【社長と音楽】ヘヴィメタルバンドを追求するとビジネスで成功するかもしれないという話

特集・インタビュー

[2019/6/7 17:00]

様式美を重んじるIT社長

今回の『社長と音楽』で紹介するのは、IT総合サービス企業『Tech Fun』の笠井達也社長。ITスクール『TechFun.jp』、eラーニングプラットフォーム『StudySmile』のほか、スマートフォンアプリ開発、Webシステム開発、SI(システムインテグレーション)サービスなどを展開する同社を牽引する笠井社長は、アマチュアバンドで多数のステージを経験してきただけでなく、ライブバーも手がけたことがあるという大の音楽好き。そんな笠井社長に、ヘヴィメタルバンドと会社経営の親和性について(!?)たっぷりと話を聞いてきました!

Tech Fun株式会社 笠井達也社長

——笠井社長は大の音楽好きと聞いていますが、音楽と触れ合うきっかけとなった出来事を教えてください。

3歳のときにピアノを始めまして。それがきっかけですね。絶対音感もあったんですけど最近は歳をとって衰えてきてしまいました(笑)。

——絶対音感がある社長さん、かっこいいです!

でもやっぱり衰えますね。昔は(机を叩きながら)こういう音の音程もわかったんですけど。最近は耳も衰えて少し音程が低く感じるようになってしまいました。ピアノをやっていたおかげで小さい頃からクラシックをたくさん聴いてきて、最終的にはヘヴィメタルが大好きになりました。キーボードやボーカルとしてたくさんライブも経験しましたね。

——クラシックからメタル……一体、何があったんですか?

疑問に思うかもしれませんが私のなかでは同じだと思っているんです。クラシックって基本的に様式美の世界じゃないですか。ヘヴィメタルも古典的なものは様式美が多いですよね。私はジャーマンメタルが好きなんですけど、ジャーマンメタルは特に様式美の典型ですから。

——ヘヴィメタルに目覚めたきっかけは?

高校1年生か2年生のときにハロウィーンの音楽に出会って、そこで衝撃を受けまして。様式美と重厚なサウンドが合わさった彼らの音楽に“これだ!”っていう気持ちになったんです。当時の僕は結構やんちゃだったんですけど、当時のアグレッシブな生活態度と彼らのヘヴィなサウンドがぴったりだったんですよね。

——様式美と攻撃性の融合ですか。

そうです。クラシック音楽を重厚なサウンドで表現したのがヘヴィメタルだと思いますので。

——様式美を守りながらも攻撃的な姿勢をみせるというのは会社の運営に繋がるところがありそうな気がします。

確かにそうかもしれません。型にはめて息苦しい会社にするつもりはないのですが、会社である以上はやることはキッチリとやって着実に積み上げていきたい。私は時流に乗っかってキラキラして見えるようなプロモーションは好きじゃないんですね。それを当社のなかでも基本的な考え方に乗せていて、しっかりと地に足つけて末永く展開できる事業をやっていきたいと思ってるんです。それって様式美の世界観に近いかもしれませんね。

——一方で攻撃性ももっていないといけない。

キッチリとやるけれども、強いインパクトやメッセージは打ち出していきたい。確かに会社経営とヘヴィメタルは相通ずるものがあるのかもしれません。いま言われるまで意識したことがなかったですど(笑)。

会議室のソファはメタル仕様……ではなくスポーティなタイプ!

もう一度、絶対にライブハウスの運営をやりたい

——一時はライブバーの経営もしていたようですが、そのあたりのお話を聞かせてください。

そうなんです。2年~3年前、渋谷のNOBっていうライブバーを経営していたんです。

——音楽好きが高じて?

ちょうどその頃に、知人のメタル好きカップルの結婚式の余興で久しぶりにライブをやったんです。ボーカルで『Master of Puppets』(メタリカ)を。

——長い曲を選びましたね(笑)。

ははは(笑)! そのバンドのドラマーが当時NOBのスタッフだったので、店に遊びに行くようになったんです。それこそ週2回とか3回、何年か通っているうちに経営がなかなか厳しいという話をもらって。それであればうちがやりますよっていう話をしたんです。

——すごい話です。

ただまあライブハウスはバンバン潰れていっている時代ですから、やっぱりなかなかビジネス的には厳しいものがありました。一応2年間やったんですけど、これ以上赤字は出せないっていうところで権利をお戻ししたんです。

——趣味だった音楽にビジネスとして関わったことでどんなことがみえましたか?

やっぱり音楽は商売にすべきではないなと(笑)。

——それは興味深いです……。

やっぱり商売って損益を合わせなければいけないので、そこをシビアに追求すると本来やりたいこととどんどん乖離が出てきますよね。ただ、いつかまたやってみたいなっていう気持ちはあります。やっぱりハコを持つ喜びっていうのは計り知れないし、そこでみんなが楽しんでもらっている姿を見てるだけで本当にお酒が美味しくなるわけですよ。

——ぜひ実現してほしいです!

リベンジはこの数年以内にやりたいなと思っています。でも会社組織になるといろいろ……ひとつの事業としてみられるので風当たりが強い(笑)。これはもうプライベート的にやるべきかなと。

——音楽で利益を出すのはしんどいですか。

しんどいですね。現実を目の当たりにしました。腕は一流なのに食べられないミュージシャンもいっぱい見てきましたし。でも結果的に後悔は1ミリもしてなくて。だからこそまたやりたいと思っているんです。

ライブバーでは社長もボーカリスト、キーボーディストとしてたくさんライブを行ったとのこと!

最後はやっぱり美意識の世界

——本当に音楽がお好きなんですね。

もちろん仕事がありますが、そこを度返ししたらやっぱり私が一番やりたいことは音楽なんです。そんなに大それたことはできないですけど、僕なりにもっと音楽業界を盛り上げたいんですよ。

——ITの世界で活躍する社長さんがリアルな現場を持つことの大事さを強く語っているのはすごく素敵なことだと感じます。

遠巻きで見ているだけじゃやっぱりダメで、何でも体感してほしいですからね。やっぱり生の現場が大切。ライブハウスに行ったことがない人も多いですが、やっぱり生で体感してほしいですよ。

——実際のところ何年後くらいに?

うーん、3年くらいですかね。お陰様でいま本業も順調に推移していますので、3年後にはもうちょっと落ち着くかなと。私はいま50歳ですからもうちょっとがんばりたいですけど、少しずつ本業のほうは次の世代に譲っていってもいいかなと思っているんです。それで自分は、会社としっかりシナジーがあって、音楽業界を支援できるような新たなスキームを作っていきたい。それがここ10年の仕事かなと思っています。

——現在の本業のお仕事と社長の音楽愛が繋がっているような部分はありますか?

私は音楽を聴くのも好きですけど、やっぱり演者としてステージに立つことがすごく面白いと思っているタイプなんですね。クオリティを上げるためには音楽も当然ながら積み重ねで。ロジックなんです。音楽は学問ではないとはいえ、学問的要素が多分にあって、音楽の“ガク”は楽しいという半面、学ばなければいけないっていうところの“ガク”でもあったりして。

——なるほど。

そして、どんなにリハーサルでクオリティを上げても本番で失敗したらそれで終わり。本当に難しいですよね音楽は。それと同じようなことが仕事にも言えて、一番パフォーマンスしなければいけないところで実力を出せなかったら、それはそれでお客さんからそういう評価になってしまう。私たちは仕事においてはプログラムっていうロジックの世界で生きていて、コツコツと積み上げていかないと絶対に辿り着かない領域なんです。一切手抜きなく積み重ねるっていうのは、音楽でライブ当日に最高潮に持っていくっていうところの積み上げとすごく似ているものがあるのかなと思います。あとは究極の観点でいくと、最後はやっぱり美意識の世界になっていくのかなと。

——美意識きましたね!

これはロジックじゃないんです。もう感性の部分。その積み上げたものが自分のなかで美しいと思えるかどうかです。私は儲かればなんでもいいっていうことは全然やりたくなくて。例えば課金がすごいアプリとかエロ系とか、自分の美意識に反することは絶対にやりたくないんですよ。そしてそれを仲間と一緒に共有できるかどうかも大切です。それができないと「バンドの方向性が違う」って解散してしまうのと同じことが起こってしまう。

——なんだかヘヴィメタルバンドを突き詰めるとビジネスで成功するのかなって思ってきました。

ははは(笑)!

——もっとヘヴィメタル聴きます!

本当にヘヴィメタルには素晴らしい要素が詰まっていますからね。僕もこれからもずっと音楽好きでい続けたいと思います!

(おわり)

歌声が聴いてみたい……!

3年以内にライブハウス(or ライブスペース)を作ることを約束してくれた音楽大好きな笠井社長。リアルな現場にこそ本当の音楽の魅力があると語ってくれた社長の言葉に感動しっぱなしでした。「社会人たちが日々のうっぷんを音楽で発散できるようなスペースにしたい」「そこにITの技術を取り入れて、ライブ配信ができるアプリなどを開発して現場に来たいと思ってくれる人を増やしたい」と目を輝かせながら語ってくれ、期待は高まるばかり。高身長で骨格もしっかりしている笠井社長はきっとボーカリストとしても魅力的なのでしょう(好きなボーカリストはヨーロッパのジョーイ・テンペストとのこと!)。ぜひオープンしたライブハウスで社長の歌声も聴いてみたいです! 今回はお忙しいなか本当にありがとうございましたぁぁぁ!

プロフィール

かさいたつや●大学を卒業後、商社司法書士経て30歳からIT 業界へ飛び込む。2年で取締役就任、翌年には取締役兼COOに就任。7年半で14名だった会社を100名にまで成長させ独立、Tech Fun株式会社を設立した。3歳からピアノを始め高校2年のときに学祭に出るためにバンドを結成。学生時代、社会人でいくつかのバンドを結成し、ボーカリスト、キーボーディストとして100ステージ以上を経験している。好きはバンドはハロウィン、ガンマ・レイ、アクセプト、レイジ、メタリカ、ANTHEM、DEAD ENDなど。

Tech Fun株式会社
https://www.techfun.co.jp/

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