彼のギターはまさに天使が奏でる美しき音/エリック・ジョンソン『ヴィーナス・アイル』 平井“ファラオ”光(馬鹿よ貴方は)連載
音楽と絵画を愛するお笑い芸人・平井“ファラオ”光(馬鹿よ貴方は)が美術館の館長となり、自身が所持する数々のCDジャケットのなかから絵画的に見て優れているもの、時に珍しいものをご紹介する連載。
第23回:彼のギターはまさに天使が奏でる美しき音/エリック・ジョンソン『ヴィーナス・アイル』
あけおめなんつっとりますけども。
音楽好きが高じて去年から始まったこの連載。個人的には好きなことを好きなように書いているだけなので楽しくやらせていただいているのだが、果たして読んでいる人が楽しんでくれているかどうかは定かではない。そもそも読んでいる人などいるのだろうか。それにしてもこの連載をやらせていただいてから今までよりさらにジャケットをよく見るようになり、これまで所持していながら気づかなかった魅力的なジャケットを新たに発見できるようになったりと、何気に自分にとっても勉強になっていたりする。
音楽はジャケット、音質、曲順、そして何よりデッキを通して聴く温かみという意味でもやはり実際にCDを買って聴くのが最もその音楽を深く理解できるものだ。じじい臭いと思われてしまうかもしれないがそうなのだから仕方ない。つまり、この連載の第1回の前書きでも少し書いたが、ダウンロード全盛のこの時代にもっとCDを買って聴く人が少しでも増えるようにというちょっとした使命感を勝手にもってやっているのは事実だ。
とはいえそんなに力んで読まれても困るし、こちらもそこまで思想全開で書くつもりはまったくないので、今年も軽く鼻くそでも食べながらだらだら読んでもらえたらと思う。とにかくいいジャケットが見つからなくなるまでは続けていきたいと思っているので、応援していただけるとこれ幸いである。
それじゃ今年一発目に紹介するのはこちら。
エリック・ジョンソン『ヴィーナス・アイル』(1996年)
とにかくギターという楽器のもつ無限ともいえる可能性の幅には驚かされる。弾き手の数だけ個性があり、一流のプレイヤーのそれはもはや歌以上に多くを語る。僕自身、ギターはアコースティックをかじる程度に弾けはするが、まだまだレベルは低い。エレキも一度弾いてみたいのだが、ローリング・ストーンズのキース・リチャーズが「アコギを弾けない奴はエレキなど弾くべきじゃない」的なことを言っていたのをどっかで見たので、キースの言葉鵜呑みにしちゃう屋さんの僕はいまだにエレキに手を出せないでいる。『サティスファクション』のリフ弾けるのに(あんなもん馬でも弾けるが)。専門用語などにも疎く、フィードバックって何?レベルである。
しかし聴く側としてはやはりギターは大好きな楽器で、好きなギタリストなど名前を挙げだせばキリがない。ボーカリストより多いくらいだ。そんななかで今回紹介するエリック・ジョンソンは常に僕の好きなギタリストの上位にいる人である。というかギターが好きな人なら絶対必聴といってもいい。あまりの衝撃に思わずフィードバックしてしまうだろう。
アメリカ出身のフュージョンギタリストで、この人の最大の個性はなんといっても「音キレイ」である。世にギタリストなどごまんといるが、この人ほど透明感のある澄んだ水のような、あるいは爽快感のある風のような美しい音色を出す人はほかにいないのではないか。なぜそれほどにキレイな音を出せるのかと言うと、このエリック・ジョンソンという人はとにかく職人気質というかオタク気質というか、機材の電池のメーカーや機材を設置する位置など、細部の細部に至るまで徹底的にこだわりぬく超神経質な人なのである。それによりあの唯一無二の美しい音にたどり着いたということだ。恐ろしくフィードバックな話である。
さらに彼の魅力はギターの音色だけにとどまらない。自らボーカルも担当しているのだが、その声がまた爽やかイケメンボイスでキレイなギターの音色と見事にマッチしている。また楽曲もこの『ヴィーナス・アイル』は特に幻想的で浮遊感のある曲が多く、そこに彼の優しい声と美しいギターの音色が乗るので、もはやヒーリングミュージックに近い癒し効果をも感じさせてくれる。夜就寝時などにかけても気持ちよくフィードバックして眠れることだろう。
そこへきてこのジャケットである。彼の音楽性、声そして音色すべてに調和した良ジャケ中の良ジャケである。まさに息を呑むような美しさだ。これほどの美しいジャケットならエリック・ジョンソンを知らない人でも目を惹かれジャケ買いしてしまいそうだが、良ジャケというのはある意味でそれに見合った内容の充実を求められるのでハードルも上がる。しかしこれに関しては裏切られる心配はない。彼のギターはまさに天使が奏でる音。ジャケットそのままの世界を堪能できるのだから。
むしろこの美しいジャケットを目の当たりにしながら何とも思わないような奴は便所でフィードバックでもしてればいい。その間に僕らはエリック・ジョンソンを存分にフィードバックさせていただこう。
写真ちょっとフィードバックしちゃったかな。