出囃子はじゃがたら!? 独自の世界観で注目を浴びる“お笑い第7世代”空気階段の音楽遍歴に迫る!

特集・インタビュー

[2020/8/26 12:00]

お笑い芸人のテーマソング!? 個性豊かな“出囃子”の世界

お笑い芸人が袖から舞台に登場するときに流れる音楽、それが出囃子。漫才頂上決戦『M-1グランプリ』で流れるファットボーイ・スリムの『ビコーズ・ウィ・キャン』(「♪イェス カンカンカンカンカンカンカン〜」でおなじみのアレ)はみなさん聴き馴染みがあるのではないでしょうか。お笑いライブによっては、出演する芸人自身が選んだ出囃子が流れることがあります。一体どの曲を選ぶのか芸人のセンスが色濃く反映される出囃子は、その芸人のテーマソングともいえるでしょう。今回は、2019年の『キングオブコント』で決勝に進出し、独自の世界観に基づくコントで爆笑をかっさらうお笑いコンビ・空気階段に、そのセンスが反映されまくりな出囃子と、ふたりの音楽遍歴についてお聞きしました!

水川かたまり
鈴木もぐら

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芸人は結局ネタ――原点に帰ることができる出囃子『タンゴ』

――空気階段は出囃子に暗黒大陸じゃがたらの『タンゴ』を使ってますよね。この曲の猥雑で怪しい雰囲気が、空気階段のコントの世界観に見事にマッチしていて最高の組み合わせだと思います。『タンゴ』を選んだきっかけはなんですか?

水川かたまり(以下、かたまり):吉本の劇場のライブは各芸人が出囃子を選ぶものと、全組共通の出囃子を使うものとふたつあるんです。それで結成1年目のときに自分たちの出囃子を使うライブに出るから決めなくちゃいけないってなって、もぐらが候補を何曲か持ってきてくれたんです。

鈴木もぐら(以下、もぐら):出囃子は一度決めると簡単には変えられないんですよね。だから家にあるCDを片っ端から聴きまくって、イントロの30秒がかっこいい曲を選びました。

――候補にあったほかの曲は覚えてますか?

もぐら:THE FUTURESと、キンクスですね。

かたまり:海援隊もあったよ!

もぐら:ああ、『JODAN JODAN』ね!

――海援隊だけテイストが違うような……。

もぐら:『JODAN JODAN」はイントロの20秒がすごいかっこいんですよ。それだけっていうか、思い入れはまったくないです(笑)。

――『タンゴ』もイントロが最高にかっこいいですもんね。

もぐら:そうですね。一応、僕ひとりじゃ決められないんでかたまりにも聴いてもらおうと何曲か持って行ったんですけど、『タンゴ』が一推しでした。

かたまり:じゃがたらは知らなかったんですけど、一発で「これだ!」と思いました。ハマってると思ってます。

もぐら:じゃがたらって、最初は血塗れになったりする過激なパフォーマンスで有名になったけど、どんどん音楽的にも認められていったじゃないですか。ミュージシャンなんだから、結局は音楽だっていう。芸人もいろいろな側面がありますけど、結局はネタだと思うんですよね。江戸アケミ(じゃがたらのボーカル)の「自分の踊り方で踊ればいいんだよ」っていう言葉もありますけど、俺たちも俺たちのやり方でお客さんを笑わせるしかない。舞台袖で『タンゴ』を聴くと、そういう気持ちになれます。

――空気階段も最初はもぐらさんのクズエピソードで注目されましたけど、あくまでもコントで勝負していくということですね。

もぐら:そうなればいいっすよね(笑)。

――ほかの芸人さんの出囃子で「これはハマってるな」と思う組み合わせはありますか?

もぐら:ななまがりさんの『アカギ』(マキシマム ザ ホルモン)とか、ニューヨークさんの『ニューヨーク・シティ・コップス』(ザ・ストロークス)とかはかっこいいと思います。特にニューヨークさんはコンビ名と曲名がかかってるし、クールな曲調とふたりの雰囲気が一致してますよね。

かたまり:僕は大自然さんの出囃子(映画『紅の豚』サウンドトラックより『ピッコロの女たち』/久石譲)が、おふたりに合ったゆったりした曲調で好きです。あとは男性ブランコさんの出囃子(『夢見るシャンソン人形』/フランス・ギャル)もすごい芸風とマッチしてるんで、この曲に乗って出てくると綺麗だなと思います。

パンクとヒップホップを掘りまくるもぐら バンドマンが嫌いだったかたまり

――おふたりのラジオ番組『空気階段の踊り場』でたびたび話題に上がるので、もぐらさんが銀杏BOYZをお好きなのは知っていましたが、THE FUTURESがさらっと出てくるあたり、ほかにもかなり幅広く聴かれるんですね。

もぐら:GOING STEADY(銀杏BOYZの前身バンド)のDVDの特典映像にメンバーみんなで飯食ってるシーンがあって、そこでTHE FUTURESが流れてて知ったんですよ。気になって調べて、「めちゃくちゃかっこいいな!」ってなって音源買って、っていう。

――峯田(和伸/GOINGSTEADY、銀杏BOYZのボーカル)さんがレコメンドしている音源を掘っていったんですね。

もぐら:やっぱり、峯田さんの影響はめちゃくちゃでかいです。ほかには、その時代のナンバーガールとかくるりとかは聴いてました。あと、オーケンさん(大槻ケンヂ)の小説『グミ・チョコレート・パイン』を読んだ流れで町田町蔵の『腹ふり』(町田町蔵+北澤組)を聴いて「これはまずい……! めちゃくちゃかっこいい!」と衝撃を受けて。そこから1980年代の日本のパンクを掘っていって、じゃがたらもその頃に好きになりました。

――音楽の趣味が合う友達はいました?

もぐら:地元(千葉県旭市)の友達はみんなヒップホップを聴いてました。ヤンキー文化なんで(笑)。畑ばっかりの田舎なんですけど、なかには土地を持ってる金持ちの友達がいて、そいつの家のでかいオーディオでライムスター、キングギドラ、ブッダ・ブランドとかみんなで聴いてました。特にライムスターが好きで。ファーストアルバム『俺に言わせりゃ』は何回聴いたかわかんないです。Mummy-Dさんと宇多丸さんの声のバランスもいいし、韻の踏み方もたまんないっすよね。

――今おっしゃってたアーティストは、世代的にはもぐらさんよりちょっと上ですよね?

もぐら:自分たちの世代に直撃してたのは妄走族、MS CRU(現・MSC)、降神とかっすね。MCバトルで外人21瞑想(現・MEISO)が優勝した2003年の『B-BOY PARK』を観に行った友達がいたんで、妄走族が乱入したとかマイクジャックしたとかって話を聞いて「そんなことがあるのか! すげぇ! 怖ぇ!」って(笑)。般若さんも今や『フリースタイルダンジョン』とか出てますけど、当時はマジで怖かったですよね(笑)。

――もぐらさんは芸人ラップユニット・高円寺WALKAHとしても活動されてました。MVを観たんですが、ニトロ・マイクロフォン・アンダーグラウンドくらい全員のキャラが立ちまくって最高でしたよ!

もぐら:いやいや、それは言いすぎっすよ! ニトロも本当好きで。シャカゾンビと、ニトロのSUIKEN、GORE-TEX、DABO、MACKA-CHINが一緒にやってるバージョンの『共に行こう』とかもめちゃくちゃ聴いてました。

――かたまりさんは学生時代どんな音楽聴いてました?

かたまり:高校時代に好きだった女の子が、バンドやってる奴にヤられちゃったって聞いて、もうそれからバンドマンに対する嫌悪感がすごくて……。

もぐら:同級生のバンドマン?

かたまり:そうそう。

もぐら:俺もブルーハーツは好きだけど、ブルーハーツを演奏してるような同級生のバンドマンは嫌いだったなあ。

――ではかたまりさんは音楽にはあまり触れずに過ごしてました?

かたまり:積極的にいろんな音楽を聴くっていうことはあんまりないんですけど、小学生のときにスピッツのCDを初めて買って、それ以来スピッツは大好きです。中学2年生になったら父親から「お前は社会に不満があるだろう」って言われてブルーハーツとRCサクセションのCDを渡されたんですけど、全然社会に不満はなくて(笑)。でもそれでブルーハーツは好きになって、ハイロウズ、クロマニヨンズも聴いてますね。あと、母親が「ビートルズだけ聴いておけばいい」って言ってたんで、ひととおりは聴きました。

もぐら:マザコンなんで、お母さんの言うことは聞くんですよ。

かたまり:高校生になったら深夜ラジオを聞き始めて、爆笑問題さんのラジオ(『爆笑問題カーボーイ』)に『CD田中』(※1)っていうコーナーがあって、そこで使われてる曲をTSUTAYAで借りてきたり。
(※1:音楽のなかに田中裕二が番組内でしゃべった言葉を入れて作品を作るコーナー)

――『CD田中』から音楽に興味を持つ人ってあんまりいないですよ(笑)!

かたまり:ちょっとしかかからないから、どんな曲なのか気になるんですよね。でもTSUTAYAにCD返しにいくのが面倒でほっといたら延滞料が5万円超えちゃって、TSUTAYAでもう借りられなくなったんで、近所の図書館で昔のCD借りてましたね。さだまさし、キョンキョン(小泉今日子)、佐野元春、サザン(オールスターズ)とか。

憧れのオーケンに声をかけられ、まだ夢の中

――最近のバンドでお気に入りはあります?

かたまり:自発的に探したりはしてないんですけど、スピッツ好きってことでミツメとかYOGEE NEW WAVESは人からお勧めされて聴いてます。

もぐら:ヒップホップだとZORNですかね。先輩の車で聴いた曲がめちゃくちゃかっこよくて。でも今お金ないんで、芸人始める前みたいにすぐCD買ったりできないんですよね。実家に中国の窃盗団が入って、僕のCDがごっそり持っていかれたんですよ(笑)。奇跡的に助かったのが、母親が寝巻きにしてたバンドTシャツと、妹が勝手に売ろうとして避けておいた何枚かのCDだけ。改めて買い直すのも大変だし、心が折れたというか……。

――それは折れてもしょうがない……!

もぐら:高円寺に住んでて、無善寺(※2)の近所なんですよ。フラッと行きたいなとは思うんですけど。いろいろ溜まってる、アンダーグラウンドな人たちの初期衝動がどうなってるか観たいんですけど、お金がないんで(笑)。18、19歳の頃は円盤(※3)にも通ってました。ミドリとか903号室の自主制作盤買ったり。
(※2:高円寺のライブハウス・無力無善寺)
(※3:※高円寺のイベントスペース兼レコードショップ)

――芸人さんとミュージシャンが一緒に出演するイベントも増えてますよね。

もぐら:『やついフェス』とか『コヤブソニック』とか出させてもらいましたけど、やっぱり楽しいですよね。「どんどん飲んじゃっていいよ!」って感じで、ミュージシャンの方々もベロンベロンだし(笑)。楽屋入ったらTheピーズのハルさん(大木温之/ボーカル、ベース)がいて、昔から聴いてたんで「うわ、ハルがいる!」ってテンション上がりました。

かたまり:大槻ケンヂさんに「空気階段、知り合いがおもしろいって言ってたから一緒に写真撮りましょう」って言ってもらったの嬉しかったです。僕たち売れたのかな?と思いました。

もぐら:声かけてもらったのが2019年の『やついフェス』で、会場が渋谷のO-EASTだったんですけど、僕が生まれて初めてライブというものを観にいったのもO-EASTで。そのとき出てたのが銀杏BOYZ、特撮、フラワーカンパニーズだったんです。その場所で、特撮のオーケンさんから写真撮りましょうって言ってもらえるなんて、いまだに現実味がないです。まだ夢の可能性あるなって。

――コロナウイルスの影響でさまざまな音楽イベントが延期・中止になっている状況ですが、再開されたらまず誰のライブに行きたいですか?

もぐら:やっぱり銀杏ですね。峯田さんが溜まったものを吐き出すところを観に行きたいです。

かたまり:僕は山下達郎さん。奥さんと知り合った頃から「山下達郎のライブ行きたいですね」って話をしてて、なかなかチケットが取れなくてまだ行けてないので、一度は行きたいですね。でもライブ中に客が歌ったらめっちゃ怒られるって聞いたんで、めっちゃビビってます(笑)。

(おわり)

空気階段 プロフィール

水川かたまり、鈴木もぐらからなるお笑いコンビで、“お笑い第7世代”でもある。『マイナビ Laughter Night』2016年度、2017年度で2年連続グランドチャンピオンに輝くほか、『キングオブコント2019』では決勝進出するなど大きな注目を集める。TBSラジオにてレギュラーラジオ番組『空気階段の踊り場』も好評放送中!

張江浩司