「SNAIL RAMPの作り方<番外編>バンドマンとヤろうとする女の子2」タケムラ アキラ(SNAIL RAMP)『炎上くらいしてみたい』

連載・コラム

[2019/1/21 12:00]

1990年代後半から2000年代のバンドシーンを牽引したSNAIL RAMPのフロントマン・タケムラ アキラが書きたいことを超ダラダラ綴っていく新連載!


SNAIL RAMPがライブをした下北沢SHELTERでの打ち上げに、勝手に紛れ込んできた悪評ある女の子ふたり。何やら都合が悪そうな石丸の命を受け、俺からお帰り願ったが、しばらく経つとまたシェルターにINしてきたところまでが、前回のあらすじ。

さて、続きを書く前に「なぜその女の子たちを打ち上げから排除するのか」を(書くまでもないと思うが)一応書いておきたい。打ち上げというだけあってアルコールもあり、ライブが終わった開放感やいまだ続く高揚感も手伝い、ハメが外されがちになるのは否めない。そうなった状態での男女はことも進みやすく、そのまま付き合ったりなんなら結婚しちゃうふたりだっている。そんなのまったく構わないし、「結局ひと晩だけだったね」ということだってお互い大人、当人同士の話で済むならほかが干渉することではないと考えている。

ただそれがトラブルのもととなり得るような女性の場合、これはバンド活動に支障をきたすので排除に動かなければならない。今回打ち上げに紛れ込んできたのは、「バンドマンと関係をもとうとすることで悪評が立っている女」。しかもすでに何か火種があるような気配がある。これは完全に排除案件だ。

そういう理由で打ち上げから退出願ったのに、10分ほどでシレーっと再入店してきた女ふたり。スタッフではなく、メンバーから直接追い出されたってのに、また入ってくるとか一体どんな思考回路なのか。「こいつナメてんな」とイラッとしたし、その図太すぎる神経に「怖い怖いっ! こんなヤバい奴、絶対に排除しないとダメだって!」と意思を固めた。

彼女たちはSHELTER入口すぐ近くにあるバーカウンター前にたたずみ、何やら飲み始めた。できたら俺が動く前に帰ってほしかったので、怒りを含んだ真顔でガン見する俺。しかしその視線に、意地でも気づかないフリをする女ふたり。

らちがあかなかった。俺はズカズカとカウンター前に歩みより、ふたりに声をかけた。

「おい」「さっき出ていけって言ったよな?」

主犯の女は萎縮するでも気色ばむでもなく、なぜか身体をクネクネさせていた。

「うちら……」
「あぁ? うちらは?」
「いまはSHELTERに普通に飲みにきただけ」

やられたー!と思った。確かにSHELTERはライブ後にそのままバー営業に移行し、ライブとは関係のないただ飲みにくるお客さんも受け入れるので、「バー営業のSHELTERに飲みにきた」という体を装えば、苦しい言い訳だがそこにいることも不可能ではない。

しかしこんな悪知恵が働く女、ますますもって排除対象でしかない。

「関係ねーわ。飲める店なんていくらでもあるじゃん。ほら、飲みものもって外に出て」

と店外に追い立てた。俺も一緒に出て「もう絶対に入ってくんなよ。わかった?」と強く言ったが、その女は上目遣いでクネクネしている。そんな女をみて「あー、これで騙されちゃうバンドマンがいるのか」と思うと同時に、「は? それを使えば俺もイケると思ってんのか?」と何だか無性に腹が立ってきた。

俺は連れの女の子に「いい? この子がまた入ろうとしたら、絶対に止めてね」「あと、ここで待ったりもせずに、帰るなり別の場所に行ってな」と言い聞かせた。

しばらく顔を見合わせボソボソ喋っていたふたりだったが、「君たちがどっかに行ってくれないと、俺も中に戻れないんだよ」と言うと、しぶしぶ歩き始めた。ふたりがSHELTERから遠ざかって行くのを確認して、俺も店内に戻った。

以後もこの女の子たちはSNAIL RAMPのライブにきていたらしいが、石丸曰く「竹村さんの姿を見ると逃げていく」そうだ。嫌われるのは本望ではないが、バンドが抱えるリスクを減らすためであれば、仕方のないことではある。

今回は「打ち上げに潜入しようとする女のことを書いてほしい。またそれをバンドマンはどう思うのかも」というリクエストがTwitterであったので書いた。このコラムを読むと一方的に女の子が悪者扱いになっているが、正直なところそれを歓迎するバンドマンだって少なからずいる。需要と供給がそこには確実に存在しているのだ。

ある番組で言っていた元野球選手の言葉が的を得ていて、

「野球選手と(関係をもつには)? 簡単ですよ! ヒラヒラした服を着て、練習場に行くんです。で、連絡先を書いた手紙でも渡せば、もうそれでOKです」

と。世の女性たちからしたら「え? そんな簡単なの?」と思うだろうが、その言葉どおりだったとしても別に不思議ではない。所詮は男と女、それに尽きるのだろう。

タケムラアキラ

竹村哲●1995年にスカパンクバンドSNAIL RAMPを結成。2000年にリリースしたアルバム『FRESH BRASH OLD MAN』でオリコン1位を獲得するなど、一時代を築く。バンド活動と並行し、2001年からキックボクシングを始め、2014年10月に43歳の年齢でNKBウェルター級チャンピオンに輝く。2015年12月12日には後楽園ホールにて引退試合を行なった。SNAIL RAMPは現在、“ほぼ活動休止”中。