「YMCA」のカバー曲である「YOUNG MAN (Y.M.C.A.)」も広く大衆に受け入れられ、観客参加型の振り付けのはしりとなった。2001年には脳梗塞を発症するも、懸命のリハビリの末にカムバックを果たしていた西城さん。“夏男”のイメージ通りの豪快かつ爽やかな人柄も含めて、多くの人に愛される存在だった。

ロイ・ハーグローヴさん

グラミー賞を2度受賞したジャズ・トランペッターのロイ・ハーグローヴさんが、11月2日に心不全のため亡くなった。49歳だった。ハービー・ハンコックやソニー・ロリンズ、オスカー・ピーターソンといった伝説的なジャズ・ミュージシャンとのセッションに加え、エリカ・バドゥやディアンジェロら新世代のソウル・ミュージック(ネオ・ソウル)の旗手、さらにコモンやザ・ルーツといったHIP HOPミュージシャンと共に、ジャンルを越境してクールなブラックミュージックを生み出し続けたロイ・ハーグローヴさん。ロバート・グラスパーやカマシ・ワシントンといった新世代のジャズ・ミュージシャンの祖型とも言えるような活動を展開し、カリスマ的な存在として音楽界に君臨した。日本でも彼の影響力は絶大で、人気バンド・ceroの楽曲『街の報せ』にも名前が登場するほど。日本のジャズシーンを代表するトランペッターの類家心平も、ロイ・ハーグローヴさんが後進に与えた衝撃の大きさを指摘している。

若くして亡くなったHIP HOPの俊才たち

また、2018年は才能溢れるHIP HOPミュージシャンの夭折が繰り返し報じられた1年でもあった。2月15日、アルバム『The Season』でシーンに殴り込みをかけたFla$hBackSのFebb as Young Masonさんが、不慮の事故によって24歳で亡くなった。6月18日には、シングル「Look at Me」でセンセーションを巻き起こし、2ndアルバム『?』がビルボードのアルバムチャートで1位を獲得したばかりのXXXテンタシオンさんが、強盗目的で銃撃され20歳の若さで亡くなった。さらに9月7日には、アリアナ・グランデの元恋人としても知られる人気ラッパーのマック・ミラーさんが、薬物の過剰摂取によって亡くなった。26歳だった。

2パックとノトーリアス・B.I.G.の例は極端かもしれないが、2017年に21歳の若さでこの世を去ったリル・ピープしかり、HIP HOP界では未来あるミュージシャンが早逝してしまう例が後を絶たない。2019年は悲しいニュースが少しでも減ることを願いたい。そのほか2018年には、BABYMETALをサポートする「神バンド」のメンバーとして知られたギタリストの藤岡幹大さん(享年36)、「さんぴんCAMP」を主催した日本のHIP HOP界のレジェンド・ECDさん(享年57)、伝説的なパンクバンド・パンテラのドラマーだったヴィニー・ポールさん(享年54)が亡くなっている。故人のご冥福を心よりお祈りいたします。

曹宇鉉@HEW