至高のライブを収めてるのにジャケットが最低だ/ゴットハード『メイド・イン・スイス~ライヴ・イン・チューリッヒ』 平井“ファラオ”光(馬鹿よ貴方は)連載
音楽と絵画を愛するお笑い芸人・平井“ファラオ”光(馬鹿よ貴方は)が美術館の館長となり、自身が所持する数々のCDジャケットのなかから絵画的に見て優れているもの、時に珍しいものをご紹介する連載。
第30回(番外編):至高のライブを収めてるのにジャケットが最低だ
毎月恒例のヒドすぎるジャケットを紹介する番外編。今回はこの連載初のDVDのジャケットを取り上げたいと思う。
ゴットハード『メイド・イン・スイス~ライヴ・イン・チューリッヒ』(2006年)
ゴットハードである。この連載の15回目で熱い想いを綴らせていただいた、僕が最も好きなハードロックバンドのゴットハードをヒドいジャケットとして紹介してしまうのだ。なんということだ。最低のコーナーである。
こちらは彼らの母国であるスイスでのライブ映像を収めたもの。スイスでは国民的な人気バンドだけあって、日本ではまず実現しないであろうキャパ1万人は入りそうな会場でのライブである。しかしやはり彼らの音楽性とライブでのクオリティを考えれば確実にドームクラスの会場のほうが似合う。事実、冒頭から終わりに至るまですさまじいほどに安定感のある演奏とライブ映えする楽曲で、ロックのかっこよさをこれでもかというほどに見せつけてくれる最高のライブDVDに仕上がっている。
しかし何と言ってもすごいのは、ロック史上最高のボーカリスト(だと僕は思っている)、スティーヴ・リーの存在である。以前にも書いたとおり残念ながら彼は2010年に事故によりこの世を去ってしまうが、力強くハスキーなハイトーンボイスはハードロックを歌うために生まれたような声だし、音程も正確。それにアップテンポなナンバーでは観客を乗せるのが非常にうまく、バラードでは観客全員に切々と語りかけるように歌う表現力の幅広さにも驚かされる。そしてとにかく細かい動きに至るまでの一挙手一投足すべてがカッコイイ。ライブを完全の自分のモノにしていて、まるでスティーヴ・リーという男はステージで生まれてステージで育ったロックスターという名の何か大きな概念のようなものなのではないか、とさえ思えてきてしまうほどだ。それに何よりも心の底からロックを歌うことを楽しんでいることが伝わってくるのがいい。
そんな最強のフロントマンを中心とした最高のバンドによる至高のライブを収めたこのDVDのジャケットが最低である。なんだこれは。牛がロックンロールしてしまっているではないか。いや、意味は何となくわかる。メイド・イン・スイスだからスイスの山で牛が子を作っているのだろう。それはわかるしロックなジャケットとも取れるだろう。しかし何よりいただけないのは安っぽく見えるCGである。まあ実写でこの状況は再現が難しいのかもしれないし、当時のCG技術ではこれが限界なのかもしれないが、やはりこれは……まあ……うん、ダサいよね。
しかし何度も言うがライブの内容自体は本当に最高なのである。スイス以外での知名度が低いのが悔やまれるくらいだ。しかしやはりこのジャケットではファン以外の人はなかなか購買意欲は湧かないだろう。しかし何度も言うがライブは素晴らしいのだ。絶対に日本人受けするタイプのバンドでもあるしもっと多くの人に聴いてほしい。しかしやはりこのジャケットでは内容の素晴らしさとあまりにも合っていない。しかし内容は素晴らしいのだ。もっと聴いてほしい。しかしジャケットはやはりダサい。しかし内容は素晴らしい。しかしジャケットダサい。しかし素晴らしい。しかしダサい。しかし……。しかし……。
・・・・・・・・・・・。
しかし!!