「SNAIL RAMPの作り方<番外編>バンドマンとヤろうとする女の子」タケムラ アキラ(SNAIL RAMP)『炎上くらいしてみたい』
1990年代後半から2000年代のバンドシーンを牽引したSNAIL RAMPのフロントマン・タケムラ アキラが書きたいことを超ダラダラ綴っていく新連載!
みんな、明けましておめでとう! 今年もよろしくお願いしますぜ。
年末ってさ、意外と暇な人もいる思うんだよ。例えば俺。俺はズボラなので大掃除とかしないんだわ。とか言うと「それ普段から掃除してるから大丈夫!ってやつだろ?」と思う人もいるだろうが、まったく違う。俺は普段から掃除をしない。で、年末も掃除はしない。俺はいつでも掃除はしない。そう、散らかった部屋で年を越し、散らかった部屋で新年を迎えるのだ。
だから仕事が立て込んでもない限り、12月29日や12月30日はわりと暇。そして俺みたいな人が世の中にもいるはず、そんな人たちに向けて俺がやったのは「これまでに書いた耳マンのコラムを再度紹介し、読んでもらう」という作業。過去の記事などすでに既読とスルーする人が多いと思いきや、意外や意外、ここで改めて読んでくれたり、新たに読んでくれた人たちもいて、思ったより反響があった。
その反響のひとつに「あらゆる手段を使い打ち上げに潜り込み、数多くのバンドマンに狙い撃ちする女子たちのことも書いてほしい!」「そーゆう女子をバンドマンから見たらどう映るのかも知りたい!」というリクエストがあった。
ということで、今回はここまで続いている「SNAIL RAMPの作り方」はお休みして、「バンドの打ち上げに潜り込んでくる女子」について書いてみたい。
確かに、打ち上げに何だか知らない女の子がいるという場面はあるんだよ。が、うち(SNAIL RAMP)単体の打ち上げの場合は皆無。マネジメント契約をして事務所がつくと、マネージャーを始めそこのスタッフがいたり、ライブ会場が大きくなってくるとツアースタッフが一緒だったりするので、そこに潜り込んでくるというのは、正気の沙汰じゃない。まったく知らない男女の結婚式に出て、主賓格でスピーチするようなモンだ。
しかし1度、招かざる女性がSNAIL RAMPの打ち上げに紛れ込んできたことがあった。そのときはSNAIL RAMP主体&2~3バンドで下北沢SHELTERでライブをやり、そのままSHELTERで打ち上げとなった。乾杯をしてしばらく経った頃、ドラムの石丸が俺の隣にやってきて、小さな声でこう告げた。
「竹村さん……、あいつ来てんすよ」
石丸が小さく振り向くその先を見ると、全身黒づくめの服を着た女が友達らしき女の子とふたりで座っている。
「あれ……? あいつって……」
「そうです。ヤツですよ」
黒づくめの女には見覚えがあった。バンドマンのまわりをうろちょろして、あわよくば関係をもとうとすることで悪評がたっている女だった。
「へ? なんであいつがここにいんの?」
「すいません……」
石丸の優しい部分が裏目に出たな。具体的に石丸を問い詰めても仕方ないので、「どうする? 出てってもらう?」と聞くと、小さく「はい」とうなずいた。通常であればマネージャーに伝えて動いてもらい、メンバーはタッチしない場面でもあるが、こちらの意思をはっきりとわからせるためには、直接言ったほうがいいだろう。俺はドリンクを片手に彼女たちの座るテーブルに歩み寄った。
「お疲れ~」
俺は明るく声をかける。
「あ……、お疲れ様です……」
「えー、今日は何? 誰かの知り合いかな?」
「えぇ、まぁ」
「え!そうなの? 俺は君たちのことを知らないんだけどな」
「はい……竹村さんとは……」
「だよねー。この場は知り合いだけなんだ。なので知らない人には退出してもらうよ?」
「……。」
「出口はあそこ。じゃ席を立って」
俺は手で「立って立って」とジェスチャーをし、彼女たちを促した。そして出口方向へ一緒に歩き、ドアから出る彼女たちを確認すると石丸のもとへ戻った。
「終わったよ」と短く告げると、「すいません」と申し訳なさそうに石丸は答えた。そして再開する打ち上げ。10分も経ったろうか、誰かがSHELTERに入ってくるのが視界に入った。
「あいつじゃん!!」
さっき追い出したはずの女がシレーッと入ってきやがった。
「あいつ、ナメてんな……」
黒服女と俺のバトルの始まりだった。(続く)