「SNAIL RAMPの作り方17・その名は石丸」タケムラ アキラ(SNAIL RAMP)『炎上くらいしてみたい』
1990年代後半から2000年代のバンドシーンを牽引したSNAIL RAMPのフロントマン・タケムラ アキラが書きたいことを超ダラダラ綴っていく新連載!
順調に活動していたつもりだったSNAIL RAMPから、1年も経たないうちに脱退者が出ることとなった。ドラムのタクローだ。人間としてもおもしろみのあるやつだったので脱退は残念だったが、「辞めたい」と言ってるのを無理にやらせても仕方ないと、新たなドラマーを探し始めた。幸いまわりの友達、JOHNNY POWERSのギター、ゴローちゃんだったと思うが、彼が「スネイルに興味もってるやついるわ」「タケに電話するように言っとくよ!」と言ってくれた。
「石丸って奴だから」
ゴローちゃんはそう教えてくれた。
「石丸……変わった名前だな。つかそもそも、本名なのかアダ名なのかすらわからん」
そんなことを考えながらも「この何とか丸がそこそこ叩けりゃ、そいつでいいでしょ」とスッゲェいい加減に考えながら、何とか丸からの電話を待っていた。タクローが脱退するまでは多少の猶予があったため、それまでの3人で普通にリハスタをこなしながらの連絡待ち。でも何かおかしい、電話がかかってこない……。彼を紹介してくれたゴローちゃんは確かに「スネイルに興味をもってる」と言っていた。しかし、何日経っても何とか丸は電話をよこさない。タクローが脱退する日も着実に近づいている。このままではドラムがいなくなり、ライブどころかリハスタに入ることすらままならなくなるが、このバンドをいま止めたら絶対にダメだ。別に人気はないが、何となくまわりに人が寄り始めている。おまけに俺たちの性格からいって、活動できなくなるとその状況に慣れてしまい、そのまま動き出さなくなってしまう恐れもあった。
危機感を感じた俺はゴローちゃんに連絡をとる。
「ごめん、何とか丸の電話番号教えてもらえる?」
そうしてその自宅らしき電話番号を手に、電話をかけてみた。始めの2、3回は不在だったような気がする。ただでさえかかってこなかった電話なのに、こちらからかけても出やしない。俺はイライラし始めていた。そして何回目だったか、ある日の電話に不意にやつは出た。
「……はい」
「あ!(やっと繋がった!) ゴローちゃんから紹介されたSNAIL RAMPの竹村ですけど」
「え……はい」
「うち、いまドラムを探していて」
「はい……」
何なんだコイツは! SNAIL RAMPに興味があるとか言っておきながら電話をかけてこないし、こっちからかけても寝ぼけたような受け答えばかりしやがって!! 俺は半ギレだった。
「つーかさ、俺ゴローちゃんから聞いて電話待ってたんだけど?」
「え、あ、あ、すいません」
「で、どうすんの? うち入りたいんでしょ?」
「え? え?」
「スネイル入りたいって聞いてるけど!?」
「え!? いや、その、あの、まー、そうですかね……。えぇ」
これはいま思い返してもヒドい。ヒドすぎる。何たる言い草。こちらはメンバーを探している身だというのに、その候補者に「お前、スネイル入りたいのに何で電話してこねーんだよ!」と、初めての電話でいきなり半ギレ。我ながら高飛車にも程がある。無茶苦茶なのはこちらなのに、それでも「す、すみません」と謝ってしまうのが、何とか丸のいいところ。聞けばSNAIL RAMPのデモテープはもっているとのこと。その2曲を覚えてきてもらって、スタジオで1回合わせてみようとなった。
そして1、2週間後、当時原宿にあった「ロサンゼルス」という著しく名前のダサいリハスタで俺たちは対面するコトとなる。