名作に見合ったタイトル&ジャケにしてほしかった/フェア・ウォーニング『4』 平井“ファラオ”光(馬鹿よ貴方は)連載
音楽と絵画を愛するお笑い芸人・平井“ファラオ”光(馬鹿よ貴方は)が美術館の館長となり、自身が所持する数々のCDジャケットのなかから絵画的に見て優れているもの、時に珍しいものをご紹介する連載。
第26回(番外編):名作に見合ったタイトル&ジャケにしてほしかった/フェア・ウォーニング『4』
やってきましたヒドすぎるジャケットを紹介する番外編。新年一発目はドイツからのエントリー。
フェア・ウォーニング『4』(2000年)
今回はヒドすぎるタイトルという意味でも取り上げさせていただいた。フェア・ウォーニングは1992年デビューのハードロックバンドである。実は彼らほど日本人好みの音楽をやっているバンドはちょっと珍しい。特にハードロックバンドとしては。
その真髄は何かと言うと、まさしくメロディにほかならない。日本人というのは皆根っこの部分に歌謡曲で育ってきた血が流れているため、キレイなメロディというものが大好きな民族なのだが、そこへきてこのフェア・ウォーニングの紡ぎ出すメロディは実に歌謡曲的で、わかりやすく滑らか、そしてあくまでメロディのよさを前面に出しているところが我々日本人の琴線にビシビシと触れてくるのである。それゆえハードロックバンドとしては日本での人気も高く、過去には日本で10万枚を超える売り上げのアルバムもあったほどだ。
しかも彼らの魅力はメロディだけではない。ボーカリストのトミー・ハートの広がりのある声は曲のメロディを最大限に引き立て、ギタリストのヘルゲ・エンゲルケは彼の師であるギター仙人、ウリ・ジョン・ロートから一度譲り受け、返せと言われているのにいつまでたっても返さないでいるスカイ・ギター(通常のギターよりもフレットの数が多く高いトーンが出せる)による高音ソロでバンドに華々しい個性を与えることに成功している。ヘルゲ・エンゲルケはバンドのメインソングライターのひとりでもあるのだが、『メロディの魔術師』の異名をとるほどの天才的なメロディメイカーで、本当に魔術でも使いそうな独特の風貌だが、丸っこい顔に垂れ目、M字の口の形からファンからは『ガチャピン』の愛称でバカにされている。彼の作る曲に基本ハズレはないが、『エンジェルズ・オブ・ヘヴン』(サードアルバム『GO!』収録)はハードロック界最強の名曲に数えていいと思う。
さてそんな彼らの4枚目のアルバム『4』である。4枚目だから『4』。もうタイトルの時点でヒドい。4秒で考えたとしか思えない。まあ確かにそういうパターンはロック界にはある。レッド・ツェッペリンの4枚目のアルバム『Ⅳ』なんかは有名だ。しかし個人的に思うのはこのパターンをフェア・ウォーニングにやってほしくなかった。というのもフェア・ウォーニングのアルバムというのはコンセプトアルバムというわけではないにせよ、どれもそれぞれまったく違った世界観を持ったアルバムだからだ。ツェッペリンの曲はある程度別のアルバムに入れ替えても成立すると思うが、フェア・ウォーニングの例えば『4』に入っている曲を『GO!』に入れてしまうとかなり違和感がある。つまり世界観のあるアルバムだからこそそれに見合ったしっかりとしたタイトルをつけてほしかったのだ。
さらにいい加減にしなきゃいけないのはこのジャケットである。4枚目だから『4』。『4』だから指で『4』ってやっちゃった。スベっている。スベっているぞフェア・ウォーニング。これジャケットも4秒で考えただろう? これは計算かどうかわからないが4曲目に入っているのが『「フォー」エバー』(スベっているぞ)。そしてこれはただのハプニングだが、前作までメンバー5人だったのにこのアルバムではひとりが体調不良によりほぼ4人で作ったという事実(仕方ないけど4が被りすぎて結果スベっているぞ!)。
内容は実に充実したアルバムなのである。ボーナストラックまで含めて爆発的な名曲がこれでもかと押し寄せてくる奇跡のようなアルバムである。さすがフェア・ウォーニングといった感じだが、だからこそタイトルとジャケットがもったいない。あと一歩で完璧な名盤だったのに。
とにかく日本人なら絶対気に入ること請け合いのフェア・ウォーニングによるメロディの洪水をぜひ味わってみてほしい。
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ヘルゲ・エンゲルケってどんな名前だよ!