【特別コラム】永野「生放送中に俳優をビンタしたあのとき僕は確かにカート・コバーンになった」

連載・コラム

[2021/9/27 17:20]

ロックフリークとして注目を集めている芸人・永野の書籍『僕はロックなんか聴いてきた〜ゴッホより普通にニルヴァーナが好き!〜』が9月25日に発売された。本書の発売を記念して、内容の一部を抜粋してお届けするプチ連載をお届け! 第1回はニルヴァーナのお話!


生放送中に俳優をビンタしたあのとき僕は確かにカート・コバーンになった

 誰もが心の中に「これは俺のバンドだ!」というバンドを持っている。僕にとってそれがニルヴァーナであり、カート・コバーンがヒーローだった。

 実は自分は「大人になってから改めて聴いてみて好きになった」というバンドが多いのだけど、ニルヴァーナはリアルタイムでハマったバンドだ。ニルヴァーナにハマったというより、あの名曲「スメルズ・ライク・ティーン・スピリット」にハマったというほうが正しいかもしれない。アルバム『ネヴァーマインド』を買った17歳の僕は、その1曲目の「スメルズ・ライク・ティーン・スピリット」にガツンとやられてしまい、そればっかり聴いていた。とにかく曲が格好良すぎた。ミュージックビデオも完璧だった。カート・コバーンのキャラクターも好きだった。この曲にはすべてが詰まっていた。

「『ホルモウニング』持ってる?」

 僕の音楽の聴き方は、雑誌や解説本に頼り、縛られるという一番ダサい聴き方だったのだけど、ニルヴァーナを知ったのもご多分に漏れず雑誌の情報だった。何かの雑誌で読んだ、ニルヴァーナのことを「世界中が衝撃を受けた」と評した記事。「メタリカのラーズ・ウルリッヒも褒めてる」という一文で、これだ、と思ったのだ。当時の僕はお金もないし、手当り次第に新しいものを聴くなんてできない。手垢にまみれていてもいいから、絶対良いという確証を得てから聴きたいタイプだった。

 余談だが僕は昔から今に至るまでそういうガチガチに堅いタイプなので、「M-1グランプリ」もチャンピオンの漫才か、話題になったものしか見ない。4位くらいの奴なんか見てらんねえ、と思っている。

 『ネヴァーマインド』の第1印象は「汚い」だった。今聴くととんでもなくプロフェッショナルなサウンドなのだけど、当時U2やブライアン・アダムスのような「綺麗な」音しか聴いておらず、田舎に住んでいたためマイナー・スレットのようなハードコアも知らなかった自分にとっては、えらく「汚い」音に聞こえた。それが逆に、「うわあ凄いなあ」となる要因でもあった。

 そしてなにより、カート・コバーンのやる気のなさそうな感じが新鮮で格好良かった。勝手に「ああ、汚くて憂鬱でもいいんだ」って安堵したんだよね。発言もいちいち格好良いし、あのやさぐれ感がもう滅茶苦茶好きで、『ネヴァーマインド』の後に発売されたインディーズ時代の1stアルバム『ブリーチ』や、シングルB面集みたいな『インセスティサイド』という企画盤も買って聴いていた。

 そうそう、企画盤といえば、その当時高校に海外からの留学生が来ていたんだけど、僕がクラスで友達に偉そうに「ニルヴァーナがさあ~」とか語っていたのを耳にしたらしい。あるとき校庭にいたらその留学生が近づいてきて、「『ホルモウニング』って持ってる?」って聞かれたんだ。『ホルモウニング』っていうのは、一時期10万円のプレ値がついたこともある、日本とオーストラリアだけでリリースされたEPなんだけど、その留学生はシンパシーを感じたのか、突然話しかけてきて。あれはびっくりしたな。まあ、ビビって答えられなかったんだけど。

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プロフィール

永野

お笑い芸人。1974年宮崎県生まれ。AB型。1995年、ピン芸人としてデビュー。「ゴッホとピカソに捧げる歌」などのシュールなネタで注目を集め、孤高のカルト芸人として人気を博す。ロックフリークとしても注目を集めており、9月25日に『僕はロックなんか聴いてきた〜ゴッホより普通にニルヴァーナが好き!〜』を出版。

永野