『キングオブコント』決勝進出のニューヨークが語る、音楽遍歴と壮大な夢「あの頃の音楽番組を復活させたい!」

特集・インタビュー

[2020/9/25 17:00]

『キングオブコント』決勝進出でさらに勢いの増すニューヨークに直撃!

お笑い芸人が袖から舞台に登場するときに流れる音楽、それが出囃子。漫才頂上決戦『M-1グランプリ』で流れるファットボーイ・スリムの『ビコーズ・ウィ・キャン』(「♪イェス カンカンカンカンカンカンカン〜」でおなじみのアレ)はみなさん聴き馴染みがあるのではないでしょうか。お笑いライブによっては、出演する芸人自身が選んだ出囃子が流れることがあります。一体どの曲を選ぶのか芸人のセンスが色濃く反映される出囃子は、その芸人のテーマソングともいえるでしょう。当企画ではそんな出囃子を糸口に、個性豊かな芸人たちの音楽遍歴を紐解きます。

<独自の世界観で注目を浴びる“お笑い第7世代”空気階段の音楽遍歴>

今回は『M-1グランプリ2019』に続き、『キングオブコント2020』決勝進出、そしてYouTubeチャンネルも絶好調のお笑いコンビ・ニューヨークに直撃。毒のあるシニカルな芸風で存在感をみせつけさらに勢いを増すふたりに、バンドマンとの接点やライブでの選曲へのこだわり、そして今後の大きな夢をリモート取材で語っていただきました!

嶋佐和也
屋敷裕政

漫才とコントだと出囃子のテンポが違う

――まず、『キングオブコント』決勝進出おめでとうございます!

嶋佐和也(以下、嶋佐):ありがとうございます! 嬉しいっす。

屋敷裕政(以下、屋敷):いい感じにやれるようにがんばります!

――前回の空気階段さんへのインタビュー(https://33man.jp/article/009082.html)で、おふたりが“出囃子がかっこいい芸人”に挙げていたのがニューヨークさんでした。

屋敷:あ、空気階段が僕らの名前出してくれたんですか? へぇー、嬉しい!

――ザ・ストロークスの『ニューヨーク・シティ・コップス』を使ってらっしゃいますが、この曲に決めたきっかけを教えていただけますか?

嶋佐:僕が本当にストロークス好きだからですね。

屋敷:昔はちょくちょく変えてたよね? 出囃子ってルミネ(※1)の出番もらえるようになったくらいで決めるんですけど、その前に自由に出囃子を決めていいライブがたまにあって、そのたびに嶋佐が曲持ってきて。ユニコーンさんの『大迷惑』とか。
(※1:東京・新宿のルミネtheよしもとで開催されるお笑いライブ)

嶋佐:いろいろ使ってましたね。ルミネの本公演で使う曲は“本出囃子”っていうか、一度決めたらなかなか変えられないんで。それこそコンビ名くらいの。先輩方も“このコンビにはこの曲”っていうのがあるんで。

屋敷:それがかっこいいんよね。出囃子表っていう一覧もあって。

嶋佐:それで曲名とコンビ名がかかってるし、イントロがかっこいいんで、この曲に決めました。出囃子を洋楽とかにするのは逆にかっこ悪いかなとも思ったんですけど、芸歴もまだまだ浅い頃だし、ストレートにかっこいい曲にしようと。イントロのフィードバックが長いんで、そこをカットして編集した音源を使ってるんです。

――クールな曲調がおふたりの雰囲気と合ってますよね。

嶋佐:おもしろおかしい音楽を使う人も多いんで、かっこいいほうが目立つなと思って。こうやって空気階段がかっこいいって言ってくれてるなら良かったなと思いますね。

屋敷:空気階段の出囃子(暗黒大陸じゃがたらの『タンゴ』)もかっこいいですよね。コント師ならではというか。漫才だったらあの出囃子はやりづらいよなぁ。

――漫才とコントだと出囃子も変わってくるんですね!

屋敷:コントはテンポ遅めの曲が多い気がしますね。GAGさんもそうやし。

嶋佐:漫才はビート早いっすね。そうじゃないと出て行きづらい。

屋敷:だから、コントしかやらない人の出囃子に憧れます。盛り上げる必要がないから、世界観を作るだけっていう。

嶋佐:コンビによっていろいろ考えて選んでると思いますよ。

屋敷:僕らも単独ライブのときは漫才とコントで出囃子変えてますしね。

嶋佐:コントにはくるりの『ロックンロール』を使ってます。でもこれはテンポがどうこうよりも、イントロがかっこよくてめちゃくちゃ好きっていうだけなんですけど(笑)。単独の幕間にはDJ気分でいろんな曲を流させてもらってます。

屋敷:クリープハイプの尾崎(世界観)さんが観に来てくれたときは「合間に流れてた曲は誰が選んでるんですか?」って聞いてくれて。

嶋佐:あれめっちゃ嬉しかったな! ネタよりも選曲褒められるほうが嬉しいかもしれない。

屋敷:ネタと曲がリンクしてるとさらに盛り上がるし。

嶋佐:コントの合間にはセットチェンジに時間かかるんで曲流すんですけど、スタッフさんが優秀で思ったよりも早くスタンバイできちゃうと「もうちょっと(幕間のBGMを)聴いてほしいのに……」って思うんすよね。「そんなに早く準備しなくていいのに」って(笑)。

――おふたりがかっこいいと思う出囃子の芸人さんはどなたですか?

嶋佐:コントだとGAGさんですね(ザ・コーラル『Dreaming of You』)。坂本(純一)さんはイアン・ブラウンもめっちゃ好きなんですよ。

屋敷:とろサーモンさんが使ってる『暴れん坊将軍』のオープニングテーマもかっこいいっすよね。東京ダイナマイトさんのも。

嶋佐:ジョン・シナ(WWEに所属するプロレスラー)の入場曲と同じ曲(ジョン・シナ&ター・トレードマーク『ザ・タイム・イズ・ナウ』)だ。あれはかっこいいね!

屋敷:ゆったり感さんのが一番かっこ悪いな(笑)。Dragon Ashの『Deep Impact』!

嶋佐:あー、あれは狙いすぎだ(笑)!

好きな女の子からの着メロはゴイステだった……

――おふたりはもともとどんな音楽を聴いていたんですか?

屋敷:中1のときに『ゆず一家』っていうアルバムを聴いてゆずが好きになって。世代的にはみんなGLAYかラルク(L'Arc〜en〜Ciel)が好きっていう感じだったんで、ラルクのコピーバンドを中2からやってみたり、ゆずのギター弾いてみたり。高校になってからはゴイステ(GOING STEADY)、モンパチ(MONGOL800)、B-DASH、ガガガSPみたいな青春パンクを聴いてました。好きな子からの着メロをゴイステの『銀河鉄道の夜』のイントロにしてて、イントロ流れるたびに泣きそうになってました(笑)。大学入ってからはORANGE RANGEをカラオケで歌うくらいっすね。

嶋佐:僕らが学生のときって、音楽番組もいっぱいやってたし、チャートにランクインしてる音楽はみんなが知ってるって感じだったじゃないですか。ミスチル(Mr.Children)とか王道J-POPもモーニング娘。も、ビジュアル系も流行ったし。

屋敷:ランキングはずっと見とったな。

嶋佐:ミスチルは特にめちゃくちゃ好きでした。DIR EN GREYとかMALICE MIZERとかゴリゴリなビジュアル系聴いてた時期もありました。X JAPANはリアルタイムじゃないけど、hide(ギター)のソロはめちゃくちゃ好きでしたね。『hide BEST〜PSYCHOMMUNITY〜』は友達みんな持ってましたし。あとはDragon Ashだったり、メロコア系もひととおり聴いてました。

――ストロークスはリアルタイムで聴いてました?

嶋佐:ストロークスは後追いで好きになったんですけど、洋楽は中学生くらいから興味が出てきて、最初に買ったのが確かエアロスミスの『アルマゲドン』の曲が入ってるアルバム(『ミス・ア・シング』)っすね。洋楽好きな兄ちゃんがいる友達がいて、そいつの影響でいろいろ好きになって、Sum 41とかブリンク 182みたいなパンク系、リンプ・ビズキットとかイカツいラウド系を聴いてました。そっからオアシスとかトラヴィスを聴いて「静かでもかっこいい音楽あるな!」ってなって、UKロックも好きになり。電気グルーヴも好きだったんで、テクノっぽいサウンドも取り入れたレディオ・ヘッドとかマッシヴ・アタック、ビョークも聴きました。いろんなジャンルをちょこちょこ浅く広くって感じです。

――嶋佐さんはプロレスもお好きですけど、一番お好きなレスラーの入場曲はなんですか?

嶋佐:僕はやっぱり武藤敬司選手の『トライアンフ』ですね。nWo仕様のほうが特に。ギターがかっこいいんすよ。武藤選手は地元が一緒なんで、スターなんです!

――屋敷さんはステイホーム中に版画を修得されてましたが、彫ってみたいミュージシャンはいますか?

屋敷:うーん、エレカシ(エレファントカシマシ)の宮本(浩次/ボーカル&ギター)さんですかね。白黒が似合うじゃないですか。参考にする写真の明暗がはっきりしてると彫りやすいので、これまでだと和田アキ子さんとか、爆笑問題さん、(渡辺)直美さんは上手くできました。

ミュージシャン友達の多いふたり! あのバンドはお笑い芸人に興味がない!?

――YouTubeチャンネルで天野ジョージさん(百獣、撃鉄/ボーカル)、金田康平さん(THEラブ人間/ボーカル)、吉田靖直さん(トリプルファイヤー/ボーカル)とコロナ禍のバンドマン事情について話す動画(『バンドマンたちが音楽業界について喋ってくれました!』)がありますが、お三方とはプライベートでも交流があるんですか?

嶋佐:そうっすね、天野くんが渋谷でやってるバー(東京・渋谷にある『Café&Bar 1985』)には∞ホール(※2)の出番終わりで行ったりしますし、飲み友達ですね。金田くんとも何度か飲んで、イベントに呼んでもらったり、MVに出させてもらったりしました。ふたりでスピードワゴンの小沢(一敬)さんの誕生会に行ったりもしましたよ。
(※2:東京渋谷にある吉本興業の常設劇場)

屋敷:俺も吉田さんとはちょくちょく飲むんですよ。しゃべりやすいですよね、芸人寄りというか。普通のバンドマンがどんな感じかよく知らんけど(笑)。ゲスの極み乙女。の川谷(絵音/ボーカル&ギター)さんとかも話しやすいですよね。お笑いが好きっていうのが大きいんかな?

――川谷さんは芸人を目指してたくらいお笑い好きですもんね。

屋敷:その頃に俺らがMCやってたライブを観に来てたって言ってましたよ!

嶋佐:絵音さんが!? まじか……。

屋敷:お笑い好きじゃないミュージシャンの方とは関わらないんで、どんな人かもわからんもんな。

嶋佐:確かに、みんな良くしてくれる。

屋敷:でもONE OK ROCKとは一切お会いしたことないんで、芸人好きじゃない可能性ありますね(笑)。

嶋佐:怪しいね(笑)。

――確かに、ONE OK ROCKとトリプルファイヤーは同じバンドでもかなり立ち位置は違うというか……。

嶋佐:吉田くんはかなり芸人に近いですよね。大喜利もやるし。

――いろんなアーティストのライブも観に行かれたりするんですか?

嶋佐:僕はたまに行きますね。フェスも行くし。最近めっちゃいいなと思ったのがPredawn。生で観たらめっちゃ良かったですね。天野くんの百獣もゴッチゴチでかっこよかったですよ!

人生で一番ウケたライブ、死ぬほど滑ったライブ

――おふたりのNSC時代の同期にはぼく脳さん(パフォーマー、バンド・NATURE DANGER GANGのメンバーとしても活動)がいるんですよね?

屋敷:お、ぼく脳くん。

嶋佐:SNSで見てますよ。“SJ(スメルジョッキー)”って言って、DJ風に果物を絞る香りのDJ?みたいなのやってましたよね(笑)。NSCの頃仲良かったです。芸人辞めてどうするのかなと思ったら音楽やったり、もの作って個展やったりし始めて。

屋敷:転身するのが早かったですよね。芸人やって尖り続けるのは大変ですよ。いつ評価されるかもわかんないんで。違うフィールドに行ったのは賢いっすね。

嶋佐:まだライブは観たことないんで、ちゃんと観てみたいです。会いたいな。たまに連絡とるんですよ。こないだも個展行きました。

――2016年に新宿LOFTで嶋佐さんとぼく脳さんが司会のアイドル大喜利イベントがありましたよね。

嶋佐:そうそう、そこで吉田くんにも初めて会ったんですよ。

――なんとも言えない雰囲気のイベントでした……。

嶋佐:すごく独特でしたよね。お客さんもまあまあ入ってて、みんなで立って大喜利を見守るっていう。

――音楽イベントでネタをやることもあると思うんですが、反応はいかがですか?

嶋佐:何度か出させてもらいましたけど、ノリがいいですよね。あったかいっていうか。去年の『下北沢にて』(THE ラブ人間主催のサーキットイベント)でやった漫才が人生で一番ウケたんじゃないかな。

屋敷:いや、でも場所によるよ。(渋谷)クアトロでやったときは死ぬほど滑ったもん!

嶋佐:あー、あれはヤバかった……。

屋敷:バンドの転換中にネタをやったんですけど、ネタ中に音出ししてて。俺が突っ込むたびにシンバルがバシャーン!って(笑)。

嶋佐:俺がボケる前にはドラムロールがドコドコドコドコ……(笑)。

――うわー、それはやりづらい!

嶋佐:でも嬉しいですよ。ステージで緊張するのって賞レースのときくらいですけど、フェスは普段観る側なんで、出るときは緊張しますね。『イナズマロックフェス』ではT.M.Revolutionさんのあとに漫才しましたからね。ROTTENGRAFFTYさんも京都でやってるフェス『ポルノ超特急』に呼んでくれて、バックステージで「好きです」って言ってくれました。もう単純に嬉しいです。

――今後ミュージシャンと一緒にやりたいことってありますか?

屋敷:YouTubeでも言ったんですけど、『HEY!HEY!HEY! MUSIC CHAMP』みたいな音楽番組やりたいなって。今、ないじゃないですか、『うたばん』とかそういう番組。そろそろ若手の芸人と若いミュージシャンが絡む番組があってもいいんじゃないかなと。

嶋佐:自分たちのYouTubeで毎週90分の生配信をやってるんですけど、その休憩中に流す動画を募集したらいろんなバンドからMVをいっぱい送ってもらったんですよ。だから、YouTubeでもそういう番組できないかな?と思って。

――音楽番組も少なくなってるので、少しでもそういった番組が増えるのはミュージシャンにとってもありがたいですね!

嶋佐:協力してくれるライブハウスを探し始めようかなと思ってるんで、何かしらの形にはしたいです!

(おわり)

ニューヨーク プロフィール

嶋佐和也、屋敷裕政からなるお笑いコンビ。漫才・コントをともに行い、皮肉の効いた芸風で人気を集める。『M-1グランプリ2019』、『キングオブコント2020』で決勝進出するなど、勢いの止まらない活躍をみせる。YouTubeチャンネル『ニューヨーク Official Channnel』も好評配信中!

張江浩司