画家の名前がとても気になる……/松本孝弘『華』 平井“ファラオ”光(馬鹿よ貴方は)連載
音楽と絵画を愛するお笑い芸人・平井“ファラオ”光(馬鹿よ貴方は)が美術館の館長となり、自身が所持する数々のCDジャケットのなかから絵画的に見て優れているもの、時に珍しいものをご紹介する連載。
第29回:画家の名前がとても気になる……
今回ご紹介するのはこちら。
松本孝弘『華』(2002年)
この連載に登場するのは2回目となるB'zのギタリスト、松本孝弘のソロアルバム。前回の『enigma』に続きこちらも全編ギターインスト。個人的には一流のギタリストのソロアルバムは、一部のボーカリストとしても魅力のある人以外はもっとギターインストのアルバムを出してほしいと思っているのだが、どうも世の中の多くのギタリストは歌うのも大好きのようで、せっかくギターで歌以上に歌えるタイプの人なのに、中途半端な歌がメインのアルバムになってしまっていることが少なくないのが個人的にはちょっと不満だったりする。(一番ひどいのはウリ・ジョン・ロートさんだと思います!)
つまり意外にも数少ないギターインストアルバムを定期的に出してくれている松本孝弘は貴重な存在で、しかも前にも書いたがこの人のギターは本当によく歌う。そしてその歌にはまさに日本の心が乗っているのだ。外国で産まれたギターという楽器をまるで日本の伝統楽器のように聴かせてしまうのは本当にすごいと思うし、ロックをやる日本人のあるべき姿であるとも思う。
『華』は彼の日本人としての自覚、意識が初めて明確に作品として打ち出されたアルバム。これ以降の彼のプレイのほうがより日本的になっていってるとは思うが、わかりやすく日本的要素を前面に出しているという意味では別プロジェクトのTMGを除けばこのアルバムのみ。それも当時インストアルバムとしては国内で異例の売り上げを記録したアルバムだったことを記憶している。
楽曲は全編スローな曲で統一されており、彼の歌うギターを存分に味わえる。また日本的な曲ばかりではなく、わりとバリエーションに富んでいて、ジミヘンのカバーなどは非常に独創的だ。わがままを言うならもっとアコースティックギターも聴きたいが。
そしてまた素晴らしいのがジャケットである。なんとまあがっつり日本画なこと。日本画大好きの僕大喜びである。ロックギタリストなのによくぞこれほどロック的要素を排除したジャケットにできたものだ。モチーフとなっているのは鳳凰で、表紙では尾しか見えないが、裏に全身が描かれている。吉祥の象徴として日本画の世界では古くからよく取り上げられている画題である。しかしブックレットを見ても画家の名前がどこにも書かれていない。現代の日本画家だろうか。しっかり日本画を学んでいる者であることは間違いないと思うが。とても気になる……。
それにしてもやはりこの人のソロアルバムのジャケットにはセンスを感じる。B'zのときは正直「オヤッ?」と感じてしまうときもあったりするのだが。そうなるとやはり「オヤッ?」の原因は稲……………………稲作農業が盛んな地域はやっぱり新潟ですか?
『華』が発売されてからもう20年近くたつが、個人的に望むのは『華』のパート2のようなアルバム。今の彼のレベルで『華』のようなアルバムを作ったらさぞかしすごいものが生まれることだろう。
それをどうしても希望したい! だからどうかリットー大王様、彼と対談をさせてください。とりあえず今度また飯行きましょう!