ポール・マッカートニー死亡説でも有名/ザ・ビートルズ『アビイ・ロード』 平井“ファラオ”光(馬鹿よ貴方は)連載

連載・コラム

[2018/12/11 12:00]

音楽と絵画を愛するお笑い芸人・平井“ファラオ”光(馬鹿よ貴方は)が美術館の館長となり、自身が所持する数々のCDジャケットのなかから絵画的に見て優れているもの、時に珍しいものをご紹介する連載。


第20回:ポール・マッカートニー死亡説でも有名/ザ・ビートルズ『アビイ・ロード』


今回ご紹介するのはこちら。

<耳マンのそのほかの記事>

ザ・ビートルズ『アビイ・ロード』(1969年)

素晴らしいアルバムジャケットといえば?と聞かれてまずこれを挙げる人も多いのではないか。世界一有名なバンドの世界一有名なアルバムジャケットだ。あまりに有名すぎてこの場所自体が観光名所として、彼らと同じようにアビイ・ロードの横断歩道を渡り記念写真を撮る人たちがあとを絶たない。

『レット・イット・ビー』のほうが発売したのはあとでありながら、レコーディング時期の関係などから事実上ビートルズのラストアルバムとなった同作は、ビートルズの最高傑作と評価する声も少なくなく、まだまだバンドとして大きな可能性を感じさせたままの解散となってしまっただけにファンの落胆も大きかったようだ。

僕もこれは大好きなアルバムで、たまにカラオケで空気を読まず急に収録曲『オー!ダーリン』を歌ったりするのだが、原曲のポールの歌い方がかっこよくて真似しようとするがこれがなかなか難しい。特に「do you no harm」のところ。「do you no harm」のところをかっこよく渋くキメたいのだ(知ってる人は気持ちわかるでしょう?)。むしろ「do you no harm」のところをかっこよくキメられるかどうかで男の価値は決まるといっても過言ではない。女性のみなさんも男選びに迷ったときは「do you no harm」で決めてみてはいかがだろうか。いかに見た目がいい、性格がいい男だろうと「do you no harm」がキメられないようなやつはやめといたほうがいい。よくいるのだ、顔もそれなりによくて性格もいいくせに、肝心の「do you no harm」がキメられないやつが。まずは「do you no harm」、話はそれからである。

ところでこのジャケット、やはり有名になるだけあってデザイン的な目線でも実に優れたジャケットだと思う。まず構図がおもしろい。道路の先の消失点に目線が吸いこまれるようでありながら、メンバー4人は意にも介せず目の前を横断していくという、不協和音ともいえる独特の構図がなんだか見ていて気持ちがいい。そのうえ4人の姿勢がしっかりとシンクロしているところも写真なのにどこかアニメチックな感じに見えてきておもしろい。

そういえば、このときにポール・マッカートニー死亡説が流れたのも有名な話。いわく、一番前で真っ白なスーツを着ているジョン・レノンは牧師、次いで全身黒のリンゴ・スターが葬儀の参列者、次ぐポールはなぜか裸足でいることからそれが死者を表しているといわれ、最後尾のどこかみすぼらしい恰好をしたジョージ・ハリスンは墓を掘る人を表現しているという。そうなると、いまメディアでよく見るあのポールはポールではなく才能のあるおじいさん(もしくはおばあさん)ということになる。

なかなか愉快な説だが、有名な作品には反面、都市伝説なんかもつきものだし、実際意図してかせずしてかビートルズ自身がいろいろ疑問をもたせるような要素を盛り込んでしまっているので、そのデザイン性のみならず話題性という点でも勝利を収めたジャケットなのである。

「『オー!ダーリン』は俺が歌ったほうがよかった」と言っていたジョン・レノン。今頃天国で「do you no harm」をかっこよくキメているだろうか。

平井“ファラオ”光(馬鹿よ貴方は)

ひらい“ふぁらお”ひかる●1984年3月21日生まれ、神奈川県出身。2008年に新道竜巳とのお笑いコンビ“馬鹿よ貴方は”を結成。数々のテレビ/ラジオ番組に出演するほか、『THEMANZAI2014』『M-1グランプリ2015』の決勝進出で大きな注目を集める。個人では俳優やナレーターとしても活躍。音楽・映画観賞や古代エジプト、恐竜やサンリオなど幅広い趣味を持つ。