ボーカルだけどうしたこれ?〜AC/DC『バック・イン・ブラック』〜平井“ファラオ”光(馬鹿よ貴方は)連載
音楽と絵画を愛するお笑い芸人・平井“ファラオ”光(馬鹿よ貴方は)が美術館の館長となり、自身が所持する数々のCDジャケットのなかから絵画的に見て優れているもの、時に珍しいものをご紹介する連載。
番外編(第39回):ボーカルだけどうしたこれ?
今月もやってきました誰も得しないでおなじみのヒドすぎるジャケット紹介のコーナー。忙しい人は読まないことをお勧めします。
AC/DC『バック・イン・ブラック』(1980年)
さて今回は南の大陸オーストラリアからのエントリー。地獄のコアラ軍団の登場だ。ハードロックという音楽を愚直なまでにシンプルに、ワイルドに突き進んできたAC/DC。そのキャリアのなかでも最もセールス面で成功を収めたアルバムがこの『バック・イン・ブラック』で、その売り上げは5,000万枚にも及び、マイケル・ジャクソンの『スリラー』に次ぐ全世界歴代2位というモンスターアルバムである。
そのシンプルなロックンロールスタイルに見合った黒を基調としたシンプルなジャケット。それでこれほどの売り上げを記録しているというのは相当すごいと思う。はっきり言ってかっこいい。
ならばなぜこのヒドいジャケットを紹介する悪魔のコーナーで今回取り上げているのか。実は僕が注目してほしいのは表紙のデザインではない。見てもらいたいのは中身である。そこにはメンバーそれぞれのモノクロの写真が写されており、ミュージシャンが最も輝いている瞬間であるライブ中の演奏に集中しているときの写真が使われている。そのため皆とてもかっこいいのだが、ただひとり、ボーカルのブライアン・ジョンソンだけが、なぜか楽屋入りした瞬間を激写されたような気の抜けた写真が使われていて全然かっこよくないのである。よりによってボーカリストの写真がである。
ではその問題の写真をひとりずつ見ていただこう。
まずはバンドの中心人物であるギタリスト、アンガス・ヤングの写真がこちら。
うむ、とてもかっこいい。やんちゃなアンガスの個性がしっかり出ているいい写真だ。
続いてその兄、マルコム・ヤングの写真がこちら。
こちらもクールなマルコムの個性がしっかり出ていて、アンガスとの対比でよりかっこよく見える。
続いてベーシスト、クリフ・ウィリアムズの写真がこちら。
これまたかっこいい。まさにライブの熱狂が写真を通して伝わってくるようである。
続いてドラム、フィル・ラッドの写真がこちら。
これもまた躍動感あふれる素晴らしい写真だ。やはりライブ中こそミュージシャンが最も輝く瞬間であることを伝えてくれている。
さあそして問題のボーカル、ブライアン・ジョンソンである。ボーカルといえばバンドの顔。最も華やかでカリスマ的な存在。そんなブライアン・ジョンソンの写真がこちら。
おはようございまーす。
何だこれは。完全にプライベートではないか。
「え、ちょっと撮らないでくださいよ~」じゃねえ!
「すいませ~ん、道迷っちゃって」じゃねえ!
「帽子買ったんすよ~」じゃねえ!
「この街コンビニ全然ないっすね」じゃねえ!
「へへっ」じゃねえ!
ライブしろ!!!!
なぜよりによってボーカルであるブライアンだけがこんなプライベート激写写真なのだろう。サイモン&ガーファンクルのオーディションと間違えて来ちゃった人みたいではないか。まあ彼がAC/DCに加入して初のアルバムであるため、AC/DCのメンバーとしてのライブ写真はなかっただろうから仕方ないのかもしれないが、それにしたってこのゴキゲンな写真はないだろう。すごくゴキゲンではないか。なぜこんなにゴキゲンなんだ。せめてレコーディング中の写真でもあればそのほうがよかった気がするのだが。
まあブライアンのことを知らなかった人たちは当時この写真を見てまさかあんな強烈な声を出すボーカリストだとは思わなかっただろうから、そういう意味ではハードルを下げる効果はあったのかも知れない。
フォローになってないね。
といわけでコアラより可愛いブライアン君の写真でした。また来週。