この人たちのジャンルって……?/メロウ・キャンドル『抱擁の歌』 平井“ファラオ”光連載

連載・コラム

[2018/12/4 12:00]

音楽と絵画を愛するお笑い芸人・平井“ファラオ”光(馬鹿よ貴方は)が美術館の館長となり、自身が所持する数々のCDジャケットのなかから絵画的に見て優れているもの、時に珍しいものをご紹介する連載。


第19回:彼らのジャンルって一体……?/メロウ・キャンドル『抱擁の歌』


今回ご紹介するのはこちら。

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メロウ・キャンドル『抱擁の歌』(1972年)

1970年代のトラッドフォーク、プログレフォークというのは、自然の香りや人の体温が音を通して生々しいまでに伝わってくる。以前紹介したトゥリーズしかり、このメロウ・キャンドルしかり。

メロウ・キャンドル、いいバンド名である。神秘的で耳当たりもいい。センスのいいバンド名グランプリなどがあったら上位に入るのではないだろうか。しかし実はこのバンド、このアルバムたった1枚のみを残して解散してしまっているため謎も多い。ただ唯一残したこの『抱擁の歌』があまりに素晴らしく、哀愁を感じる柔らかい声質の女性ツインボーカル、美しいメロディ、全体を覆う牧歌的なムードにきらびやかに絡み合うチェンバロ(ハープシコード)の音色と、この手のジャンルのマニアが生唾モノのツボを抑えた音楽性で1970年代ブリティッシュフォークロックの幻の名盤として語り継がれているのである。

ところでさっきからトラッドフォークやらプログレフォークやらフォークロックやら統一感のないジャンルで呼んでしまっているが、明確に彼らがどのジャンルにぴったり当てはまるのかは僕もよくわかっていない。お店なんかだとプログレのコーナーに置いてあることが多いのだが、実際上に挙げた要素はすべて詰まっているので、正確にいうのなら“ブリティッシュ・トラディショナル・プログレッシヴ・フォーク・ロック”ということになる。だがこれだとネーミングセンスのないやつが自分がやっている音楽のジャンルを“ヘヴィシンフォニックメタルロック”とか言ってるのと同じセンスになってしまう(※第14回参照)。なので彼らの音楽ジャンルをどう呼ぶかはそれぞれの判断でいいと思う。なんにせよこの時代だからこそ生まれたクラシカルアートフォークの名盤であることは疑いようのない事実なので、メロディアスエスニックフォークが好きな人にはぜひお勧めしたい。

さてジャケットだが、これがまた謎多き彼ららしいというか、モノクロの不思議な世界観でなんとも形容し難い独特のデザインである。しかしこの不思議な感覚の正体が知りたくてどうしても見入ってしまう奇妙な魅力がある。裏表紙では少年と月が描かれているが、これまた絵本の1ページのような詩的な雰囲気漂うデザインである。

なんにせよこの独特のジャケットデザインによりバンドの神秘性がより増しているようにも思える。

神秘的フォーク。(あ、一番しっくりきた)

ジャケットに絵師のサインが書いてはいるのだが、CDだとちっちゃくて読めない~。

平井“ファラオ”光(馬鹿よ貴方は)

ひらい“ふぁらお”ひかる●1984年3月21日生まれ、神奈川県出身。2008年に新道竜巳とのお笑いコンビ“馬鹿よ貴方は”を結成。数々のテレビ/ラジオ番組に出演するほか、『THEMANZAI2014』『M-1グランプリ2015』の決勝進出で大きな注目を集める。個人では俳優やナレーターとしても活躍。音楽・映画観賞や古代エジプト、恐竜やサンリオなど幅広い趣味を持つ。