m-floがマイノリティーに支持される理由……新宿2丁目で“LISA兄貴”に直撃

特集・インタビュー

[2019/11/6 12:00]

クールなイメージとは裏腹な毒舌キャラとしてメディアでも大活躍をみせるm-floのボーカル・LISA。今回はそんなLISAの魅力を存分に引き出すべく、女装パフォーマー&ライター・アロム奈美江との対談を新宿2丁目にて実施! グループ復帰後初となるニューアルバム『KYO』の話、LGBTやマイノリティーに関する話、そしてぶっちゃけ恋愛トークも飛び出した濃厚なインタビューをお楽しみあれ〜!


キツ〜いダメ出しを乗り越えた新作『KYO』

アロム:LISAさんは2017年にm-floに復帰されましたが、復帰して初めてのアルバム『KYO』がリリースされます。改めて制作を振り返ってみて、苦労した点とかエピソードがあれば教えてもらえますか?

LISA:今回のこのアルバムって、作るのに2年くらいかかってるんですよね。

アロム:復帰してから結構、間がありましたよね。

LISA:ちょいちょいシングルは配信で出してたんだけど、もうちょっと本当は早くにアルバムは出す予定でいたの。だけどTaku(☆Taku/DJ)ちゃんがね、「これじゃあ今、俺が世に出したいm-floじゃない」って。彼のなかで何かがシェイクしなかったのねきっと。じゃあドロップできないなと。それで時間がかかっちゃったんですよ。まぁいいことなんですけどね。日本って何でも急ぐから。

アロム:期日どおりに進めないといけないっていうね。

LISA:そうそう! で、結局、Takuのハードルをクリアするために何曲も作って何曲もダメになって。ダメ出しもものすご〜い出た! もう「この野郎!」って思うくらいいっぱい。何回も電話で喧嘩したし。でも、最終的にアルバムを聴いたとき、彼が降る旗の方向を向いてよかったなって。

アロム:m-floのサウンドにLISAさんの声が乗った懐かしさがありながら、新たな音へのチャレンジによる斬新さがあって、懐かしさと新しさが同居しているアゲなアルバムになっていると感じました。

LISA:そう言ってくれるとすごく嬉しい! (アロムの体を叩きながら)あぁ、嬉しい! あのね、私は帰ってきた感をいっぱい出したかったの! でもTakuのなかではそれだけじゃあいかんと。でもね、そのとおりなんだよね。だからアロムちゃんが言ってくれたようなブレンドに仕上がって嬉しい!

アロム:私個人としては、収録曲『No Question』のリミックス版が2019年の『東京レインボープライド』(※プライドパレードもおこなわれる日本最大級のLGBTイベント)のテーマソングになっていたので思い入れがあって。ああいうイベントのテーマソングとなると「大きな愛」を優しく歌う曲が選ばれることが多いんですけど、『No Question』は攻めてるなぁと。VERBALさんのラップも挑発的なリリックが入ってたりとか。

LISA:えぇ、そうですね。

アロム:差別や偏見に立ち向かって行く姿勢みたいなものが楽曲に盛り込まれていて勇気をもらえたんですけど、制作するときにLGBTを意識したところはあったんですか?

LISA:実はこの曲って私が戻ってきてからわりとすぐにできあがった曲なので、イベントを意識したものではないの。でも、何かのご縁よね。

アロム:たまたまハマったんですね。

LISA:ご縁ご縁。歌詞も自分で読み直してもすっげーフィットしてたなって思う。だからあのイベントで歌ったときのあの『No Question』は今までにない『No Question』になったよね。

アロム:うん、あの場所にすごくハマってて最高でした。

LISA:嬉しい~!

うちらは最初っからマイノリティーだった

アロム:『No Question』はもちろんLGBTといわれるセクシュアルマイノリティーの人もハマるけど、それ以外のあらゆるマイノリティーの人たちも背を押してもらえるような曲になっていると思います。

LISA:なんかね、綺麗事ばかりじゃないでしょっていうところをすごく出したくて。

アロム:固定概念に囚われず自分を貫こうみたいな曲ですよね。そもそもm-floさんってゲイに人気あって……。

LISA:そう! イベントとかも呼んでいただくし!

アロム:特にLISAさんは多分2丁目のゲイの人たちとわかり合えるタイプの女性だなと思っていて。

LISA:昔は2丁目でガンガンに飲んでたから〜! だから今回、2丁目に来られてすごい嬉しいの!

アロム:どの辺の時期に来てたんですか?

LISA:ソロになったときによく来てたよね。その理由っていうのがさ、2丁目さんがすごく優しいのがさ、一度m-floを脱退してソロになったときに『陽炎』(※かつて新宿2丁目で開催されていた人気クラブイベント)が私に仕事をくれたの。

アロム:あ! 『陽炎』ね!

LISA:そう! 私がね、ソロで「もう駄目だ」ってなった頃に、よ~くイベントの仕事くれた。救ってくれた。

アロム:そうだ! 今思い出しました。当時私ゲイ雑誌の編集者をやってて、その雑誌でも取りあげてました。「LISAが来た~!」って。

LISA:だから2丁目は大好き。

アロム:じゃあ偏見とかもなく?

LISA:全然。だってもう、楽しいじゃない(笑)?

アロム:でしょうね(笑)。

LISA:ホットスポットというか、エナジーがある場所だと思ってる。来て楽しくなかったことないよ。

アロム:Takuさんも2丁目でDJされてますしね。m-floのグループ自体が2丁目に似たマイノリティーみたいなところがあるのかなと感じるんですけど、そういうのって意識的にあります?

LISA:それはあると思う。うちらは日本にあるアメリカンスクール育ちっていうところで最初っからマイノリティーだから。ラッパー(※VERBALのこと)はコリアンでしょ、私は半分コロンビア人で、Takuは日本人だけどアメリカンスクール出身。今は時代的にハーフって素敵ねって言われてるかもしれないけど、私のときはもう本当に、近所の子に砂投げられたり、本当にひどかったから。

アロム:すごい時代を生き抜いてきたんですね。

LISA:うちのお母さんは、この子はアメリカンスクールに入れないとやられる!みたいなのがあったみたいで。学校内のイジメはなかったんだけど、一歩外に出るとやっぱりそういうのがすごいありましたよ。指差されて「外人!」って言われたり。

アロム:ひどい!

LISA:中学校高校になると今度は調子に乗りだすのよね。やっぱハーフってちょっと珍しいからっつって。今度はチヤホヤ。それも結果、良いか悪いかはわからないけどさ、ルーツに何かみんなとは違うっていうのはすごくあったし。うちの母ちゃんはそれでよっぽど泣いてたよ。

アロム:いろんな経験をくぐり抜けて、今は鉄の女になっちゃったんですね!

LISA:アッハッハ! もうね、誰も近づいてくれないのよ(笑)! 困ったよ!

アロム:最近バラエティー番組とかメディアに出演することも多くなっていますよね。音源でのウィスパーで綺麗な声とは違って、酒ヤケ姐さんみたいな(笑)。

LISA:そうなのよ! み~んなに言われる!(次ページへ)

耳マン編集部