芸能界一のサンリオ好き(!?)馬鹿よ貴方はファラオ、話題を呼んだ『KAWAII KABUKI』の魅力をつづる
2018年、大注目を集めたサンリオの『KAWAII KABUKI~ハローキティ一座の桃太郎~』
普段この『耳マン』にて連載『音楽“ジャケット”美術館』をやらせていただいている僕であるが、今回サマソニのレポートに続いて再びリットー大王様より使命を授かった。その使命とは「サンリオピューロランドで開催されている話題のショウ『KAWAII KABUKI ~ハローキティ一座の桃太郎~』のレポートを書けこの4流芸人が」というもの。とうとう音楽に一切関係ない記事を書くことになってしまったが、そもそも『耳マン』はリットーミュージック様の管轄でありながら音楽一辺倒というわけではなく、広くエンターテインメントを取り扱っている何でも屋さん的なサイトなのでテーマがサンリオでも何ら不思議はない。
そしてサンリオといえばやはりこの平井“ピューロ”光(身長はリンゴ18個分)をおいてほか語れる者などおりはしない。そう、僕は2018年6月、唐突にサンリオの魅力にとりつかれ、それ以降「1分間でバナナ10本食べ切る」おさるのもんきち並みの速さでサンリオの知識をつけていき、おそらく現在芸能界的にみても僕以上にサンリオを語れる者はいない、という位置まで登り詰めてしまったのだ。
その結果、初めは「ビジネスでしょ」「キャラづけのためでしょ」などという目で見ていたまわりの芸人も僕の「好きなことには命をかける」おきがるふれんず並みの熱意に今や「あの人はマジだ」「サンリオ狂いや」「尊敬すんのやめます」と認めるようになったのだ。愛と熱意で疑惑をねじ伏せたのである。
サンリオと歌舞伎、対極とも思える組み合わせだが……
そんな僕こと平井“ピューロ”光(身長は座椅子4個分)だが、ピューロランドには平均月2、3回ほど通っている。そして今回のテーマである『KAWAII KABUKI ~ハローキティ一座の桃太郎~』も現在までに4、5回は観ていると思う。過去さまざまなショウを行ってきたピューロランドだが、ここへきて歌舞伎との融合とはすごい。サンリオと歌舞伎。一見すると対極とも思える組み合わせだが、実はそれこそ今の時代に合ったやり方だと思う。
例えばそう、BABYMETAL。アイドルとヘヴィメタルという一見対極の要素を融合させることで、この情報にあふれすぎた社会のなかでどんなにぼーっとしてる人でもそのインパクトにまず目を向ける。あとは目を向けた人をファンにまで引き込むだけの力量が備わっていればいい。『KAWAII KABUKI ~ハローキティ一座の桃太郎~』もまさにそれと同じなのだ。
同じ現象がサンリオ内にもうひとつ。2015年生まれのキャラクター・アグレッシブ烈子である。まさにBABYMETALのようにぱっと見可愛らしいレッサーパンダ(アライグマじゃない)が、ストレスが限界を超えるとKISSのような表情になってデスメタルで発散する、というギャップのあるキャラクターだ。これまたBABYMETALのように海外で人気に火がつき、日本でも年々人気が上がってきている若手の注目株である。
つまりこれだけ物があふれすぎて目移りしやすい世の中だとぱっと見のインパクトがまず大事になってくる。そういう意味でこの『KAWAII KABUKI ~ハローキティ一座の桃太郎~』のインパクトはすごい。何しろ宣伝ポスターでいきなり隈取を施したキティちゃんやシナモンが現れるのだ。僕こと平井“ピューロ”光(体重は加湿器10個分)もさすがに2度見せざるを得なかった。
「みんななかよく」の精神はそのままに、優しさにあふれた無二の歌舞伎
さてこの『KAWAII KABUKI ~ハローキティ一座の桃太郎~』だが、2018年3月からピューロランドのメルヘンシアターでほぼ毎日行われている。サンリオ的にも相当気合いの入ったショウなのだろう。このイベントのための新キャラクターも生まれている。2018年に生まれた唯一のキャラクター、歌舞伎にゃんバサダーのかぶきにゃんたろうである。可愛い三毛猫の彼がこの『KAWAII KABUKI ~ハローキティ一座の桃太郎~』の案内人を務めてくれる。さらに本物の歌舞伎俳優である坂東巳之助もにゃんたろうとともに映像で出演し、ショウが始まる前にお客さんを温めてくれる。そして本編にて声のみの出演だが中村獅童も名を連ねているという豪華さだ。
ショウはまずハローキティ一座による演目『桃太郎』で幕を開ける。鬼役のバッドばつ丸が思っている以上に迫力がある。さすがギャングのボスを父にもつサンリオきってのワル。その鬼に対抗する三武将にはディアダニエル(キティちゃんの彼氏という世界一の幸せ者)、シナモロール、ポムポムプリンの3名。原作の桃太郎では仲間は犬、猿、雉(きじ)だが、ハローキティ一座の桃太郎では猫、犬、犬の構成(あまり知られていないがシナモンもプリンも犬)。それゆえ雉(きじ)特有の予測不能な動きによるかく乱ができないぶん、噛みつきの攻撃力を2倍に特化させた攻撃重視型のフォーメーションとなっている。
そして戦いも佳境を迎える頃合、我らがキティちゃん演じる桃太郎の登場により一気に形勢有利。無事鬼に勝利し一件落着となるのだが、ここまでの時間わずか10分程度。というのも原作のようにおじいさんおばあさんがあれやこれやしてどんぶらこどんぶらこでパカッと開いてオギャーオギャーのスクスクなんたらきびだんごかんたらひとつ私にくれるうんたらくれないちんたらとかという流れは省略されており、いきなり鬼と対峙するシーンから始まっているからだ。え?これで終わり? と一瞬不安になったところ、ここからは舞台裏での物語が始まる。
ストーリーに関してはネタバレになってしまうので控えるが、この『KAWAII KABUKI ~ハローキティ一座の桃太郎~』でもサンリオの基本理念である「みんななかよく」の精神がしっかりと息づいており、ピューロランドの定番のショウであるミラクルギフトパレードなどと同様、変に奇をてらわないシンプルなストーリーゆえに真っ直ぐ心に届き、気づいたら目に涙を浮かべてしまう、サンリオらしい優しさにあふれたショウとなっている。
トータル的に見ればやはり総合エンターテインメント色は強い。ミュージカルでもあるので歌も当然あり、日本のテーマパーク中トップレベルとも言われるダンスも存分に味わえる。さらにプロジェクションマッピングを使った演出はモダンだし、かと思えば唐突に昔のテレビゲームのようなレトロ感あふれる演出も出てきたりして見ていて退屈しない、遊び心満載のショウである。それでいて見得や六方などの歌舞伎要素もしっかり押さえている。歌舞伎の所作をするキャラクターたちがギャップもあり新鮮で可愛らしい。トータル時間は40分だが、ボリューム的には2時間分は見たような気になるくらいの満足感を味わえる、おもちゃ箱さながらのバラエティに富んだ内容だ。
やはりあまりにもがっつり歌舞伎に寄せてしまうと歌舞伎をよく知らない人にとってはとっつきにくく感じてしまうものだと思うので、その辺りのバランスが上手く考慮された、幅広い客層に愛されるショウであると思う。そしてできることなら続編も期待したいところだ。誰もが知っている物語として今回は桃太郎だったが、次回はハローキティ一座の浦島太郎、ハローキティ一座の北の国から、ハローキティ一座のフォレスト・ガンプ……。可能性は広がるばかりだ。
ということで皆さんもピューロランドに行かれた際は是非とも『KAWAII KABUKI ~ハローキティ一座の桃太郎~』をご満喫あれ。