『推しメンが結婚しちゃった日記』第1回:もはやパーティーを楽しむどころではなかった
元モーニング娘。の石川梨華に10年以上“ガチ恋”を続けているドルヲタのふちりんによる完全ノンフィクション連載。梨華ちゃんに健気に恋をする彼が、2017年3月13日に結婚した彼女への想いを、結婚が近いという報道があった2017年元旦から振り返り繊細に紡ぐ。(ガチ恋……アイドルにガチ(本気)で恋をすること)
1月1日 日曜日
「もはやパーティーを楽しむどころではなかった」
2017年元旦の午前3時過ぎ、行きつけのアイドル育成型ライブカフェ・大宮アイドールでアイドルたちと楽しく立食パーティーをしていると、ヲタ友の中島さんからLINEが来ていることに気づきました。梨華ちゃんがハロー!プロジェクト(以下ハロプロ)のカウントダウンライブにサプライズ出演し、モーニング娘。の楽曲『ザ☆ピ~ス!』など数曲を歌ったとのことです。僕はハロプロOGのファンクラブ(エムラインクラブ)に入会し推しメンを梨華ちゃんに設定してあるにもかかわらず、梨華ちゃんが歌っている姿を観られないなんてひどくおかしな話だなと思い、残念な気持ちと事務所に対する怒りの気持ちが心に広がっていきました。
しばらくしてまた中島さんからLINEが来て、梨華ちゃんの身にほかの何か重大な出来事が起こったことを知りました。しかし中島さんにいくら詳細を尋ねても、「俺の口からは言えません……」と口ごもります。僕はあわててTwitterを開き、「いったい何があったんです?」とつぶやいてみましたが、誰も答えてくれません。大宮アイドールのアイドルたちと新年を祝う立食パーティーの最中だったけれど、もはやパーティーを楽しむどころではなかった。僕の足は小刻みに震え、焦点の合わない目をしてうつむき、ぼんやりと皿の上の乾きものなどを眺めていました。
すると立食テーブルの向こう側に大宮アイドールのあゆみん(32歳)が来て、「ふちりんさんにはいつも癒されてます」と言いました。僕は今日も癒してあげようと思い、右の手のひらをあゆみんに向けて「ホイミ!」と唱えました(僕は30歳を超えた童貞なので、魔法が使えるのです)。あゆみんは少し飛び跳ねるようにして喜んでいました。嬉しかったです。しかしその嬉しみも、あっという間に不安と恐怖の波に飲み込まれてしまいました。
僕は立食パーティーの場をふらふらと離れトイレの個室に入り、白い壁の一点を見つめながら「入籍だろうか、婚約だろうか」と、最悪の想像をしました。「なんでよりによって元旦に、こんな不安と恐怖に苛まれなければならないのだろうか」と思いながら、おしっこをしました。トイレの水を流して個室を出て大きな鏡の前に立つと、元旦の立食パーティーにはふさわしくない、自殺志願者のような表情をした自分が鏡のなかにいました。「もし入籍や婚約だったら、僕は新年早々死んでしまうかもしれない」と思いながら手を洗いました。
トイレを出ると立食パーティーの楽しげな空気に身体が包まれましたが、僕の心はこれ以上ないほど、どんよりとしていました。談笑しているアイドルやヲタたちを見ながら、「みんな、今まで良くしてくれてありがとう。僕は新年早々死んでしまうかもしれません」と心のなかで語りかけました。